ハリソン・フォードの家族ヒーローっぷりに拍手!『ファイヤーウォール』

今度の「日曜洋画劇場」で『ファイヤーウォール』(06)を放送するという事で、
本日はそのお話。

ランブリング・レコーズのMさんからライナーノーツの執筆依頼を頂いたのは、
2006年1月下旬の事でした。
原稿の〆切りが2/17で、
映画の内覧試写が2/10という結構ギリギリなスケジュールだったのですが、
いざ本編を観たら〆切りの事など忘れて、
二人で「いやーなかなか面白かったですねぇ」と言いながら、
しばし映画談義で盛り上がってしまったのを覚えています。

続きを読む

バンコック・デンジャラス

「ニコラス・ケイジの不自然な髪型が気になって、映画に集中出来ない」など、本筋と
あまり関係のない感想が聞こえてくる『バンコック・デンジャラス』(08)を日曜に鑑賞。
(確かに『ダ・ヴィンチ・コード』(06)のトム・ハンクスみたいな不自然な髪型でしたが・・・ )

オキサイド・パン&ダニー・パン監督のタイ映画『レイン』(00)のセルフ・リメイクなのですが、
やはりというか何というか、かなりキャラ設定をいじってます。

オリジナル版の主人公は耳の聞こえない青年コンでしたが、リメイク版の主役は彼を
プロの殺し屋に鍛え上げるジョー(ニコラス・ケイジ)の方です。で、コンの「生まれつき
耳が聞こえない」という設定は薬局勤務の女性フォン(チャーリー・ヤン)に転用され、
フォンと恋に落ちるのはコンではなくジョーになってます(ちなみにリメイク版のコンは
クラブダンサーのオームというおねーちゃんに萌え萌えになります)。

ま、前評判よりはそこそこ楽しめた映画だったように思うのですが、最大の難点は
ケイジの髪型・・・ではなく、「彼が冷酷無比な殺し屋に見えない」という事ですな。

基本的にケイジは悪役を演じる時も、どこかしら茶目っ気というか愛嬌を持たせるタイプの
役者なので、暗殺者を演じるにはどうも人間味がありすぎるような気がしました。
「ケイジが演じてるキャラなら、絶対ただの冷徹な殺し屋じゃないよねー」という先入観を
持って映画を観てしまうというか。その辺がちょっと緊張感に欠けるかなぁ、と思いました。

『ディア・ハンター』(78)とか『デッド・ゾーン』(83)の頃のクリストファーウォーケンとか、
『エンゼル・ハート』(87)の頃のミッキー・ロークあたりだと、こういう役がハマるのかな。
やっぱり暗殺成功率99%の殺し屋を演じるなら、もっとニヒルな感じでないと。

フォンの前でタイの激辛料理を食って悶絶した時の「困り顔」が、一番ニコラス・ケイジ
らしい瞬間だったような気がします(笑)。殺し屋としてこれはどうかと思うなぁ。

ただ、あの切ないラストで映画がスパッと終わるのは良かったです。もしこれがブラッカイマー
映画だったら、ジョーの「あの行動」の後に「コンとオームの結婚式」とか「フォンのその後」
みたいな余計な映像を足して、エンドタイトルでベタな主題歌(もちろんバラード)を流して
映画の余韻を台無しにするような気がするので・・・。

本作の音楽は、超売れっ子作曲家のブライアン・タイラーが担当しています。この方、
以前は割といろんなジャンルの映画の音楽を手掛けていたように思うのですが、最近は
『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(06)、『イーグル・アイ』(08)、『ランボー 最後の
戦場』(08)とか、アクション映画の仕事が続いている様子。

果たして今回の音楽はというと、ほぼ上記作品と同じ感じ。オーケストラに打ち込みと
ナマの打楽器のリズムを組み合わせた、「燃えるアクション・スコア」を鳴らしています。
タイラー自身も自らオーケストラを指揮している他、パーカッション、ギター、ピアノ、
数種類の弦楽器を演奏してます。

ま、どの楽団が演奏してもあんまり変わらない感じのサウンドかな、と思うのですが、
演奏はこだわりのプラハ交響楽団。なぜにプラハ・フィル?そういえば映画の冒頭で
ジョーがプラハで仕事していたけど、それが理由じゃないよなぁ。

