『ハンターキラー 潜航せよ』のトレヴァー・モリスの音楽がとても親切設計な件

『ハンターキラー 潜航せよ』オリジナル・サウンドトラック(amazon)
『ハンターキラー 潜航せよ』オリジナル・サウンドトラック (TOWER RECORDS)

先日『ハンターキラー 潜航せよ』(18)を観てきました。

この手の映画で前評判が高いというのはちょっと珍しいケースだなと思っていたのですが、いやいや前評判に違わぬ大変見応えのある映画でございました。

潜水艦映画と特殊部隊映画のアクションいいとこどり、
そこにペンタゴンとロシア政府、クーデター組織の駆け引きのドラマを加えて、
米露潜水艦艦長の男のドラマと、
ネイビーシールズ隊員の男の友情ドラマまで描いてしまう欲張り仕様。
しかも絶妙なタイミングで潜水艦と司令部・シールズの場面を切り替えるので、
122分ずっと緊張感が維持されてダレ場が全くないのが素晴らしい。

ドノヴァン・マーシュ監督すげぇ!…と思いました。

『ハンターキラー』を観た後、
マーシュ監督の『裏切りの獣たち』(13)を観たのですが、
これもまたよく出来た犯罪映画でして。
限定された空間でのスピード感のあるカメラワークとか、
極限状況下での緊迫した人間ドラマの見せ方とか、
犯罪者集団と軍人/政治家という違いこそあれ、
両作品に共通する部分がかなりあったなーという印象。

『裏切りの獣たち』を観て『ハンターキラー』の監督に抜擢した製作陣はいいセンスしてますわ。

で、ドラマのテンション(和製英語のほうではなく、本来の”緊張”の意味)を高める音楽を作曲したのは、『エンド・オブ・ホワイトハウス』(13)、『エンド・オブ・キングダム』(16)の作曲家のトレヴァー・モリス。
『ハンターキラー』はジェラルド・バトラーの製作会社「G-BASE」も携わっているので、「それじゃあ音楽もモリスで」ということになったのでしょう。

 

ワタクシこの方の音楽は結構古くから聴いていて、
初めてモリスの名前を意識するようになったのは『ステルス』(05)からでした。
メイン作曲家はトランスミュージック畑のBTだったのですが、
モリスも結構な割合の追加音楽を作曲していて、
「これなら共同作曲者みたいな感じで”Music by BT and Trevor Morris”にしてもいいんじゃないかなー」と思ったほどでした。
何でこんなに『ステルス』の音楽を聴きこんだかというと、ワタクシがスコア盤にライナーノーツを書かせて頂いたからなのですが。

モリスは一時期リモート・コントロール・プロダクションズで働いていたのですが、割と早い時期に独立したみたいなんですよね。
で、「代表作を持たないうちにRCPから独立すると、その後伸び悩む」みたいな傾向があるものの、モリスはTVシリーズ『THE TUDORS 背徳の王冠』(07~10)や『インモータルズ 神々の戦い』(11)などでなかなか重厚な音楽を聴かせてくれていまして、
これらの仕事がバトラーさんのところの『エンド・オブ』シリーズへの起用につながったと。

そんなわけで、前置きが長くなりましたが『ハンターキラー』の音楽も実によく出来ておりまして、オーケストラに打ち込みのリズムや電子音を組み合わせた、重厚かつキレのあるスコアになってます。

特筆すべきは、サントラ盤のライナーノーツの中でも言及されていましたが、
「潜水艦のシーンの音楽」と「SEALsのシーンの音楽」が容易に聞き分けられる音設計になっていることでしょう。
潜水艦のシーンの音楽は、低音の弦とヘヴィな律動を用いた重厚な曲。
SEALsのシーンの音楽は、打ち込みのリズムを前面に押し出したテンポの速い曲になっていて、
映像を観ないで音楽だけ聴いても、「これは潜水艦の場面の曲」「これはSEALsの場面の曲」とすぐに分かる。

しかも潜水艦のシーンの主要な曲には、曲タイトルに”Glass’ Theme”、”USS Arkansas Theme”、”Brotherhood Theme”と書かれてあるので、
どの旋律が「グラス艦長のテーマ」で、「USSアーカンソーのテーマ」で、「グラス艦長とアンドロポフ艦長の友愛のテーマ」なのかもすぐに分かるようになっている。これを新設設計と言わずに何と言う、という感じ。

聞き方によってはなかなか”熱い”音楽ではあるのだけれども、「アメリカ万歳!強さこそ正義!」みたいな戦意を高揚させる”熱さ”ではないところもポイント。
どちらかというと国の違い・立場の違いを超えた男の友情とか、プロフェッショナルな男たちの崇高な精神を感じさせる”熱さ”を内包した音楽と言えるでしょう。

サントラ盤はCD2枚組なので、
劇中で使われたスコアはたぶんほぼ全曲収録してあると思います。
映画本編を気に入った方はマストバイなアイテムではないかと。

ちなみに映画パンフの”「潜水艦モノに外れなし」は本当だ!”のコラムで見事にスルーされていましたが、『ファントム 開戦前夜』(13)と『ブラック・シー』(14)も近年の潜水艦映画ではなかなかの佳作なので、こちらも是非観て頂きたいなーと思います。『ブラック・シー』の一攫千金を夢見る労働者たちのドロドロした人間ドラマは必見かと。

 

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