ラミン・ジャワディの音楽がクオリティー高くていい感じ。わんこCGアニメ『ロイヤルコーギー レックスの大冒険』

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『ロイヤルコーギーレックスの大冒険』(19)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。

音楽担当はハンス・ジマー率いるリモート・コントロール・プロダクションズ組のラミン・ジャワディ。
ワタクシは7回くらいジャワディさんの国内盤サントラにライナーノーツを書かせて頂いているので、ランブリングさんからこちらのご依頼を頂いた時は嬉しかったですね～。

さてそのジャワディさんというと、
『アイアンマン』(08)とか『パシフィック・リム』(13)、
『ゲーム・オブ・スローンズ』(11～19)の音楽の印象が強い人なので、
わんこCGアニメ（しかも製作国がベルギー）の音楽を委託されるというのはちょっと意外かもしれません。

でも師匠のジマーさんだって『ダンケルク』(17)と同じ年に『ボス・ベイビー』(17)の音楽を担当しているし、
ジャワディさんも『オープン・シーズン』(06)の音楽を担当しているので、
実はそれほど驚くことでもなかったりします。

そしてジャワディさんはキャリア初期に『ナットのスペースアドベンチャー3D』(08)というCGアニメ映画（主人公のハエの声を堀北真希がアテてました）の音楽を担当しているのですが、
その映画を監督したベン・スタッセンが、今回の『ロイヤルコーギー』の監督でもあるのでした。
つまり両者は11年のお付き合いがあるというわけ。
しかもその11年の間に、ジャワディさんはスタッセンのCGアニメ映画の音楽をせっせと手掛けていたと。
そのへんの作品リストは、サントラ盤の差込解説書に書かせて頂いたのでここでは割愛。

ちなみに『ナットのスペースアドベンチャー3D（原題：Fly Me To The Moon）』は、「ハエが宇宙に旅立つ」という、ジャズ・スタンダードの名曲タイトルとハエ（Fly）を引っかけた一発ギャグみたいな発想で作ったCGアニメ映画でした。

先ほどもチラッと書いたとおり、『ロイヤルコーギーレックスの大冒険』はベルギーのnWave Picturesというスタジオが製作してます。
なのでディズニーとかピクサー、イルミネーションに比べると低予算な作品なのですね。
実際、本編を観ていても背景の描き込みがアッサリしていたり（ディズニー映画だったら、バッキンガム宮殿の衛兵の人数も10倍くらいいたと思う）、「大冒険」という割には主人公の冒険範囲が案外狭かったり（メインの舞台はバッキンガム宮殿とセント・ジェームズ公園、シェルターの3つくらいだったと思う）ディズニーの『ボルト』(08)とかドリームワークスの『ボス・ベイビー』に比べるとスケール感にやや乏しい感は否めない。

でもしばらく観ているとこの北欧インテリア的なミニマル感が心地よくなってくるというか、
「たまにはこういうアッサリした作りも目が疲れなくていいなぁ」と思ってしまうのが面白いところ。
そして何よりジャワディさんのしっかり作り込まれた音楽が、製作費以上のクオリティーを作品に与えているのです。

ディズニーアニメに比べたら予算（製作費）の点では劣るものの、
オーケストラの生演奏をしっかり使っているし、
映画開始早々に流れるメインテーマの変奏でドラマを展開させる手法も巧い。
サブテーマも2つくらいあって、そのバリエーションも効果的に使ってます。
映画前半は英国王室のわんこアニメらしいエレガントなオーケストラ音楽が流れるのですが、
野犬が保護されている「シェルター」のシーンになると、
一転してギターやシンセを使ったモダンな大衆音楽になるのも面白い。

場当たり的にミッキーマウシングなスコアを流すのではなくて、
しっかりメロディを聴かせる音楽になっているのが嬉しかったですね。
ニメ映画の音楽と言っても、思ったより騒々しくありませんでした。
1曲4分とか9分くらいのスコアもあるので、ボリューム感もなかなか。
全31曲で収録時間67分くらいですね。