何はともあれ、音楽はよい感じです。ジョーの暗殺ミッション時に流れる「Assassin」は
オーケストラのキレのある演奏と強烈なビートがなかなかアツいし、後の悲恋を予感
させる「Fon’s Theme」の哀愁のメロディーは男泣き必至。

一部で「鳴らしすぎ」とか「騒々しい」と評される最近のタイラーですが、このテのB級
(準A級)アクション映画は、これぐらい派手に鳴らしてくれないと逆に物足りませんって。

サントラ盤は輸入盤で入手可能。スコアが78分弱収録されているので、CDのお値段
から考えるとかなりお得な気がします。

  

miette-one@NORETURN 015

今年のGWは思ったように仕事が捗らず、心身共に疲れ気味でございました。
(連休中に逆に疲れてどーするんだ、というお声も聞こえて参りますが)

これはちょっとハメを外して気分をリフレッシュしてきた方がいいんではないか、という事で、16、17日と東京に1泊2日で行って参りました。

16日に渋谷UNDERBAR(たばこと塩の博物館の隣)で「NORETURN 015」という渋谷系DJパーティーがあったのですが、そのイベントでmiette-oneがゲストライブを行うという話を聞いたので、これは見に行かなきゃダメでしょー!と、無謀にも仙台から参戦した次第です。

mietteさんは、昨年ガールズポップスの名盤『Children’s Corner』をリリースした名古屋の女性シンガー・ソングライターさんです(昨年末のブログで「2008年の私的ベスト・アルバム・トップ5」にも選ばせて頂きましたが)。また、名古屋のインディーレーベルabcdefg*recordの偉い人のひとりでもあります。

今回はmiette-LOVEというDJイベント限定の2人組ユニットでの参加という事で、はてさて一体どういうパフォーマンスになるのかしらん、と思ったのですが、いざステージが始まると「なるほど、こう来ましたか!」と、衝撃を受けてしまいました(もちろん、いい意味で)。

ユニットの相方の「まなぽん」愛美さんとmietteさんが、80年代アイドルユニットのような振り付けで歌って踊る30分とでも申しましょうか。ポップな音楽とキュートな歌声、そしてキャッチーな振り付けが融合して、スーパー胸キュンなひとときを演出しておりました。

いやー、ホントに見ていて楽しい&シアワセな気分になりました。自分でも驚くほど。

曲目は「Good Morning Song」や「Watermelon Panic!」、「Rain and Snow」など『Children’s Corner』からのナンバーに加えて、相対性理論の「LOVEずっきゅん」のカヴァーをやってました。さすがに身の丈181cmのアラサー男(ワタクシの事です)にはあの振り付けは出来ませんでした。mietteさんスイマセン。でも、楽しい光景でした。

「Rain and Snow」は原曲とは違うサンバ・リミックスが施されたバージョンで、これがまたグルーヴィンな感じで最高。DJのmiya氏による「Rain and Snow (S&L Remix)」が正式タイトルのようです。「Watermelon Panic!」の掛け合いも楽しそうでよかったなぁ。そういえばFujiko Moreさんの即興演奏もすごかったような気がする。

ライブ当日はmiette女史やabcdefg*recordのオニマガ氏(レーベルの偉い人)、イベントを主催されたmiya氏ともお話し出来たので、実に中身の濃い充実した1日となりました。お忙しいところお時間を割いて下さった皆様、どうもありがとうございました。

次の日は『Like the Weather』のプロモーションであちこち回りつつ、渋谷東急で『バンコック・デンジャラス』を見て仙台に帰りました。映画についてはまた後ほど。

帰りの新幹線の車内では「Rain and Snow」を脳内サンバ・リミックスしながら、ライブの余韻に浸って爆睡しつつ仙台に戻ったのでありました。

イベント会場で頂いたMix-CD、これからじっくり聴かせて頂きます。

  

『ディパーテッド』スコア盤のごく私的な思い出話。

今から遡ること2年と数ヶ月前、フレイヴァー・オブ・サウンド様から『ディパーテッド』スコア盤のライナーノーツのお仕事を頂きました。
音楽はデヴィッド・クローネンバーグ作品でおなじみのハワード・ショア。

名作『インファナル・アフェア』(02)のハリウッド・リメイクという事で、オリジナル版を観て男泣きしてしまった自分には不満な点も結構あったりするのですが、それでもこの映画は自分にとって特別な作品なのです。多分、これから先もずっと。

何故かというと、このサントラの仕事でチャーリーさん(Charlie DeChant)とご縁が出来たようなものだからです。

続きを読む

バビロン A.D.

