
Filmarksの1990年代名作上映「Filmarks 90’s」企画の第13弾で、今週末から『ファーゴ』(96)の上映が始まるとのこと。
『ファーゴ』は自分が本格的にコーエン兄弟の映画を観た最初の作品だった気がします。
コーエン兄弟が「一風変わった映画を撮ることで定評のある監督」という情報は以前から聞いていたし、『バートン・フィンク』(92)も衛星放送か何かでチラッと観たことがあったけれども(当時の自分はまだ若く、映画を観てもわけが分からなかった)、きちんと映画館へ観に行って、コーエン兄弟の”妙味”を理解して観ることができた作品となると、『ファーゴ』が初ということになります。
そしてカーター・バーウェルの音楽にハマるきっかけとなった作品でもあります。
映画館で『ファーゴ』を観たとき、どこか民俗音楽調で哀愁漂うメロディのメインテーマを聴いて、一気に物語の世界に引き込まれました。
「サントラ盤が出ているならぜひ買いたい」と思ったものの、いまのようにインターネットでリリース情報が簡単に調べられる時代ではなかったので、まずサントラが出ているか出ていないのかもよく分からなかった。仮にリリースされていたとしても、田舎のレコードショップではまず買えないだろうと思っていました。
結局東京に遊びに行ったとき、タワーレコード渋谷店のサントラコーナーで運よく製品を見かけて手に入れることができたのでした。
『ファーゴ』のサントラはTVT Recordsというレーベルからの発売で、『バートン・フィンク』とのカップリング盤でした。
『未来は今』(94)や『ミラーズ・クロッシング』(90)、『赤ちゃん泥棒』(87)と『ブラッドシンプル』(84)のカップリング盤サントラはVareseから発売になっていたので、まず今回Vareseからのリリースでなかったことが意外でした。
『未来は今』が興行的に惨敗したので、もしかしたらその時期コーエン兄弟作品のサントラリリースに消極的だったのかもしれません。
そして今日に至るまで『ファーゴ』のサントラ盤は単独でリリースされていないのでした。
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『ブラッドシンプル』のデラックス版サントラについては、以前書いたブログをご覧ください。
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さて先ほど『ファーゴ』の音楽が民俗音楽調と書きましたが、劇場用パンフレットのプロダクションノートによると「スカンジナビア民謡」の要素を取り入れているのだそうです。
「なぜノースダコタ州が舞台の犯罪映画でスカンジナビア民謡?」となるわけですが、まずファーゴという地域はノルウェーからの移民が多い地域らしい。
そしてバーウェルがスカンジナビア民謡のリサーチを進めていくと、”The Lost Sheep”という賛美歌/フォークソングの「魂を揺さぶるような悲しみ」がウィリアム・H・メイシーの情けないキャラと映画全体を覆う「人生は可笑しくて悲しい」という雰囲気にピッタリだったので、そのメロディをフィルム・ノワール風のオーケストラで発展させることにしたのだとか。特徴的な擦弦楽器の音色は「ハーディングフェーレ」というノルウェーの民族楽器だそうです。
↑もともとの曲(”The Lost Sheep”)と、バーウェルがアレンジしたメインテーマとの比較動画らしい。
『ファーゴ』は滑稽な展開やどこか間の抜けた展開があるにもかかわらず、バーウェルの劇伴は終始シリアスなものが流れている。
この対照的な組み合わせは一体なぜ? と思うわけですが、バーウェルは「音楽がユーモアを奏でればサスペンスが潰れるし、音楽がドラマを奏でればユーモアが潰されるのではないか?」と考えたらしい。
そこで彼「音楽を過剰なまでにシリアスにすれば、逆にコメディの要素を強められるのではないか?」という結論に至ったそうです。
「コッテコテのメロドラマを見ると、真面目にやってるのに大袈裟でベタな展開につい笑ってしまう」という感覚を音楽的に表現したという感じでしょうか。
その結果、あの『ファーゴ』独特の「えっと…いまの場面、笑っていいの?」という独特なユーモア感覚が生まれたと。
これはバーウェルがコーエン兄弟作品の音楽を担当するとき(ほぼ)毎回言えることなのですが、「滑稽な展開でもシリアスで大真面目な劇伴を作曲する」というパターンが多い。
コーエン兄弟の監督作ではないけれども、『マルコヴィッチの穴』(99)の音楽もそういう雰囲気だったと思います。
こういうところがバーウェル音楽の特徴であり、面白さなのだと思います。
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