The Adjustment Bureau

the adjustment bureau

先日『アジャストメント』(11)のDVDを借りて観たのですが、何か予告編から受けた印象と映画本編の内容が全然違ってた気がする。

予告編は劇中の映像をうまく編集してSFアクションみたいな内容に見せてますが、実際は何だかユルい雰囲気の映画だった。

ハット・スクワッド風の「調整局員」が、世界の秩序を保つために人間の未来を秘密裏に「調整」する・・・というあらすじを聞いた時には、僕の好きな映画『ダークシティ』(98)みたいなSFスリラー的な話なんだろうなーと思ったのですが、どっちかというとSFラブストーリーですねぇ、これは。

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Disney / PIXAR Greatest

去る4月上旬のこと。
エイベックスのM氏から「ディズニー/ピクサー グレイテスト」なるベスト盤をリリースするという話を伺いました。
で、このライナーノーツ製作の依頼を頂いた時、
「ディズニーのベスト盤かぁ。きっと歌モノのコンピ盤なんだろうな」と思ったのですが、
話を聞いてみると「40%がヴォーカル、60%がスコアになります」というお返事が。

おぉ、これはいいアルバムになるかも、と高まる期待。
さらに話を聞くと、今後収録曲が増えるかもしれないとの事。

もる:「歌モノが増えるんでしょうか?」

M氏:「いや、スコアが増えそうな感じですねぇ」

・・・というわけで、当初は全18曲を収録予定だったのですが、
数日後に送られてきた音源では、本当にスコアが増えて全25曲になってました。

さて肝心のCDの内容はと申しますと、
『トイ・ストーリー』(95)から近作『WALL・E』(08)まで、
ピクサー・アニメーション・スタジオが製作した珠玉のCGアニメの中から、
選りすぐりの主題歌・挿入歌・スコアをコンパイルした便利なベスト盤となっております。

内訳としては、歌モノが11曲、ランディ・ニューマンのスコアが6曲、
トーマス・ニューマンのスコアが5曲、
マイケル・ジアッキノのスコアが3曲という感じです。

そしてこのベスト盤の最大の目玉は、
ピクサー最新作『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)からスコアが1曲収録されている点でしょう。
何しろ本国では『カールじいさん』のサントラが、
よりによって配信限定リリースという「やってはいけない事」をディズニーがやってしったので、
悲しい事に日本でもサントラがCDでリリースされるかどうか分からない状態なのです。

ワタクシは日頃から、
「アルバムは音源とジャケットとライナーノーツ(or 歌詞カード)があってこそ成り立つもの」と考えている人間なので、
一応この前エイベックス(のM氏)に「日本では是非CDで発売を!」とリクエストしてみましたが、どうなるかなぁ・・・。
(追記:後にIntradaからCD版が限定リリースされました)

ま、とりあえず現時点では『カールじいさん』の音がCDで聴けるのはこのアルバムだけ、という事になるわけです。
そういう意味では貴重な1枚ではないかと。

歌モノは例によってブックレットに歌詞・対訳がついているので、
その点でもなかなか便利なアイテムではないかと思います。
サラ・マクラクランの”When She Loved Me”(『トイ・ストーリー2』[99]の挿入歌)なんて久々に聴きましたが、
これはいつ聴いても名曲ですな。

他にもランディ・ニューマン、シェリル・クロウ、ジェームズ・テイラー、
ラスカル・フラッツ、カミーユ、ピーター・ガブリエル、
ビリー・クリスタル&ジョン・グッドマンのボーカル曲を収録。
ピクサー・ファンなら、どれがどの映画の挿入歌なのか一発で分かるでしょう。

日本盤はダイアモンド☆ユカイ(『トイ・ストーリー』[95])と
石塚英彦&田中裕二(『モンスターズ・インク』)の日本語版主題歌/挿入歌が収録されていますが、
これはちょっと微妙なデキかもしれないです…(ボソッ)。
やっぱり「英語の歌詞を和訳して、原曲のメロディーに合わせて歌う」というのは無理があるような。
言葉のリズム感も違いますからねー。

ま、こういう機会に日本語版主題歌を聴いてみるのもオツなものではないか、と思ったりもするわけですが、
その点を差し引いても、手堅い選曲でハズレなしのベスト盤に仕上がってます。

『ディズニー/ピクサー・グレイテスト』
音楽:Various Artists
品番:AVCW-12727
定価:2,600円

  

第81回アカデミー賞ノミネート作品(作曲賞について)

先日、今年のアカデミー賞のノミネート作品が発表されました。

まぁ、ワタクシもこういう仕事をしている関係上、ノミネート作品や受賞結果は
いろいろ気になるわけでございまして、特に最優秀作曲賞に関しては毎年
「誰が受賞するのかなぁ」と自分なりに予想を立ててみたりしています。

今年の作曲賞ノミネートは下記の通り。

アレクサンドル・デプラ / 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
ジェームズ・ニュートン・ハワード / 『ディファイアンス』
ダニー・エルフマン / 『ミルク』
A.R. ラフマーン / 『スラムドッグ$ミリオネア』
トーマス・ニューマン / 『WALL・E / ウォーリー』

ううむ。これは予想が難しい。

デプラは『真珠の耳飾りの少女』(03)、『シリアナ』(05)のゴールデングローブ賞ノミネートを
経て『The Painted Veil』(06)で同賞受賞、『クィーン』(06)でアカデミー賞ノミネート、と最近
勢いづいているので、『ベンジャミン・バトン』で念願のオスカー初受賞という可能性も大。