今回はヴィン・ディーゼル兄貴久々の主演作『バビロン A.D.』のお話。

日本版ポスターなどのメインビジュアルは割と『フィフス・エレメント』(97)的な
近未来イメージになっておりますが、映画本編は何というかこう、もっと薄汚い
荒廃した感じの世界です。何しろ「戦争やテロで秩序が崩壊した未来」という
設定なので。世紀末的世界観を愛好する人には、結構グッと来るビジュアル
かもしれません。

物語はと申しますと、ディーゼル兄貴が演じる傭兵トーロップが、腐れ縁の
マフィア・ゴルスキー(ジェラール・ドパルデュー)からの「オーロラっちゅー
若い女をモンゴルの修道院からニューヨークまで運んでくれや」という
明らかにヤバそうな依頼を受けた事から、壮絶な戦いに身を投じる事に
なるというストーリーです(かなり大雑把ですが)。

兄貴の仁義溢れる行動や、肉弾戦やスノーモービルを駆使したアクションなど、
結構いい感じでストーリーが進みまして、「いいぞいいぞ」と思うんですが、
なぁぁんか終盤の展開が強引&尻切れな感じなんですよね。

明らかに途中のドラマをブッツリ切った感のある編集が気になって、どうにも
居心地が悪いのです。特にラストがなぁ・・・。「そこで終わるのか?」という感じ。

というのもこの映画、どうやらスタジオ側が勝手に短く編集したらしいんですな。
上映時間90分なので、元々はあと10分か20分くらい長かったんじゃないかと。

自分の作品を勝手にいじられたって事で、監督のマチュー・カソヴィッツは
それはもう大激怒したそうです。映画の最終編集権が監督の手に行かない
ような契約内容だったんでしょうか。気の毒としか言いようがありません。

そんなわけで、大幅に時間を短縮された映画本編では結局何が言いたかった
のか分からない部分もあるかと思います。その説明が足りない部分を補完
してくれるのが、アトリ・オルヴァルッソンの音楽なんですな。

アトリさんは『バンテージ・ポイント』(08)の音楽で名前が知られるように
なった人で、ジマー軍団の一人です。

『バンテージ・ポイント』の時は、デジタルビートをガンガン鳴らしたリズム
重視のスコアを作曲していましたが、『バビロン A.D.』では一転、オーケス
トラと合唱隊を導入して荘厳なミサ曲のようなスコアを書き下ろしています。
これを聞いただけで「この映画、単なるアクション映画じゃないな」と思って
頂けるハズ(ま、製作のゴタゴタのせいで本編はアレな出来でしたけど)。

映画のクライマックスで流れる「Babylon Requiem」という曲が大迫力で、
なかなか聴き応えがありますぞ。

今回、スコアの中で「Agnus Dei」と「Dies Irae」というラテン語のミサ曲の
歌詞を引用しているのですが、なぜこの2曲が選ばれたのかというのにも
ちゃんと理由があるんですねぇ。さてその理由とは?

・・・申し訳ありませんが、それはランブリング・レコーズさんから発売中の
日本版サントラCDをご購入頂いて、ライナーノーツを読んで頂ければと
思います。いやーワタクシもライナーを書いた手前、CDを買って頂けると
有難いので・・・。

他にもアトリさんにインタビューして、いろいろ小ネタをいろいろ書かせて
頂きましたので、買って損はさせません(笑)。ぜひぜひ国内盤をよろしく
お願い致します。

今日は映画館(泉コロナワールド)に行って、この映画のパンフレットを
買ってきました。インタビューでお世話になったアトリさんに日本版CDと
一緒に送る予定です。ライナーを英訳しないといけないから、先方に
発送するまで数日かかるな、こりゃ。

『バビロン A.D.』オリジナル・サウンドトラック
音楽:アトリ・オルヴァルッソン
品番:GNCE-7047
定価:2,625円