THE GREY 凍える太陽(映画について)

リーアム・ニーソンご一行様 vs オオカミ軍団の極寒サバイバル・スリラー映画『THE GREY 凍える太陽』(11)を観てきた。

ノーテンキかつ大味な内容だった『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』(10)に比べたら、実に反骨精神旺盛かつ苦い結末を好むジョー・カーナハンらしい作品でした。『NARC/ナーク』(02)への原点回帰といったところでしょうか(『ブラッド・ガッツ』(98)は未見なので何とも言えませんが)。

ここ最近『センチュリオン』(10)や『フローズン』(10)、『セラフィム・フォールズ』(06)など極寒サバイバル映画を観る機会が多いのですが、『THE GREY』もその系譜に繋がる作品かな、と。

最初はアンソニー・ホプキンスがクマと対峙する『ザ・ワイルド』(97)的な内容をイメージしてましたが、あの映画ほど「野生動物とのガチバトル」を前面に押し出したストーリーではなく、飛行機事故の生存者はほぼ為す術なくオオカミに食われます。そんな中、リーアム・ニーソンご一行様は「生とはなんぞや、死とはなんぞや」と今まで考えた事もないような事を考えさせられるハメになるという、なかなか哲学的な作品だったりします。

ご都合主義的な展開もほとんどないし(墜落事故の際にニーソンがほぼ無傷に近い状態なのはツッコミが入るかもしれませんが)、お色気担当の女性キャラも皆無(CAが出てくるけど墜落事故で即退場)。『96時間』(08)みたいなリーアム無双も炸裂しない。そして映画終盤では神の存在すら否定するかのような場面(セリフ)が登場するという、欧米の映画では珍しい内容。

「死にたくなければ自分で何とかするしかない」
「どうにもならない時は腹を括るしかない」
「大切な記憶や思い出と共に安らかに死ねればまだ幸せ」

…という、極めてシビアな現実を突きつける映画です。

地味かつ男臭い助演キャストも好演。冷静沈着なヘンリック役のダラス・ロバーツ(『3時10分、決断のとき』(07)で最後まで切なそうな顔をしていた人)、子煩悩で信心深そうなタルゲット役のダーモット・マローニー(あの”濃い顔”をヒゲと眼鏡でカモフラージュ。言われないと誰だか分からない変身ぶり)、事ある度に反抗的な態度を取るデイアス役のフランク・グリロ(『プライド&グローリー』(08)の汚職警官や『マザーズデイ』(10)の浮気亭主役の人)の3人がいい味出してます。『パラサイト・バイティング 食人草』(08)で悲惨な最期を遂げたジョー・アンダーソンが、またしても壮絶な最期を遂げるのが印象的でした(あの映画の熱演が認められたという事か?)。

リーアムご一行様がいつ、どの順番でオオカミに食われていくかがこの映画の(サスペンス的な)見どころ…なのですが、「誰がこの地から生き延びる事が出来るのか?」とか言いながら、同じページでしっかりネタバレしてるパンフレットの構成はいかがなものか。映画を観る前にあのページを観たらスリルが半減しますわな。

…というわけで、映画を観る際は極力情報をシャットダウンして本編を鑑賞するようにして頂くとよろしいかと思います。

音楽についてはまた次回。

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