アメリカ南部発、ド田舎イカレ系オムニバスストーリー『スティーラーズ』

pawnshop chronicles

ポール・ウォーカーの遺作のひとつ、
『スティーラーズ』(13)のDVDをレンタルで鑑賞。
不運なチンピラの災難コンボスリラー『ワイルド・バレット』(06)や、
人種問題を扱った群像ドラマ『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』(09)のウェイン・クラマー監督作品。
今回は脚本家としてはクレジットされていない模様。
もともとはリンプ・ビズキットのフレッド・ダーストが監督する予定の映画だったらしい。
(ダーストはエグゼクティブ・プロデューサーとして参加)

原題はPawn Shop Chronicles。
アメリカ南部のド田舎にある、
古ぼけた質屋を訪れたワケありの男たちによる、
全3話のオムニバス・バイオレンス・コメディーといった感じの物語。
質屋のオーナーはヴィンセント・ドノフリオで、
従業員が『アイ,ロボット』(04)のチー・マクブライド。
主なエピソードと登場人物は以下の通り。

第1話:ショットガン ドラッグへの道
出演:ポール・ウォーカー、ケヴィン・ランキン、ルーカス・ハース、
ノーマン・リーダス、トーマス・ジェーンほか
ジャンル:クライム・コメディー
あらすじ:ドラッグでラリった感じのアホなチンピラ3人組が、
馴染みのドラッグディーラーからカネを奪おうと試みる話。

第2話:指輪 檻の中の愛
出演:マット・ディロン、イライジャ・ウッド、ペル・ジェームズほか
ジャンル:サイコスリラー
6年前に行方不明になった妻の結婚指輪を質屋で見つけた夫が、
妻の捜索と誘拐相手への壮絶な復讐を試みる話。

第3話:ザ・メダル 十字路
出演:ブレンダン・フレイザー、アシュリー・シンプソンほか
ジャンル:不条理コメディー
サエないエルビス芸人が田舎町の不条理さに翻弄されながら、
地元のフェスティバルのステージショーに出演する話。

まぁ大体こんな内容ですかね。
「スティーラーズ」といっても盗人っぽいのは第1話のチンピラ3人組ぐらいです。
邦題を考えた人は本編を20分くらい観て決めたんでしょうか…?

 

デタラメでくっだらない内容の映画に、
準A級からB級のオールスターキャストが勢揃いというムダに贅沢なキャスティング。
トーマス・”パニッシャー”・ジェーンなんて、
唐突に現れてルーカス・ハースにショットガンを手渡すだけの役。
たぶん、話の内容を分かってないで出演していると思われます。
そしてガスマスクを標準装備のノーマン・リーダスに至っては、
ガスマスクを外さないまま(素顔を見せずに)出番終了。
これは贅沢なのか、嫌がらせなのか、あるいはギャグなのか。
本作の脚本家アダム・ミナロヴィッチと、
『ウォーキング・デッド』繋がりの縁があるからこそ可能だった演出と思われます。

この映画、DVDに「R-15」のマークが燦然と輝いているのですが、
その原因の8割は第2話のドギツイ描写のせいだと思います。
若い女性の拉致・監禁・調教というあの部分がねぇ…。
そして張本人である変態ゲス野郎への”制裁”という名の過激な拷問。
ちなみに変態野郎を演じているのはイライジャ・ウッドです。
『シン・シティ』(05)、『マニアック』(12)に続くサイコ野郎役。
汚れ役に一定の関心を持っているのは、演技派転向に必死だからでしょう。

ブレンダン・フレイザーのエルビス芸人の話に至っては、
シュールの極みという感じ。
まずフレイザーの中途半端なエルビス芸人っぷりがかなりイタい。
(これはワザとやっているので、”イタい”と思われれば成功なのでしょう)
町にある二つの床屋のどちら派かを選ぶことで秩序が保たれているとか、
とにかくワケが分からない。
しかしこの「ワケの分からなさ」も、
「だって南部のド田舎だから」という理屈で全て片付いてしまうところが恐ろしい。

3つのエピソードの中で最も笑えるのは、
やはり第1話の『ショットガン ドラッグへの道』でしょうかね。
無精ヒゲ姿&ラリって緩みきった顔でアホなチンピラを演じたポール・ウォーカーが最高。
ちなみに彼の相棒で、
「会合で出されるメシがうまいからKKKに入った」というイカれたチンピラを演じたケヴィン・ランキン。
『ホワイトハウス・ダウン』(13)で妙にテンションの高い傭兵仲間を演じていた人です。
どおりでどこかで見た顔だと思いましたよ、ええ。
先ほど「デタラメでくっだらない内容の映画」と書きましたが、
そこは『ワイルド・バレット』『正義のゆくえ』のウェイン・クラマー監督。
妙に気合いの入った狭い空間での銃撃戦描写とか、
突発的に発生するバイオレンスとか、
「無関係に見える人同士が、実はすれ違ったり影響し合ったりしている」
「前のエピソードの小ネタが伏線として後半に繋がっている」など、
過去作品で培ったテクニックが発揮されています。
(かなり強引かつ荒削りですけどね…)

 

まぁ万人に勧められる映画ではありませんが、
ポール・ウォーカーのラリラリ演技だけでも一見の価値はあるのではないかと思います。

この映画の要点をまとめると、
一番笑えるエピソード→『ショットガン ドラッグへの道』
一番気の毒で納得いかないエピソード→『指輪 檻の中の愛』
一番シュールでイタいエピソード→『ザ・メダル 十字路』
って事で。

 

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