先頃、東日本放送で映画『クラッシュ』(04)を深夜に珍しく放送してまして。
（その前の週は『レスラー』(08)を放送してた気がする）
それで本編を何となく観ていたら、
無性にマーク・アイシャムのスコア盤が聴きたくなった次第です。
『クラッシュ』のサントラはコンピ盤（インスパイア盤）とスコア盤の2種類があって、
そのうちインスパイア盤だけが日本盤としてリリースされました。
当初はマーク・アイシャムのスコア盤も日本盤のリリース予定があったのですが、
結局リリースが実現しなかったのですね。
どうしてそうなったか、という事情も何となく知ってはいるのですが、
申し訳ないのですがここでは内緒。
ちなみに発売元の海外レーベルは今はもう存在せず、
スコア盤もインスパイア盤も廃盤という状態に…。
なおスコア盤は別なレーベルから完全版（？）がiTunesで配信中です。
https://itunes.apple.com/jp/album/crash/id311059183
ただしその完全盤にはバード・ヨークの主題歌と、
ステレオフォニックスの”Maybe Tomorrow”が収録されていないようですが。
そんなわけで、例によってサントラの中身を検証していきましょうか。
まずインスパイア盤の収録曲は以下の通り。
1. If I… – KansasCali
2. Plastic Jesus – Billy Idol
3. Are You Beautiful – Chris Pierce
4. Free – Civilization
5. Hey God – Randy Coleman
6. Take The Pain Away – Al Berry
7. Problems – Move.meant
8. Arrival – Pale 3 featuring Beth Hirsch
9. Acedia (The Noonday Demon) – Quinn
10. Save Me – Bird York
11. Afraid – Quincy
12. Maybe Tomorrow – Sterephonics
そして実際に映画本編で使われた曲はだいたい下記の通り。
（トラディショナル・ソングを除く）
City of Angel – Performed by Sungsoo Kim
God Rest Ye Merry Gentlemen – Traditional (Arrangement by Jon Kull)
In the Deep – Performed by Bird York
Maybe Tomorrow – Performed by Stereophonics
Redemption (2004) – Performed by Mark Isham
Swinging Doors – Written by Merle Haggard
Whiskey Town – Written and Performed by Moot Davis
El llamar de pasion – Performed by Shani
Gonna Buy Me a Rope – Words and Music by Paul Haggis
Problems – Performed by Move.meant
Str8upndown – Performed by Move.meant
困った事に、インスパイア盤に収録されている楽曲のうち、
映画本編で使われたのはMove.meantの”Problems”と、
ステレオフォニックスの”Maybe Tomorrow”だけ。
しかもバード・ヨークの歌が入っていると思ったら、
“In The Deep”じゃなかったという更にガッカリな仕様。
しかしそんなインスパイア盤のイマイチな仕様とは裏腹に、
スコア盤は非常にクオリティの高い仕上がりとなっています。
何よりアイシャムのシンセサイザーを駆使したアンビエント・スコアが素晴らしく、
救いがあったりなかったり、
奇跡が起きたり起きなかったりするビターな群像ドラマを過不足なく彩る、
非常に崇高なサウンドを作り上げています。
音楽の方向性としては、
クリフ・マルチネスとかブライアン・イーノ、デヴィッド・トーンの系統かと。
映画『ドライヴ』(12)のヒットでやっとアンビエント・スコアの面白さが広く知られるようになりましたが、
この頃（2004年）はまだ一部のマニア向けというか、
一般の人には「メロディーのない漠然とした音楽」的な見方しかされていなかったような気がします。
だからこそ、いま改めてこのスコア盤を聴いて頂きたい。
雨の日に目を閉じてじーっとアルバムを聴いてると泣けますよ、きっと。
