トム・ホルケンボルフの音楽で「銃夢」の実写映画が観られるという幸せ――『アリータ:バトル・エンジェル』

花粉症で体調最悪な中、
先日『アリータ:バトル・エンジェル』(19)を観てきたのですが、
当方の想像以上によく出来ていて面白かったです。

ワタクシが『銃夢』の世界に触れるのは、
たぶんプレイステーションの『銃夢 ~火星の記憶~』以来。
久々に「パンツァークンスト」という言葉を聞いて懐かし嬉しくなりました。

今回の実写版の「パッチリおめめビジュアル」についても、
映画開始数分で全く気にならなくなりました。
…というか、「限りなく人間に近い造形のサイボーグ」ならあれで全く問題なしだろうと。
実写版アリータの愛おしさは、
止め絵のビジュアルでは十分伝わらないところがありますね。
実写で動いているガリィさん(=アリータ)を観て初めてあの魅力が分かるというか。

スコアの作曲はジャンキーXLことトム・ホルケンボルフ。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)、
『トゥームレイダー ファースト・ミッション』(18)、
『移動都市/モータル・エンジン』(19)など、
近年すっかり「戦う女性のアクション映画音楽といえばこの人」みたいな感じになってます。

今回の『アリータ』の音楽も期待に違わぬクオリティで、
メインテーマのメロディがしっかりした迫力のフルオケ・スコアを聴かせてくれていました。
アリータとヒューゴの悲恋にフォーカスした美しい旋律がイイ。
未来世界の話なので、もっと派手に電子音を鳴らしてくるかなと思ったのですが、
ゴリゴリのエレクトロ・ビートに乗せてオーケストラ・サウンドを響かせるタイプ(『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の”Brothers in Arms”みたいなノリ)の音楽は、クライマックスのモーターボールのシーンまで温存していた印象。
抑揚をつけたいいスコアだったと思います。

 

『銃夢』のハリウッド実写化の企画は20年近く前からあったそうですが、
CG技術の進化だけでなく、
映画音楽的な側面から考えても、
いまのこの時期に実写化されてよかったと思います。

…というのも、もし90年代後半~2000年代前半に実写化されていたら、
インダストリアル・ロックとテクノ系アーティストのタイアップ重視のサウンドトラックになっていたと思うのです。
(『マトリックス』(99)のコンピレーション盤とか『ローラーボール』(02)みたいな感じ)
モーターボールのシーンでも、
既存のインダストリアル・ロックやハードテクノ、
ヒップホップなどがガンガン流れていたかもしれない。
それだと『銃夢』の独特な世界観がちょっとチープになってしまう危険性があった。

その頃はまだホルケンボルフも映画音楽の世界でキャリアを確立させていなかったわけで、
彼の渾身のフルオケ・スコアで実写版『銃夢』の世界が凜々しく彩られるというのは、まさに今のこの時期に実写化が実現したからこそ可能になったことなのではないかと。
まぁ、ワタクシそのように思っているのです。

Dua Lipaが歌うエンディングテーマの”Swan Song”も、
ホルケンボルフが共同作曲と演奏に名前を連ねているから、
劇中のスコアとサウンド的な統一感がある。
タイアップ重視のアーティスト起用ではこうはいかなかったかもしれません。

…もっとも、もし90年代後半~2000年代前半にジェームズ・キャメロン自ら監督を務めていたら、
音楽はジェームズ・ホーナーが担当していた可能性が高いので、
ホーナーならクオリティの高いスコアを作曲していただろうし、
当時製作されたSFアクション映画に顕著だった、
ロック/テクノのコンピレーション的なサウンドトラックにはならなかったのかもしれませんが。


『アリータ:バトル・エンジェル』オリジナル・サウンドトラック(amazon:輸入盤)
Alita: Battle Angel Original Soundtrack (Tower Records)

まあ何にしても、今回の『アリータ:バトル・エンジェル』が「映画音楽家のスコア(劇伴)をじっくり聴かせるSF映画」に仕上がってくれたの個人的にはとても嬉しかったりします。

 

 

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