
先日、「BANGER!!!」で『レクイエム・フォー・ドリーム』(00)の見どころ&音楽紹介コラムを書きました。
観客を悪夢に引きずり込む“映像・演技・音楽”を解説!伝説のトラウマ映画『レクイエム・フォー・ドリーム』4Kで復活|BANGER!!! https://www.banger.jp/movie/161989/
映画音楽物書きの当方としては、この機会にクリント・マンセルの音楽を思う存分ご紹介したかったのですが、先方は「トリビア多め」な内容をご希望でしたので、あのような構成になりました。
個人的には裏話とか逸話を得意気に書く構成はあまり好きではないし、この映画の主要キャストのすさまじい役作りの話はつとに有名だから、トリビアネタで何を書くべきか悩みました。
その結果タピー・ティボンズ役のクリストファー・マクドナルドについて言及している人はあまりいないのではないかと思い、もともと好きな俳優さんでもあったので、文字数を多めに割いて彼の熱演をご紹介した次第です。2026年になってピーター・ガブリエルの”The Barry Williams Show”の話を出してくる人もあまりいないと思うし。
ちなみにタピーのテレビショーの場面は1日で撮ったというから、すごい集中力です。
そんなわけで、当方のブログではBANGER!!!のコラムで書ききれなかったネタとか補足しておきたいネタ、マンセルの劇伴についてより深く掘り下げたいことなどを書いていきたいと思います。
まずはクリント・マンセルの劇伴についてもっと詳しく書かせて頂きます。
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マンセルとダーレン・アロノフスキーとの出会いについては、以前書いた『π』デジタルリマスター版上映のときのブログをご覧下さい。
ヒップホップ・カルチャーに多大な影響を受けたアロノフスキーは、当初『レクイエム・フォー・ドリーム』の音楽でもヒップホップ(既製曲も含む)を使いたがっていて、マンセルにもヒップホップ系劇伴をリクエストしていたそうです。
で、サラ(エレン・バースティン)が部屋の掃除をするシーンでは、パブリック・エネミーの”She Watch Channel Zero?!”を背景音楽として使っていたらしい。
映像と曲はうまくハマったけれども、「ただ”クール”なだけだった(=ドラマの演出としては役に立たなかった)」ことに気づいて劇伴の方向性を考え直すことになり、最終的に映画で使われたような弦楽四重奏+ヒップホップ・ビートの劇伴になったと。
アロノフスキーは『レクイエム・フォー・ドリーム』について「1曲のレクイエムを奏でるような映画にしたかった」「この映画をひと言で表現するなら、クライマックスに向かって進む100分の音楽だ」とブルーレイ収録の音声解説で語っていて、その言葉どおり「夏」「秋」「冬」の章の冒頭ではクロノス・クァルテットのチューニングの音から始まる構成になっている。
そういう意味では実に「音楽的な映画」と言えるわけです。音楽映画でもミュージカル映画でもないけれども。
そう聞くと「すごく難解で敷居が高いサントラなんじゃないか」と思われるかもしれませんが、これが意外と聴きやすいんです。
メインテーマは各章の冒頭で使われるからすぐに分かるとして、サントラの曲目を見ると、例えば「ハリーとマリオンのテーマ」が聴かれる曲には全て”Ghosts”という言葉が入っているし、「トリップのテーマ」には”Dream”、「禁断症状のテーマ」には”Tense”という言葉が入っている。
このように構成がカッチリしていて、主要なモティーフがきちんと整理されて劇伴の中で使われているので、「どのテーマがどういう心理状態や内面を示唆しているのか」ということがよく分かるのです。
なおタピー・ティボンズのテレビショーで出演者たちがシュールなダンスを踊るときの奇妙な曲(アロノフスキー曰く「ユダヤ・アレンジのチャチャチャ」)ですが、あれはマンセルの作曲したものではなく、本作のサウンドデザインを担当した音響マンがベーシストをやっているバンド「ムーンラッツ」の曲です。アロノフスキーもバックコーラスで参加しているとのこと。
サントラにも収録されていて、”Bialy & Lox Conga”と”Bugs Got A Devilish Grin Conga”という曲がそれです。
あとはBANGER!!!で書いたトリビアの補足を少々。
補足その1:エレン・バースティンの映画撮影時の年齢について
映画の公式Xさんもトリビアをちょくちょくアップしておりまして、その際に「撮影時68歳」と書いてあったので、「あれ? そうだったっけ?」と思ってもう一度調べ直しました。
バースティンの誕生日は1932年12月7日で、『レクイエム・フォー・ドリーム』の初公開はカンヌ映画祭で2000年5月、撮影はコニーアイランドで1999年4月から6月とのことでしたので、撮影当時の年齢は拙稿で書いたように67歳で合っていると思います。
補足その2:ジャレッド・レトの減量について
そしてジャレッド・レトが減量した体重も「13キロ」となっていたので、2001年当時から「25ポンド(=約11キロ)減量」と憶えていた自分は「あれ? 思い違いか?」と不安になり、こちらも調べ直しました。
‘Requiem for a Dream’: How did Jared Leto prepare for his most demanding role?
https://faroutmagazine.co.uk/how-jared-leto-prepared-for-requiem-for-a-dream/
日本初公開当時に買ったパンフのプロダクション・ノートによると、ジャレッド・レトの減量は25ポンドという表記があり、レトのインタビュー記事をいくつか調べてみたところ”25Ibs”という記述が見られたので、こちらもキロ換算で11.3kg(約11kg)ということで合っていると思います。28ポンド説もあるそうですが。
補足その3:マーロン・ウェイアンズが受けたオーディションの回数について
これも諸説ありまして、前述の映画パンフだと7回と書いてあって、英文記事では5回と書いている媒体もありました。
しかしウェイアンズ本人が動画インタビューで「6回」と言っていたので、ご本人の言葉に倣うことにしました。
BANGER!!!のコラムで書いたとおり、レトは役作りで激ヤセし、「渇望」という状態を体得するため常に空腹状態にしていたわけですが、撮影中はカボチャの種なんかをポリポリ食べていたらしい。
で、ウェイアンズはそんなレトの横で「腹減ってんの? うーん、うめぇなぁ」などと言いながらハンバーガーを食ってレトをキレさせていたそうな。旧パンフ掲載の出演者インタビューで、レトが撮影中ずっと「フ×ック・ユー、ファッ×・ユーとわめき散らしてた」と言っていた理由が分かった気がします。
余談ですが、先日『レクイエム・フォー・ドリーム』4Kを観てきた知人が「タイロンは最後に刑務所で何の作業をやらされているの?」と言っていました。あれは自分も25年以上前に映画を観たとき疑問に思ったものです。
ブルーレイ収録の未公開映像集によると、あれは刑務官に「マッシュポテト作りをさせられている」ようです。
なぜそう言い切れるかというと、その未公開映像で刑務官に扮したヒューバート・セルビーJr.がタイロンを罵倒しながら「うまいマッシュポテトを作ってくれ」というセリフを言っていたから。どう見ても「うまいマッシュポテト」には見えず、正直言って自分はあれを食べたくないです…。
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