映画『シグナル』のサントラ盤、トレント・レズナー、クリフ・マルティネス、ブライアン・イーノあたりが好きな人は必聴です!の巻

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去年の夏頃にランブリング・レコーズさんの製作の方と「『The Signal』っていう映画、何か面白いらしいですよ?」「こういう音楽、結構好きですねー」…などと話して地味に盛り上がっていたインディーズSFスリラー『シグナル』(14)。いよいよ5月日本公開です。

ワタクシ、サントラ盤の音楽解説の仕事で3月に試写で観てきたのですが、なかなかシュールで面白かったですコレ。
レーティングも全年齢指定(本国ではPG13)だからグロ描写とか残虐描写はほとんどないんですが、妙に薄気味悪い感じでドラマが進行していって、「この話、一体どうやって収拾つけるんだろう?」と話の展開に引き込まれるという。

『CUBE』(97)とか『月に囚われた男』(09)とか、「主人公が突然ワケの分からない状況に放り込まれる」系のスリラー映画が好きな人なら結構楽しめる作品ではないかと思います。

窮屈そうです。
窮屈そうです。

あとこの映画に関して言えば、ローレンス・フィッシュバーンが最高。
…というより、フィッシュバーンの顔芸が最高
ただでさえ大きいお顔の人なのに、防護服のヘルメットをキツそうに被って画面に大写しになるもんですから、シリアスな場面でも変な笑いがこみ上げてくるという…。
あと、某キャラの疾走する姿が昔懐かしい「8マン走り」を連想させたのもツボでした。

…とまぁ映画本編についてあれこれ書いてしまうとネタバレになってしまうので、そろそろ肝心の音楽の話に移らせて頂きたいと思います。

 

『シグナル』の音楽を担当しているのは、イラン系のニマ・ファクララという作曲家。
(Fakhraraだから発音的には”ファカーラ”が近いのかな…?)
あまりなじみのない名前の作曲家ですが、実写版『ガッチャマン』(13)の音楽をさりげなくやっていたりします。
『ガッチャマン』の時は『ダークナイト』(08)を意識したような、ダークヒーロー系の重厚なスコアを鳴らしていたファクララさんですが、今回の『シグナル』のスコアは全編ミニマル/アンビエント・ミュージック風味。
そしてそのアンビエント・サウンドが絶品なのであります。
摩訶不思議な音世界が最高に面白い。
そして一度この世界にハマるとクセになることうけあい。

トレント・レズナー&アッティカス・ロスの『ゴーン・ガール』(14)とか、
クリフ・マルティネスの『ソラリス』(02)とか、
クリント・マンセルの『月に囚われた男』とか、
ブライアン・イーノや細野晴臣のアンビエント作品が好きな人にはたまらない音楽になっています。

 

このニマ・ファクララというアーティスト、自分で楽器を一から作ってしまう人でもありまして、最近だと『バイオハザード リベレーションズ2』(15)でもオリジナルの自作楽器で奇妙な音を鳴らしています。

で、今回の『シグナル』でもわざわざこの映画のスコアのレコーディングのためだけに自作楽器をいくつも組み立てて、非常に味のある(ヘンな)音を随所で鳴らしているのです。
一体どんな楽器を作ったのか?
そのあたりを国内盤サントラのブックレットに可能な限り書かせて頂きましたので、
詳しくはそちらを是非ご覧頂きたいと思います。
(ここで書いちゃったらブックレットの意味がなくなってしまうので…スイマセン)

 

ファクララさんお手製の楽器もさることながら、ポピュラーな楽器(ギターとか鍵盤楽器・擦弦楽器など)も音を加工したりしているので、「この映画のサウンドトラックにはフツーの音が一切ないのではないか?」…というくらい不思議ふしぎな音世界が広がっております。

で、まぁ何でこんなに音を加工しなくちゃいけないんだとか、自作楽器なんか使わないでシンセで音を作った方が効率がいいんじゃないかとか、いろいろ思ってしまったりもするわけですが、この映画の場合、音を加工することにも、ヘンテコな自作楽器をあえて使うことにもちゃんと意味があるというのが素晴らしい。
この奇妙だけどもどこか心地よい音楽世界、是非たくさんの人に体感して頂きたいなーと思います。

全編に渡って浮遊感漂うアンビエント・ミュージックが流れる本作ですが、アルバム22曲目にエッジの立った音のテクノ/エレクトロニカ曲が収録されてまして、本編で未使用のボーナストラックか何かかなーと思ったら、ちゃんと映画のラストで流れてました。
Free The Robotsとファクララさんが合作した「2.3.5.41」という曲なのですが、この曲が流れるラストってのは一体どんな結末なんだ?と想像するのも楽しいのではないかと。
ワタクシ個人の感想と致しましては、「この結末ならこういう曲にするしかないだろうなぁ」という感じでした。大変説得力のあるサウンドです。

『シグナル』のサントラ盤はランブリングさんから好評発売中。
「ニマ・ファクララってよく知らないんだけど…」と購入を躊躇しているそこの貴方、アンビエント/エレクトロニカ好きならきっと大丈夫。
迷わず買えよ、買えば分かるさということで、ひとつお買い求め頂ければと思います。

 

『シグナル』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ニマ・ファクララ
レーベル:Rambling Records
品番:RBCP-2892
発売日:2015/03/31
価格:2,400円(+税)

 

 

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