THE 4TH KIND

the 4th kind

この『フォース・カインド』(09)という映画、先月上旬に内覧試写を観に行った時には貰った資料に12/23(水)公開予定と書いてあったんですが、どうやら18日(金)に変更になったようですな。

プレス資料の裏に「ネタバレになるような表現を使用されての(記事・宣伝の)ご掲載に関しましてはご配慮下さい」と書いてあるので、その言いつけを守るとなると、非常に紹介が困難な作品なんですよねー。でもまぁ、その辺に気をつけてあれこれ書いてみたいと思います。

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パブリック・エネミーズ(豪華すぎるキャストについて)

映画ファンの間では「マイケル・マン・クオリティー」なる言葉があるそうです。
どうやら「どうでもいいような所にまでムダにこだわる(=お金をかける)」事を意味するらしい。
言い得て妙、という気も致しますが。

ま、そういうわけで、ロケ地とか音響効果とか使用曲とかカメラとか、
いろんなものにこだわるマンですが、
キャスティングのこだわりも半端じゃない。
今回も「別にこの役者じゃなくてもいいのでは・・・?」という小さい役にも有名俳優を使ってます。

まず「チーム・デリンジャー」側はと申しますと、
映画冒頭の脱獄劇で早々と姿を消すウォルター・ディートリッヒ役に『フェイク』(97)、『ナインスゲート』(99)でジョニー・デップと共演したジェームズ・ルッソ。
画面に登場した途端、パーヴィスにあっさり射殺されるプリティボーイ・フロイド役に『G.I.ジョー』(09)で主役を張ったチャニング・テイタム。
二人とも何とも勿体ない使い方。

メイン級のキャラでは、
ホーマー・ヴァン・メーター役(『ヒート』(95)でいうところのトム・サイズモア的ポジション)に『ブレイド』(98)のスティーヴン・ドーフ、
レッド・ハミルトン役(『ヒート』のヴァル・キルマー的ポジション)に『デス・レース』(08)のジェイソン・クラーク、
ハリー・”ピート”・ピアポント役はデヴィッド・ウェンハム。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのファラミア役の人ですね。
ベイビーフェイス・ネルソン役に『スナッチ』(00)でジェイソン・ステイサムのヘタレな相棒を演じたスティーヴン・グレアム。
特に目立った活躍はしないアルヴィン・カーピス役にも『ロスト・イン・トランスレーション』(03)のジョヴァンニ・リビシをキャスティング。
デリンジャーを快く思わないヤクザの大物フィル・ダンドレア役は『ワイルド・スピードMAX』(09)、『マイアミ・バイス』(06)のジョン・オーティス。
よくぞここまで集めたという顔ぶれ。ハリウッド版「悪役商会」といったところでしょうか。

対する司法(Gメン)側は、
J・エドガー・フーバー役に『M:I:3』(06)、『ウォッチメン』(09:Dr.マンハッタン役)のビリー・クラダップ。
この人、すっかり官僚役が似合う感じの風体になってしまいました。
パーヴィスの相棒カーター・ボーム役に『CSI:マイアミ』のロリー・コクレイン。
最後に見せ場が用意されているチャールズ・ウィンステッド役に『ハード・ウェイ』(91)のパーティー・クラッシャー役が印象深いスティーヴン・ラング。
この人、マンが製作したTVシリーズ『クライム・ストーリー』にも出てましたね。
ほとんどセリフのないクラレンス・ハート役に『デジャヴ』(06)、『タイムライン』(03)のマット・クレイヴン。
ジョン・メダラ役に『パラサイト』(98)のショーン・ハトシーなどなど。

女優陣では、デリンジャーに車を盗まれるリリアン・ホリー保安官役で『身代金』(96)のリリー・テイラーが登場。
銀行強盗時に人質にされるアンナ・パツケ役は『LOST』のエミリー・デ・レイビン。
終盤に何となく登場するポリー・ハミルトン役にはリリー・ソビエスキー。
その他『17歳の肖像』(09)でオスカーにノミネートされた若手演技派女優キャリー・マリガンをキャロル・スレイマン役で起用(ほんの数カットの出演)。
そしてトドメはクラブ歌手(いわゆるトーチ・シンガー)役でカメオ出演しているダイアナ・クラール。
出番はほんの少しなのに、あえてクラール本人を引っ張ってくるところが無駄にスゴイ。

