『ゴースト・イン・ザ・シェル』音楽雑感

遅ればせながら、
先日『ゴースト・イン・ザ・シェル』(17)を観てきました。

ワタクシ『攻殻機動隊』は95年の劇場映画と『イノセンス』(04)、
テレビシリーズの『STAND ALONE COMPLEX』を鑑賞済で、
原作マンガを途中で挫折して、
『ARIZE』は観ていないという程度の攻殻フォロワーですが、
そのレベルのワタクシが今回の実写版を観た印象だと、
「様々な手法で表現できる壮大な物語のひとつの解釈」としては、
実写版のストーリーもアリではないかという感じです。

欲を言えば、イシカワのネットに潜入しての情報収集シーンをもっと観たかったなと思いましたが。

ワタクシの場合、今回の実写版『攻殻』最大の関心は音楽でございましたので、
ここでは音楽について思ったことをあれこれ書かせて頂きます。

 

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『ハイ・ライズ』は音楽でも階級社会を痛烈に風刺する。

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都内での劇場公開から遅れること約一ヶ月、
先日遅ればせながらヒエラルキー崩壊スリラー『ハイ・ライズ』(15)を観てきました。

そういう映画だということは分かっていましたが、
ポスタービジュアルなどでスタイリッシュさを前面に出しつつ、
映画開始数分でゴミ屋敷のような不潔でカオスな映像を見せられるという構成が強烈でしたね。。。
その後はエロ・グロ・インモラル・デカダンスな展開の連続。

 

「上層階に行くにつれて住民が富裕層になっていく」
「電力などの供給は上層階優先」
「下層階の住人の陳情は基本的に後回し(もしくは放置)」
…というとんでもないマンションですが、
「入居時に管理者側からルールの説明があったんじゃないの?」と思ったものの、
マンションの設計者ロイヤル氏(ジェレミー・アイアンズ)の言動を見ていると、
たぶん肝心なことは一切説明しなかったんだろうなと思いました。
こんなマンション、お金があっても絶対住みたくない…。

ことほどさようにイギリスの階級社会を痛烈に皮肉った本作ですが、
音楽もなかなかシニカルでした。

 

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映画『シグナル』のサントラ盤、トレント・レズナー、クリフ・マルティネス、ブライアン・イーノあたりが好きな人は必聴です!の巻

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去年の夏頃にランブリング・レコーズさんの製作の方と「『The Signal』っていう映画、何か面白いらしいですよ?」「こういう音楽、結構好きですねー」…などと話して地味に盛り上がっていたインディーズSFスリラー『シグナル』(14)。いよいよ5月日本公開です。

ワタクシ、サントラ盤の音楽解説の仕事で3月に試写で観てきたのですが、なかなかシュールで面白かったですコレ。
レーティングも全年齢指定(本国ではPG13)だからグロ描写とか残虐描写はほとんどないんですが、妙に薄気味悪い感じでドラマが進行していって、「この話、一体どうやって収拾つけるんだろう?」と話の展開に引き込まれるという。

『CUBE』(97)とか『月に囚われた男』(09)とか、「主人公が突然ワケの分からない状況に放り込まれる」系のスリラー映画が好きな人なら結構楽しめる作品ではないかと思います。

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『マイ・ボディガード(原題:Man on Fire)』のサントラを補完してみる

man on fire_OST

というわけで、久々にこの企画をやってみようかなと。
『マイ・ボディガード』(04)のサントラ盤はハリー・グレッグソン=ウィリアムズのスコア・アルバムなので、補完というより本編でどんな既製曲が使われたかを検証していくって事で。
さすがに全部は追っかけられないので、有名どころをかいつまんで、という感じになりますが。

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MOON 月に囚われた男

moon

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

昨年末に2010年のベストムービー的な事でも書こうと思っていたのですが、ずーーっと仕事をしていてタイミングを逸してしまったので、今年最初のブログで書いてみる事にしました。

去年観た映画で特によかったなぁ、と思ったのは

『インセプション』(10)
『クロッシング』(08)
『バッド・ルーテナント』(09)
『月に囚われた男』(09)

の4本。この中からひとつ選ぶとしたら、やっぱり低予算でハイクオリティなSF映画を作り上げた『月に囚われた男』で決まりかな、と。

「月の裏側でたった一人でヘリウム3の採掘作業をしている男が、もう一人の自分と対面する」という内容を聞いた時、理屈っぽい映画なのではないかと思ったのですが、全然そんな事なかった。メッセージ性とエンターテインメント性、そして社会風刺のバランスがすごくよく取れた良作。例えるなら、星新一の短編SF小説のような雰囲気を持った映画です。

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