『フェリシーと夢のトウシューズ』のサントラ盤を味わい尽くす(挿入歌・既製曲編)

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『フェリシーと夢のトウシューズ』(16)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。

日本盤のみクラウス・バデルトのスコアを完全収録したCD2枚組仕様ですよということで、
前回はバデルトさんのスコアについてあれこれ書かせて頂きましたが、
今回はDisc 1に収録された挿入歌や既製曲をご紹介したいと思います。

本作『フェリシーと夢のトウシューズ』の音楽は、
売れっ子音楽プロデューサーのクリス・ブレイドがほとんどの挿入歌を書き下ろしていて、
それとは別にクラウス・バデルトがオリジナル・スコアを作曲しているという構成になってます。

ディスク1収録曲は以下のとおり。
なお”マジカル・シンカー”というのはクリス・ブレイドの別名です。

1. You Know It’s About You (Magical Thinker & Stephen Wrabel)
2. Be Somebody (Chantal Kreviazuk)
3. Unstoppable (Camila Mora)
4. Blood Sweat and Tears (Magical Thinker & Dezi Paige)
5. Ballerina (Klaus Badelt)
6. Dreams and the Music Box (Klaus Badelt)
7. Escaping the Orphanage (Klaus Badelt)
8. The Liberty Chase (Klaus Badelt)
9. Swan Lake, Op. 20a: Scene (Chappell Recorded)
10. Shannon Reel (Daniel Darras & Youenn Le Berre)
11. You Know It’s About You (Piano & Voice) [Bonus Track] (Magical Thinker & Stephen Wrabel)

 

オープニングタイトル曲のYou Know It’s About Youを歌っているのは、
アフロジャックのTen Feet Tallを歌っているあのレイベルです。
表記が”ステファン・ラベル”になってますが、とにかくあのレイベルです。
特徴的な声なので、歌を聴けばお分かりになるかもしれませんね。

 

Be Somebodyを歌うのはカナダのシャンタール・クレヴィアジック。
『アルマゲドン』(98)のサントラにジョン・デンバーのLeaving On A Jet Planeのカヴァーを提供していた方です。

 

一般的にはUnstoppableといえばSiaの曲を連想しますが、
この映画で使われているのはカミラ・モーラという女性シンガーのオリジナル曲。
(作曲がマティアス・モーラとミア・ミニチエロとなっているので、この曲にはクリス・ブレイドは携わっていないようです)

 

爽やかスポ根ソングBlood Sweat and Tearsを歌うデジ・ペイジは、
どうやらお父さんがビッグ・ブラザー・アンド・ザ・ホールディング・カンパニーのドラマーらしいです。
調べてみたらビッグ・ブラザー(以下略)のドラマーの名前はデイヴ・ゲッツで、
デジ・ペイジさんの本名はエリザベス・ペイジ・ゲッツなので確かな情報ではないかと。
なかなかカッコいい感じのお姉さんです。

 

あとはバデルトさんのスコアをメドレー形式で収録したものが4曲と、
バレエ音楽の定番「白鳥の湖」、
ケルト音楽meetsギターロック的なサウンドを聴かせるユエンヌ・ル・ベール&ダニエル・ダラスのインスト曲という感じ。
(ユエンヌ・ル・ベールの曲についてはサントラ盤のブックレットをご参照下さい)

で、映画本編では上記の曲以外の歌モノも使われておりまして、
リズ・ヒューエットのRainbow、
SiaのSuitcase、
デミ・ロヴァートのConfident、
カーリー・レイ・ジェプセンのCut to the feelingとRunawaysなどが使われておりますが、
残念ながらこちらはサントラ未収録と。

まあいずれもビッグネームな感じのアーティストばかりなので、
恐らく「私の曲はサントラではなくシングルで買って聴いて下さい」という思惑があったか、
あるいは彼女たちの曲の二次使用の範囲を限定する(映画本編での使用のみでサントラには収録しない)ことで高額なライセンス料を安く抑えたか、
そのいずれかの理由によるものではないかと考えられます。
デジタル限定シングルだったカーリー・レイ・ジェプセンのCut to the FeelingはCDでも聴けるらしいので、
こちらをお買い求め頂いて補完して頂くのがよろしいかと。

クリス・ブレイドは普段もSiaの楽曲プロデュースを手掛けているのだから、
彼女の曲ぐらいはサントラに収めてほしかった気も致しますが、
何しろ007映画のサントラに主題歌が収録されなくなったご時世ですから、まあこういう状況も致し方ないのでしょう。

…とはいえ、レイベルやカミラ・モーラ、デジ・ペイジ、
シャンタール・クレヴィアジックが歌う挿入歌も非常にクオリティ高いので、
多少の未収録曲はあるものの物足りなさは全く感じさせません。
普段なかなか名前を耳にすることのないレアな(マニアックな)シンガーの歌声をまとめて楽しめるので、
そういう意味では「新鮮な音楽体験が出来るサントラ」になっているのではないかなーと思います。

『フェリシーと夢のトウシューズ』オリジナル・サウンドトラック
音楽:クラウス・バデルトほか
レーベル:Rambling RECORDS
品番:RBCP-3195
発売日:2017/07/26
定価:2,800円+税(2枚組)

 

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