ラルフとヴァネロペのテーマがより深みを増した『シュガー・ラッシュ:オンライン』の音楽

ウォルト・ディズニー・ジャパン様とユニバーサルミュージック様からのご依頼で、
『シュガー・ラッシュ:オンライン』(18)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
スコア作曲は前作に引き続きヘンリー・ジャックマン。

あとサントラ盤にはイマジン・ドラゴンズのエンドソング”Zero”と、
劇中のミュージカルソング”A Place Called Slaughter Race”、
ジュリア・マイケルズが歌う第2エンドソング”In This Place”、
青山テルマが歌う日本盤ボーナストラック2曲が入ってます。
合計35曲。

今回の仕事はいつも以上にハードでした。。

 

アメリカでもまだビミョーなタイミングで劇場公開前だったので、
サントラ音源やその他資料がなかなか揃わず、
それでも製作スケジュールの都合上、
マスコミ試写を観たらその翌々日くらいにライナーノーツ原稿を提出しなければならなくなり、
3日くらいで原稿を仕上げる事態になったのでした。

ディズニーの大作映画のサントラ盤ライナーノーツ原稿を3日で仕上げるというプレッシャーは、それはもう相当なものです。

その時点では日本盤ボーナストラックも何が入るか分からない段階で、
仮にボートラが入るとしても何曲目なのか?
アルバムの最後に入れてくれるならいいけど、
歌モノだからということで、ジュリア・マイケルズの曲の後に入れることになったらトラックナンバーがズレていくのではないか??
そもそも何曲ボートラが入るんだ??
…という具合に、あれこれ考え出したら不安で不安で仕方なくなりまして。

マスコミ試写の時も、ワタクシとっても楽しい映画をとっても難しい顔で観ておりました。。

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しかし心配ばかりもしていられないので、
音源や今回の映画の資料が届くのを待つ間、
ひたすら前作『シュガー・ラッシュ』(12)の本編を観直して、
サントラ盤を何度も聴き直してしっかり”復習”したうえで、
『シュガー・ラッシュ:オンライン』のお仕事に臨んだのでした。

その結果、今回の音楽をきちんとを分析して聴くことが出来まして、
『シュガー・ラッシュ:オンライン』のスコアは前作のテーマ曲を進化させたサウンドなのだということが分かりました。

 

今回は「ラルフのテーマ」と「ヴァネロペのテーマ」のドラマ性が前作以上に深くなっている印象。
「ラルフのテーマ」のバリエーションがなかなか秀逸で、
ヴァネロペと楽しい時を過ごすラルフ、
騒動を繰り広げるラルフ、
ヴァネロペと心がすれ違って傷心のラルフ、
友情に固執して”モンスター”を生み出してしまった闇ラルフ…などなど、
テーマ曲のバリエーションでラルフの感情の変化がしっかり表現されてました。

『キングコング 髑髏島の巨神』(17)の音楽を担当したジャックマンが、
「聖マッスル」の人間城みたいな造形(?)のラルフコングが大暴れするシーンのスコアを作曲するというのも興味深い。

「ヴァネロペのテーマ」も前作は子ども子どもした感じ(あるいはゲーム音楽っぽい感じ)のものが多かった印象ですが、
今回はより多彩なアレンジで演奏されていたかなーという印象。
前作から6年経って、ラルフとヴァネロペのテーマも音楽的に熟成された感じ。

 

全体的サウンドは前作同様「オーケストラ+シンセ」という構成で、
エレクトロポップ(シンセポップ)風味が効いている楽しい音楽なのですが、
今回は「ゲームの世界を飛び出して、より広大なインターネットの世界へ!」というストーリー展開なので、電子音の表現の幅も広がったような気がします(バズチューブの社長イエスのテーマとか)。

ちょっと意外だったのがシャンクのテーマ…というか、「スローターレース」の世界の音楽。
「スローターレース」が『ワイルド・スピード』的バンカラ指数の高い世界観で、
シャンクの声が同シリーズでジゼルを演じたガル・ガドットと来たら、
『ワイスピ』でブライアン・タイラーが鳴らしていたような音楽をこの映画でも流すんだろうなーと予想していたわけです。

ところがいざ本編の音楽を聴いてみたら、
『ワイスピ』系のゴリゴリのギターロックではなく、
どちらかというと70年代風ファンクロックなスコアでビックリ。
「あ、そっちの方向で来るの!?」と思った次第です。

で、よく考えてみると、
劇中「スローターレース」の世界でヴァネロペやシャンク、バンカラ系脇役キャラたちがアラン・メンケン作曲のミュージカルソングを歌うシーンがありまして、
これって「治安の悪そうな下町で不良たちが歌い踊る」という『ウエスト・サイド物語』(61)的な展開なわけです。
だから普段の「スローターレース」の世界の音楽も、
最新のギターロック/ハウスミュージック系のスコアよりも、
ちょっとレトロなテイストのスコアの方が雰囲気的に合っていると。
そういうことも計算した上での音楽設計なのではないかなーと思うのです。

本作はディズニープリンセスやディズニーキャラが大集合ということで、
ジャックマンの音楽もある場面でちょっとした”遊び”を入れてきているのですが、
そのことについてはあえてライナーノーツでは書きませんでした。

…というのも、これについては事前情報なしで聴いて頂いて、
「エッ!? ちょっと待って今のメロディってアレじゃない!?」とサプライズを味わって頂きたいなと思ったので…。

まぁよほどじっくり聴きこまないと分からないネタとか、
分かる人にしか分からないネタだったら拙稿で詳しく説明していたと思いますが、
このサントラの音楽的な”遊び”はちょっと聴けばすぐに分かるネタだったので、
これはあえてネタをバラさずに、「おやっ?」という驚きを楽しんで頂こうと。
そう判断した次第でございます。

少しだけヒントを書かせて頂くとするならば、
19曲目のVanellope’s Marchと、
30曲目のA Big Strong Man In Need of Rescuingをじっくり聴いて頂きたいなと。
きっと面白い発見があると思うので。

…というわけでジャックマンのオリジナルスコア30曲と、
エンドソング&挿入歌3曲、
ボーナストラック2曲を収録した盛りだくさんな内容となっておりますので、日本版サントラをよろしくお願い致します。

 

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『シュガー・ラッシュ:オンライン』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ヘンリー・ジャックマン & Various Artists
レーベル:Walt Disney Records / ユニバーサルミュージック
品番:UWCD-1010
発売日:2018/12/19
定価:2,500円+税

 

 

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