音楽にかかる費用を節約したいプロデューサーは、”Song to the Siren”の替わりになる曲(=「似たような曲」ということなのでしょう)を新たに作ることをリンチに提案。そこで作曲担当として白羽の矢が立ったのが、イザベラ・ロッセリーニの歌唱指導の手腕を高く評価されたアンジェロ・バダラメンティだった。
ただ、バダラメンティはリンチをリスペクトしていたので、「宇宙的で永遠に漂うような曲にしてほしい」というリンチのリクエストを元に、詞は一言一句変えず、歌詞に合うようなメロディを作り出していったのだそうです。 そして”永遠に漂うような”雰囲気を出せるシンガーのジュリー・クルーズを連れてきて、紆余曲折の末に名曲”Mysteries of Love”が完成したのでした。
どうもバダラメンティのインタビュー(『マルホランド・ドライブ』4Kレストア版ブルーレイの映像特典)を聞いた感じだと、劇伴の作曲を依頼されたのはそのあとのようですね。 まずイザベラ・ロッセリーニの歌唱指導、次に”Mysteries of Love”の作曲、その後劇伴の作曲という流れかと。リンチからは「ショスタコーヴィチ風の曲は書けるか?」と言われたそうな。つまり『ブルーベルベット』の劇伴はショスタコーヴィチ風の音楽ということになります。
ちなみにディス・モータル・コイルの”Song to the Siren”は、その後『ロスト・ハイウェイ』(97)の劇中で使われました。断片的に3回使ってたかな。曲を使えるだけの予算が確保できたのか、「リンチの映画に使ってもらえるなら」と使用料が割安になったのか分かりませんが(『ブルーベルベット』のときはディス・モータル・コイルの所属レーベルが大金を吹っ掛けてきたらしい)。
Mychael Danna & Jeff Danna『A Celtic Romance』好評発売中! iTunes