『フォロウィング』HDリマスター版が4月公開らしいので、以前買ったサントラ盤をご紹介します。

『オッペンハイマー』(23)の興行的/批評的成功を受けたこともあるのか、クリストファー・ノーラン監督のデビュー作『フォロウィング』(98)のHDリマスター版が4月に日本公開になるそうです。

自分の場合、確かこの映画は衛星放送で観たような記憶があります。
近所の店でソフトを取り扱っていなかったから、ビデオ/DVDレンタルでは観ていないはず。
『メメント』(00)か、あるいは『バットマン ビギンズ』(05)のBS/CS初放送か何かで、ノーラン監督作品の特集放送があったときにこの映画もラインナップに加わっていて、その時に観たのだと思います。

「尾行癖のある自称”作家志望”の男が、狡猾な男にそそのかされて尾行/家宅侵入のスリルに魅せられていき、やがてトラブルに巻き込まれてドツボにハマる」というお話で、観ていてちょっと不快というか、「まあ主人公も自業自得よね…」と思いながら観ていたものです。
ちなみに主人公をインモラルな世界に引きずり込む怪しい男の名前が、『インセプション』(10)の主人公と同じ”コブ(コッブ)”というのはノーラン信者の間でつとに有名。

ストーキング癖のある主人公には全く共感できませんでしたが、ストーリーへの没入感はすごかったと記憶しています。
シャッフルされた時系列、意味深長なモノクロ映像、勿体つけたような会話、嘘と陰謀が幾層にも重なったプロットなどなど、ノーラン映画の特徴がデビュー作に全部詰め込まれている。ノーランにはこのままサイコロジカルスリラー路線で行ってほしかったなぁ…。

当時の自分はノーラン映画にとても関心があり、初期作品の音楽を担当していたデヴィッド・ジュリアンのスコアにも興味があったので、『フォロウィング』もしっかりサントラ盤を買いました。

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BANGER!!!で書いたクリストファー・ノーラン作品音楽コラムの補足的なお話

ムービープラスでのクリストファー・ノーラン監督作品特集放送に合わせて、BANGER!!!で『プレステージ』(06)、『インセプション』(10)、『インターステラー』(14)、『TENET テネット』(20)の音楽紹介コラムを書きました。

音楽も“逆再生”だった?『テネット』ほかクリストファー・ノーラン作品の音楽を紐解く! 『インターステラー』『インセプション』
https://www.banger.jp/movie/83771/

どの作品も解説を書くなら1タイトルで2,500字くらい必要なくらい緻密な音楽なのですが、今回はノーラン作品4タイトルの音楽を3,000字以内で紹介するという無謀な試みをすることになりました…。

先日twitterにも書きましたが、ノーラン作品の音楽解説コラムを書くことになってから3週間くらい、昼と夜、就寝前に毎日毎日『プレステージ』『インセプション』『インターステラー』『TENET』の音楽を繰り返し聴いて、コラムでそれぞれの劇伴のどの部分を紹介して、どの部分は今更言うまでもないことだから削るかという取捨選択に明け暮れる日々が続きました。

その間、ワタクシの応援している阪神タイガースが連日不甲斐ない試合をしていて、情けない試合を何回も何回も見させられたストレスと、弊社の決算期と原稿締め切りが重なった疲労が祟って、人生初の帯状疱疹を患うという事態になりました…。

せめて当方のBANGER!!!コラムが多くの方に読んで頂けたら、この苦労も報われるかなと思っております。

そんなわけで、今回のブログではコラムで書ききれなかったネタをいくつかお話ししたいと思います。

その1:悲しくなるくらい音楽が注目されなかった『プレステージ』

BANGER!!!のコラムでも書きましたが、劇場公開当時『プレステージ』の音楽は本当に注目されなかった。どのくらい注目されていなかったかというと、パンフレットのスタッフ紹介のページに音楽担当のデヴィッド・ジュリアンの名前がなかったほど。『メメント』(98)と『インソムニア』(02)のパンフにはきちんと紹介されていたにもかかわらず、です。

ネット上に出回っているサントラレビュー(国内・海外の両方)を見てみても、その大半は「退屈な音楽(面白みのない)」という内容のものでした。だから少なくとも2006年当時、この映画のスコアででジュリアンがシェパード・トーン(無限音階)を実験的に使っていることなど誰も気づかなかったし、指摘もしていなかったのですね。自分の場合は「サントラを聴いていたけどシェパード・トーンの存在には気づかなかった」というタイプのリスナーでしたが。

『ダンケルク』(17)のようにハンス・ジマーがシェパード・トーンを使うと注目されるけど、ややマイナーなジュリアンがそれを行ってもなかなか気づかれない。批評なんてそういうものなのかもしれません。自分はそうならないよう気をつけたいと思っています。

ワタクシは『インソムニア』や『ディセント』(06)、『キャビン』(12)のジュリアンの音楽が好きなので、今回のコラムで彼の音楽を紹介する機会をもらえて嬉しかったです。

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「愚者」の壁画に失笑。 低予算でデッカいテーマに挑んだホラー映画『キャビン』

the cabin in the woods

仙台でも『キャビン』(11)を劇場公開してくれたので観てきました。

「こいつはホラーの傑作だ!」という声もあれば、
「周りでいうほど大した映画じゃないぞ」という声もあって、
賛否半々という印象だったのですが、個人的には大当たり。
当方の期待以上に面白い映画でした。

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