・・・とまぁ、豪華極まりないキャスティングなのでございます。
これだけの実力派俳優がいたら2、3本は映画が撮れてしまうんではないかと。
考えてみれば、『ヒート』も『インサイダー』(99)も端役に至るまですごい顔ぶれでしたからね。

マイケル・マン・クオリティ恐るべし。

画面に大写しになるのが一瞬だったり、
帽子を被っていて顔がよく見えなかったりするので、
この映画をご覧になる際には、上記の役者さんたちの出番を是非お見逃しなく。

  

パブリック・エネミーズ(音楽について)

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マイケル・マン映画に欠かせないものと言ったら、
そりゃもう凝りに凝った選曲で聞かせるサウンドトラックに他ならないわけで、
今回も男臭い世界を彩るクールで激シブな楽曲がズラリと揃いました。

まず映画の予告編で使われるや否や
「このカッコイイ曲は何?」とサントラ・ファンの関心を集めたギター曲ですが、
これはブルース・ミュージシャンのOtis Taylorが歌う”Ten Million Slaves”という曲。
映画ではもう一曲、テイラーの”Nasty Letter”という曲が使われているのですが、
こちらは本作より先に『ザ・シューター/極大射程』(07)のラストで使われてました。
どっちも激シブでイカす曲なんですが、
個人的には後者の方がお気に入り。
なぜかというと、映画の中でなかなかスタイリッシュな曲の使われ方をしているから。
強いて言うなら、『コラテラル』(04)でAudioslaveの”Shadow On The Sun”が使われた時の、
あのノリに近いかもしれません。

そんなテイラーの曲も秀逸なのですが、
それ以上に本作のサウンドトラックを語る上で欠かせないのが、
ダイアナ・クラールが歌う”Bye Bye Blackbird”でしょう。
映画では序盤のクラブのシーンで流れるのですが、
この曲はそれ以降もビリーとデリンジャーの関係を象徴する曲として重要な意味を持っていきます。
映画のラストではこの曲の題名に引っかけたセリフのやり取りがあるのですが、
これがまた泣ける。
少々クサい演出だけど泣ける。
「硬派なフリしてロマンティスト」というマイケル・マン節が炸裂する名場面といえるでしょう。

その他、サントラ盤にはビリー・ホリデイの曲が3曲、
ブルース・フォーラーのスウィング・ジャズ、
Blind Willie Johnsonの陰鬱なブルース、賛美歌などが収録されています。

オリジナル・スコアの作曲は、『ヒート』(95)以来久々のマン作品登板になるエリオット・ゴールデンサル。
『タイタス』(99)とか『エイリアン3』(92)のあの個性的なスコアに比べると、
今回はかなり抑制の利いたサウンド。テーマ曲の哀愁のメロディーが印象的です。

マイケル・マンは既存のスコアを使い回す事も結構多いのですが、
特に『ヒート』のスコアが今でもお気に入りらしく、
『コラテラル』と『マイアミ・バイス』(06)でも一部のスコアを使い回していましたが、
今回も”Hanna Shoots Neil”を使ってました。

エンドクレジットによると、
その他にも『悲しみが乾くまで』(07)からヨハン・セーデルクヴィスト&グスターボ・サンタオラヤの”After the Shooting”、
『シン・レッド・ライン』(98)からジョン・パウエルの”Beam”(音楽はハンス・ジマー担当でしたが、このスコアに関してはパウエル作曲だったらしい)を使っていた模様です。
テンプ・トラックで使った曲をそのまま完成版に使ったのかな。
せっかくゴールデンサルと組んだんだから、曲を書き下ろしてもらえばいいのに…とも思いますが。

何はともあれ、サントラ盤はゴールデンサルの重厚なスコア7曲と、
ブルース/ジャズを中心にセレクトした歌モノ9曲を収録した、
渋いコンピレーション・アルバムに仕上がっております。
マン作品のサントラにハズレなし。

