ネイサン・ファーストのオーケストラ・スコアがアツい『ニード・フォー・スピード』の音楽

need_for_speed_OST

『ワイルド・スピード』シリーズの音楽は、
3作目の『TOKYO DRIFT』(06)からブライアン・タイラーがブイブイいわせてますが、
では『ニード・フォー・スピード』の音楽は誰が手掛けることになったのか。
こちらはネイサン・ファーストという作曲家がスコアを書き下ろしています。

無名の作曲家、異例の抜擢…というわけでもなく、
スコット・ワウ監督とファーストは『ダスト・トゥ・グローリー』(06)、『ネイビーシールズ』(12)でコラボ済。
今回も「昔からの付き合い」でタッグを組んだという感じです。
(ワウは『ダスト・トゥ・グローリー』の製作と撮影監督を担当していました)
日本ではまだ紹介される機会の少ない作曲家ですが、
本作ではなかなかいい音を鳴らしているので要チェックです。

…というか、『ニード・フォー・スピード』の音楽について書く前に、
ちょっとだけ『ダスト・トゥ・グローリー』のことを書かせて頂きます。

dust to glory
この映画、オフロードレースのドキュメンタリー映画だったのですが、
劇中音楽がドキュメンタリー映画の枠を超えたスコアに仕上がっておりまして、
「これアクション・アドベンチャー映画じゃないの?」的なアツいオーケストラ・スコアを鳴らしておりました。
ドキュメンタリー作品としては珍しい「スコア盤」までリリースになりまして、
アクション・スコア好きのコアなサントラ・ファンがめざとくアルバムを見つけて買ってました。
「映画本編は観てないけどサントラだけは聴いた」という人も結構いたとか。

そんなファーストなので、
当然のように今回もアツい音楽を聴かせてくれる…のですが、
『ワイスピ』系のロックやテクノの要素を採り入れたゴリゴリした音ともちょっと違う。
主役はオーケストラですから!と主張しているかのような、
「生オーケストラによる燃えるアクション・スコア」を披露してくれています。

「それじゃあ全20曲激アツなスコアが詰まっているアルバムなのね」…と思うかもしれませんが、
それもちょっと違ったりします。
トラック1のMarshall Mortorsとか、トラック14のSwitching Seatsを聴いて頂くと分かるのですが、
流麗なメロディーとギターの繊細な音色が印象的な、
爽やか青春ドラマのようなスコアも何曲か収録されてます。
アツいアクション・スコアを求める向きには、
もしかしたら少々肩すかしを食らった気分になるかもしれません。
でもね、このドラマ・スコアもメロディアスですごくいいんです!
そしてトラック1の印象的なメロディーが、
後半になるとメインテーマの役割を果たすようになって、
カーアクション・シーンでは「燃えるメロディー」へと姿を変えていくのですねー。

というわけでこの映画、しっかりしたメインテーマを聴かせる音楽になっているんですよ!
ノリ重視の「ハデに鳴らしておけばいい」系のスコアとは一線を画する仕上がり。
「最近のアクション・スコアは打ち込みばっかりで燃えるメロディーがないなぁ」
…とお嘆きの90年代アクション・スコア好きの方にも満足して頂ける作品ではないかと。

かくいう自分も最初にこの映画の音楽を聴いた時は、
「『ワイスピ』に比べるとシブい感じだし、テンポもゆったり気味かな?」と感じたのですが、
映画本編を観たら映像と音楽が完全にマッチしてたし、
「リアル志向のカースタント」ゆえ、
アドレナリン過剰にならないよういい塩梅に抑制を利かせたスコアだと思いました。

 

で、後になってネイサン・ファーストご本人に話を伺う機会に恵まれたのですが、
彼が語ってくれた音楽のコンセプトを聞いて、
僕自身も『ニード・フォー・スピード』の音楽がほぼ理解出来た…ように思います。

ファーストの詳しいコメントやバイオグラフィーについては、
日本盤のライナーノーツに書かせて頂いたのでそちらをご高覧頂きたいのですが、
まぁ『ニード・フォー・スピード』の音楽のポイントを要約させて頂きますと、

ドラマ重視の音作り
メインテーマをスコアの中心に据えたメロディアスな楽曲構成
オーケストラがメインの普遍的なアクション・スコア

…ということになるでしょうか。
原作がゲームソフトなので、
若者向けのバッキンバッキンした音で攻めてくるかと思ったのですが、
意外なほど映画音楽の王道を行くスタイルで来てくれましたね。
ネイサン・ファーストという作曲家、期待していいのではないかと思います。

 

「早く俺にアクション・スコアを聴かせろぉぉぉぉ」という方は、
とりあえずトラック6のKornigsegg Duelや、
トラック10のMotor City Mayhem、
トラック12のHot Fuel、トラック15のUtah Escape、
トラック19, 20のLethal Force~In The Leadあたりを聴いて頂くとよろしいかと。
なかなか燃えますよ。

あ、そうそう。
『ニード・フォー・スピード』のサントラ盤、国内盤はHQCD(High Quality CD)仕様になってます。
ギターのキレイな音色を是非HQCDで味わって頂きたいですね。

『ニード・フォー・スピード』オリジナル・サウンドトラック・スコア
音楽:ネイサン・ファースト
品番:RBCP-2769
発売日:2014/05/14
価格:2,400円(税抜)

 

 

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