ジェフ・ダナ名作選 / At Sachem Farm (1998)

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『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。

今回は弟ジェフの作品から『At Sachem Farm』(98)をご紹介します。

・・・といっても、この映画は日本未公開でDVD化もされてないんですよねー。ノース・カリフォルニアの広大な敷地に住むイギリス人青年ロス(ルーファス・シーウェル)と、婚約者(ミニー・ドライヴァー)、変わり者の叔父(ナイジェル・ホーソーン)、ロスの弟らの人間模様を描いたヒューマン・ドラマといった内容。

映画の内容も地味だし、劇場公開やDVDリリース、TV放映の度にタイトルが”At Sachem Farm”、”Higher Love”、”Uncorked”とコロコロ変わるなど不遇な扱いを受けた映画でもあるのですが、「音楽がいい映画」と当時そこそこ話題になりました。

この映画の途中で、ロスがギターコンサートを開くシーンがあるのですが、この場面の音楽に注目が集まりました。ここで実際にギターを弾いているのが、ルーファス・シーウェル・・・ではなく、映画のオリジナル・スコアを作曲しているジェフ・ダナ本人というわけです。

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DARK SHADOWS(音楽について)

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ジョニー・デップ×ティム・バートンのタッグ作品という事で、それなりにスマッシュヒットが見込める映画と判断させたせいか、『ダーク・シャドウ』(12)のサントラは劇中使われた歌モノを収録したコンピ盤と、ダニー・エルフマンのスコア盤の2種類がリリースされました。

しかもスコア盤は配信のみとかではなく、ちゃんとしたプレスCDでのリリース。素晴らしい。

エルフマンの音楽は、オーケストラとコーラス隊、打楽器をドコドコ鳴らす「いつもの」スコア。滑稽さは抑えめにして、割と本格的なゴシックホラー音楽を聞かせてくれています。メインテーマのメロディーも、いかにもエルフマンらしい感じ。正確には「ティム・バートンと組んだ時のエルフマンらしいメロディー」と言うべきか。

本編を観る前にこのアルバムを聴いていたら、「『ビートルジュース』(88)みたいな映画なのかな?」なんて間違った先入観を持たずに『ダーク・シャドウ』の世界にどっぷり浸かれたのかもしれません。どうでもいい事ですが、アルバムのトリを飾る”We Will End You!”のイントロのリズムがQueenの”We Will Rock You”に似ている(ように聞こえる)のはワザとでしょうか。

活劇タッチの大仰なスコアもよいのですが、バーナバスとジョゼット(18世紀の元恋人)/ヴィクトリア(現代のワケあり家庭教師)の悲恋を予兆させる物悲しいスコアも素晴らしい出来です。

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マイケル・ダナ名作選 / エキゾチカ (1994)

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5/15にレーベルから『ケルティック・ロマンス』もリリースした事ですし、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る意味も込めて、彼らが手掛けたサントラを不定期で紹介していこうと思います。

1回目は何にしようかなと思ったのですが、1度聴いたら忘れられない楽曲の強烈なインパクトと、アトム・エゴヤンとマイケル・ダナの名前を一躍有名にした作品という事で、1994年の映画『エキゾチカ』(94)にさせて頂きました。

いかがわしい感じのナイトクラブ「エキゾチカ」に集う人々(ワケあり国税調査官、希少動物の密輸に関与しているペットショップのオーナー、ロリータ系ストリップ・ダンサー、ネクラそうなクラブDJ)の「何の接点もなさそうで、実は奇妙な線で繋がっていた」人間模様を描いたミステリードラマとでも申しましょうか。そこはかとなくエロティックで、陰鬱で、救いがあるのかないのかよく分からない内容は、いかにもエゴヤン映画といった感じ。

ダンサー役のミア・カーシュナーは『24 -TWENTY FOUR-』の女テロリスト・マンディ役で有名。共演はブルース・グリーンウッド、イライアス・コティーズ、ドン・マッケラーとこれまた胡散臭い面々。後にエゴヤン監督の『スウィート ヒアアフター』(97)で主演級の役を演じるサラ・ポーリーが脇役で出てます。

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タイタンの逆襲

Wrath of the Titans

巷の評価はどうあれ、僕自身は『タイタンの戦い』(10)が結構好きだったりします。
出演者の顔ぶれもよかったし、神と人間の愛憎半ばの関係を描いたドラマもツボだったし、クリーチャーデザインもいい感じだったし、音楽もよかった(と思う)。

そんなわけで、続編の『タイタンの逆襲』(12)もそれなりに期待して観に行ったのですが、やっぱり1作目の方がよかったなーと思いました。まぁ映画開始早々、前作のヒロイン・イオが既に亡くなっていたり(不老不死ではなかったらしい)、アンドロメダ役がアレクサ・ダヴァロスからロザムンド・パイクに変わっていたりして、何となく嫌な予感はしていたのですが。

今回は「親子(兄弟)の絆」という限定的なテーマが題材になっているせいか、ドラマが神と半神(デミゴッド)のキャラクター中心で、前作のような「神と人間の関わり」を描いたドラマが面白かった自分には何か物足りないものがありました。

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『アーマード 武装地帯』を3倍面白く見る方法

armored

僕は『シングルス』(92)以来のマット・ディロンのファンなので(『ランブルフィッシュ』(83)は少し後になって観ました)、彼の出演作はほとんど観ているのですが、『アーマード 武装地帯』(09)がB級ながらなかなか面白くて、CSの映画チャンネルで放送していると、つい何度も観てしまう。

「現金輸送を請け負う警備員6人による偽装強盗+友情崩壊劇」という感じの内容で、なかなか見応えがある・・・と思うのですが、どうも巷の評価が芳しくない。「こんな穴だらけの強盗計画、成功するわけないじゃん」的な冷めた見方をされる方が多いのですが、この映画の場合、それは間違った見方ではないかなぁと思うのです。

つまり「強盗計画が成功するか否か」ではなく、「この穴だらけの計画がどこでどう狂って、6人がどのように破滅していくか」という感じで、違った視点から物語を追っていくと、結構濃密な密室サスペンス&人間ドラマが楽しめるのではないかと。

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