重すぎず、さりとて軽すぎず。セオドア・シャピロは『シンプル・フェイバー』のスコアをオシャレにキメる。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『シンプル・フェイバー』(18)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽はベン・スティラーの『LIFE!/ライフ』(13)や、
伝記映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(15)で高い評価を受けたセオドア・シャピロ。
どちらかというとコメディ映画への登板が多い作曲家さんですね。
ちなみにワタクシ以前『トランボ』のサントラ盤にもライナーノーツを書かせて頂いたのですが。

■過去記事
ジャズ、ミニマリズム、エモーショナル…『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』の音楽を味わうの巻
https://www.marigold-mu.net/blog/archives/7875

 

本題に入る前に重要なことを書かせて頂きますが、
こちらのサントラはセオドア・シャピロの「スコア盤」なので、
劇中で使われたジャン・ポール・ケラーやフランソワーズ・アルディ、
セルジュ・ゲンズブール、ブリジット・バルドー、
フランス・ギャルなどの歌モノは入っておりませんのでご注意下さい。
アナログ盤でソングコンピレーション盤が出てるっぽいのですが、
日本のamazonではブツが見当たらないんですよね。。

閑話休題。

さて『シンプル・フェイバー』は割とガチな感じの「ママ友ミステリー映画」という話を聞いていたので、音楽は一体どんな感じになるんだろうと思いました。

監督が『ブライズメイズ』(11)とか女性版『ゴーストバスターズ』(16)のポール・フェイグとなると、これは絶対フツーのシリアスなミステリー映画にはならないだろうと思ったし、
シャピロがダークでエロティックな音楽を聴かせるというイメージもちょっと湧かなかったんですね。

で、いざランブリングさんから頂いた音源を聴いてみたら、
「なるほどこう来ましたか!」と思わず唸らされてしまいました。

 

まず全体的に「オーケストラ+シンセ」のオシャレな感じに仕上がってます。
シャピロはドタバタしたコメディ映画でも比較的オシャレな音作りをしていて、
大ヒットした『プラダを来た悪魔』(06)を筆頭に、
マニー・マークをゲスト・ミュージシャンに迎えた『ディック&ジェーン 復讐は最高!』(05)とか、
ホセ・ゴンザレスをフィーチャーした『LIFE!/ライフ』、
プリペアド・ピアノを効果的に使った『トランボ』など、
常にひと手間かけたスコアを作曲していました。
『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(08)に至っては、
コメディと言いつつほとんどシャピロ流の戦争アクション音楽です。
(そして非常にクオリティの高いアクション・スコアだった)

今回の『シンプル・フェイバー』は、前述のようなシャピロの「オシャレな音作り」と、「ひと手間加えた音作り」が活きているスコアに仕上がっているなーと思います。

まずメインテーマの流麗なメロディがいい
そしてその旋律を奏でるちょっと不思議な感じの音がまたいい
ヴィブラフォンやチェレスタ、トイピアノっぽい音なのですが、
たぶんキーボードのサンプリング音源か何かではないかと。

劇中では歌モノ(オサレ系懐メロフレンチポップス)が幅を利かせているにもかかわらず、
メインテーマのほかに「ステファニーのテーマ」と「エミリーのテーマ」が用意されているのも素晴らしい
どのメロディがどのテーマに相当するのかは、
サントラ盤のライナーノーツの中でざっくり分析させて頂きましたので、
そちらをご覧頂ければと思います。

 

『シンプル・フェイバー』は一応サスペンス・スリラーということになりますが、
「え!? そこで笑いの要素を入れてくるの?」という演出が結構ありまして、
同じ系列の『ゴーン・ガール』(14)や『ガール・オン・ザ・トレイン』(16)に比べるとドロドロしていない。
フェイグはこの映画で「21世紀のサバーバン・ノワール」を作りたいと思っていたそうで、
まあ簡単に言えば「陽光降り注ぐ郊外の閑静な住宅街で、明るい見た目とは裏腹のヤバい事件が起こってます」的なドラマを作りたかったと。

だからシャピロの音楽も、トレント・レズナー&アティカス・ロスやダニー・エルフマンのスコアに比べると極端に重くない。
ボン・ボン・ボン・ボンというシンセベースの音が絶妙なリズム感を生み出していて、物語にスピード感を与えている気さえします。
「オシャレで心地よい音楽なんだけど、ちょっとミステリアスでキケンな感じ」という絶妙なバランスの音楽を作っているんですねー。
セオドア・シャピロ、『トランボ』に続いてなかなかいい仕事をしています。


映画本編は前述のフレンチポップスとか、
物語終盤でアナ・ケンドリックがカマすラップとか、
エンドクレジットのフランス・ギャルの名曲”Laisse Tomber Les Filles”のカヴァーの印象が強烈なので、
正直シャピロの音楽はいい仕事をしているのに、おいしいところを歌モノに持って行かれていてちょっと分が悪いんですね。。
なので、彼の優れた仕事は是非このスコア盤でじっくり味わって頂きたい。
『トランボ』の音楽が好きだった方や、チェレスタ/ヴィブラフォン系の鍵盤・マレット楽器系の減衰音が好きな方はハマる音楽ですよ。

『シンプル・フェイバー』スコア盤(amazon)

『シンプル・フェイバー』オリジナル・サウンドトラック・スコア
音楽:セオドア・シャピロ
レーベル:Rambling RECORDS
品番:RBCP-3308
発売日:2019/02/20
定価:2,400円+税

 

 

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