ラフマーンは「『ムトゥ踊るマハラジャ』(95)の音楽の人」として有名ですが、最近は
クレイグ・アームストロングと共同で『エリザベス:ゴールデン・エイジ』(07)の音楽を
担当していたりします。アカデミー賞は非西洋圏の音楽を高く評価する傾向があるので、
その線から受賞という流れになるかもしれません。もしくは作曲賞ではなく歌曲賞の方で
受賞する可能性もあり。

JNHとニューマンは共に「無冠の帝王」といった様相を呈しておりますが、二人とも才能の
ある作曲家である事に疑いの余地はありません。ただ、『ディファイアンス』は思ったより
賞レースで話題にならなかった事、『WALL・E』はアニメ作品である事が「ノミネートまでは
アリだけど受賞はねぇ…」と判断される要因になりそうな気もします。

『ミルク』は先日試写で観て参りましたが、素晴らしい映画でした。エルフマンの音楽も
すごく流麗なスコアで、終盤の音楽は切なくて泣けました。音楽のクオリティは申し分ありません。
ただ、『ミルク』は実在のゲイの活動家を描いた作品なので、保守派の評価がどうなるかが
運命の分かれ道といった感じです(音楽の評価にはそれほど影響ないかもしれませんが)。

個人的には『WALL・E』と『ミルク』のサントラ盤の仕事をしたので、どちらかの作品に
受賞して貰いたいのですが、私情を挟まずに受賞結果を予想するなら、

本命:アレクサンドル・デプラ
対抗:A.R. ラフマーン
大穴:ダニー・エルフマン

…ではないかな、と思います(ハズレたら恥ずかしいなぁ)。

去年の予想(『つぐない』(07)のダリオ・マリアネッリ)は当たったんだけど。
皆様の予想はいかがでしょうか?

   

WALL・E / ウォーリー

ピクサー最新作『WALL・E / ウォーリー』が遂に劇場公開になりました。

ワタクシがサントラ盤ライナーノーツの仕事でマスコミ試写に行ったのが9月18日。
あまりにもいい映画だったので、もう一回観たいな〜と思ったら、仙台では字幕版の
劇場公開がMOVIX仙台のみで、しかも上映は1日2回だけ(12/7現在)。ううむ、
日本語吹替えの上映がデフォルトなのか。字幕で観たいんだけどな…。

ま、それはさておき。映画について既にあちこちのブログやwebサイトで語られて
いるとは思いますが、ゴミ処理ロボット・ウォーリーがとにかく健気で泣けるんです。
友達のゴキブリくん一匹以外誰もいなくなった地球で黙々とゴミを圧縮・整理する
作業に勤しみ、ゴミの中から自分だけの宝物を探す姿は、ウォーリーの愛らしい
仕草のおかげで、寂しそうだけど実は結構楽しんでいるんじゃないかと思えてしまう
のです。何ともいじらしい。

仕事を終えて帰宅したら、キャタピラを脱いで家に上がる仕草なんざ、お行儀の良さに
思わず褒めてあげたくなります。

で、その旧型ロボットのウォーリーは地球に降りてきた探査用新型ロボットのイヴに
一目惚れするわけですが、プレス資料によるとイヴは「真っ白に輝くピカピカのボディ
を持った”天使”」というような事が書かれてあります。しかし彼女はヒロインと言うより、
どっちかというと「姐さん」的なキャラで、おもむろにキャノン砲をブッ放したり、ウォー
リーの部屋でドッカンドッカンと重たそうな音を立ててダンスを踊ったり、ウォーリーの
宝物を壊してしらばっくれてみたり、結構ガサツな一面があるんですな。

言うなれば「ちょっと気の強そうな年上のお姉さんと、彼女に一目惚れして、気を惹く
ためにあの手この手でアプローチを試みる純朴な少年のラブストーリー」といった感じで、
ウォーリーの一生懸命な姿と「無償の愛」に胸を打たれるんですよ、これが。柄にもなく
「純愛っていいなぁ」と思ったり。

ちなみに29世紀のアメリカはBNLという巨大企業が国を動かしているという設定なの
ですが、実際にありそうな話ではないかと思います。つい最近も、アメリカの自動車
業界ビッグ3が公聴会で政府に向かって「俺たちに公的資金を導入しないと国の
経済がとんでもない事になるぜ」と脅しをかけている姿がTVで放送されていましたが、
アレを観ていると「巨大企業のほうが政府より力があるんだろうな」と思わずにはいら
れません。結局、公的資金を導入する方向に進んでるみたいですし…。

話が逸れましたが、『WALL・E』の音楽はアンドリュー・スタントン監督と『ファインディ
ング・ニモ』(03)で仕事をしたトーマス・ニューマンが担当しています。基本的に全編
オーケストラを使ったスコアなのですが、普通SF映画で使わないような民族楽器
(ジュンジュンとかエオリアン・ハープとかヴァリハとか…)を大量に導入しているあたりが
実にニューマンらしいのではないかと思います。聴いていて気持ちいい曲、トボけて
いて微笑ましい曲、シンフォニックな曲などバリエーションも豊富で、もちろんウォーリー
お気に入り『ハロー!ドーリー』(69)の挿入歌も収録されています。

日本盤はテーマ曲「Down to Earth」の歌詞対訳がついているので、詞の内容が
気になった方はぜひぜひエイベックスより発売中の日本盤サウンドトラックを
お買い求め下さい。

『ウォーリー』オリジナル・サウンドトラック

音楽:トーマス・ニューマン
品番:AVCW12706
定価:2,600円