アーティストについてはライナーノーツで簡単に紹介させて頂きましたので、
そちらの方も併せて目を通して頂ければと思います。

 

『パブリック・エネミーズ』オリジナル・サウンドトラック
音楽:エリオット・ゴールデンサル他
品番:UCCL-1150
定価:2,500円

 

パブリック・エネミーズ

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公開まで1ヶ月を切ったし、
そろそろ宣伝も兼ねてこの映画についてあれこれ書いた方がよさそうな気がするので、
本日は『パブリック・エネミーズ』(09)のお話。

この映画、東宝東和さんの試写で見せてもらったのが8月中旬でした。
ちょうど前日に『ワイルド・スピードMAX』(09)の試写で東京に来ていたので、
せっかくだからもう一本観て帰ろう!と思い立ち、
試写日程の連絡をくれたユニバーサルミュージックのMさんに
「ぜひ行かせて頂きます!」と電話で即答したのでありました。
夕方は小学校時代の友達ともミニ同窓会で盛り上がったし、
この週は充実した東京出張でございました。

閑話休題。

監督がマイケル・マンで、ジョニー・デップがジョン・デリンジャーを、
クリスチャン・ベールがFBIのメルヴィン・パーヴィスを演じると聞いて、
当初は「1930年代を舞台にして『ヒート』(95)的な事をまたやりたいんだな」と思ったのですが、
いざ本編を見てみるとそうでもない事が判明。
物語の中心になっているのはデリンジャーとビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)の破滅的な愛の逃亡劇で、
デリンジャー=デップが主役の映画でした。

まぁ、『ヒート』もデ・ニーロとエイミー・ブレネマンが終盤に逃避行を試みていましたけど・・・。

そんなわけで、パチーノとデ・ニーロの”2大競演”がウリの『ヒート』と違って、
今回のベールは脇役扱い。
とはいえ、ベールは主役を食わない程度に存在感を発揮(←ここがベールの巧いところ)して、
『アメリカン・サイコ』(00)の時のようなニヒルな佇まいを見せてくれています。
ベールの出演シーンもちゃんと観てあげて下さいね。

そして肝心のジョニー・デップなのですが、
クラシックなギャングスター姿もイケてます。
ジャック・スパロウのようなキャッチーな要素は一切ナシ。
でも銀行強盗時のクールな振る舞いなどは、『ヒート』のデ・ニーロに勝るとも劣らないカッコよさ。
劇中、結構クサい演出もあったりするのですが、
まぁデップなら絵になるので許すという感じ。
マイケル・マンは一見硬派そうですが、
実はかなりのロマンティストではないかと自分は見ております。
まぁ自分はそういう部分も含めてマン作品が好きなので、
随所で「マイケル・マン節」が炸裂する本作を楽しんで拝見させて頂きました。

この映画、公開前から「1930年代のドラマをHDカメラで撮るのはいかがなものか?」という事が話題になってました。
レトロな時代の映画なら、フィルムで撮影してセピアがかった映像にすれば味が出るのに…という事なのだと思いますが、
マンは近作でHDカメラを使いまくっているし、
「わざとらしく古臭さを強調する要素は一切排除したかった」と言っているので、
そういう画作りには全然興味がなかったみたいです。

多分、「もし1930年代のあの場にいたらどう見えるか?」・・・という映像を作りたかったのでしょう。
ドキュメンタリー・タッチの映像というヤツでしょうか。
こういう試みはあまりなかったので、なかなか新鮮です(好みは分かれるでしょうけれども)。
ちなみに撮影監督は『インサイダー』(99)以来久々のタッグになる名手ダンテ・スピノッティ。

で、マイケル・マンの映画と言えばリアルな銃撃戦とこだわり抜いた音響効果も要チェックなわけで、
今回もマシンガンを撃ちまくる銃撃戦が用意されております。
マニアな方には、リトルボヘミア・ロッジ銃撃戦の音響効果とか、
フォードのV8フラット・ヘッド・エンジンの音なども楽しんで頂けるのではないかと。

マン監督のもうひとつのこだわり、サウンドトラック(劇中音楽)についてはまた後ほど。