映画『四月の魚』のサウンドトラックアルバムに胸をときめかせたあの頃のこと。

4月1日にWOWOWで『四月の魚』(86)の放送があるということで、先月末は久々にサントラ盤を聴いて過ごしました。

四月の魚 サウンドトラック +2(amazon)
四月の魚 サウンドトラック +2(TOWER RECORDS)

映画が公開になった1986年と言えば、自分はまだ小学生。
YMOリスナーとして幸宏さん派だった母に連れられて、散開ライブや「WILD & MOODY」のライブなどに行ったりはしていたものの、この時の自分は「映画館で映画を観る」という習慣がほとんどありませんでした(アニメ映画をたまに観るぐらい)。洋画はもっぱらテレビの「日曜洋画劇場」や「金曜ロードショー」などで観る感じでした。
そんなわけで、母は自分が学校に行っている間にささっと『四月の魚』を観てきたのでした。

学校から帰って来て母に「(映画)面白かった?」と尋ねたら、「幸宏さんはかわいかったけど、観ていてちょっと恥ずかしかった」と答えていたのをよく憶えています。「なんで?」と聞いたら「演技がヘタだった」という実にストレートな感想が返ってきました。
その時は「ふーん」という感じでしたが、後年(高校生の頃だったと思う)映画を観たら納得しました。

…うん、確かに観ていてちょっとツラインダ…。

ああ、幸宏さんごめんなさい…。

続きを読む

『戦場のメリークリスマス』のサントラ盤を初めて聴いたときのことを思い出してみた。

NHK BSシネマで3月28日に『戦場のメリークリスマス』(83)の放送があるので、先週末はこの映画(と音楽)について、昔のことをいろいろ思い出して過ごしました。

戦場のメリークリスマス (30th Anniversary Edition) – 坂本龍一 (amazon)
戦場のメリークリスマス (30th anniversary edition) – 坂本龍一 (TOWER RECORDS)

友人間で『戦メリ』の話題になったときに自分がいつも言っているのが、「幸宏さんが教授をオシャレさんに仕立てなければ、あの映画に出ることもなかったのではないか?」ということ。

幸宏さんが教授の『千のナイフ』のジャケット撮影のためにファッションコーディネートをしてあげたから、「キザな伊達男の鬼才、坂本龍一」というキャラが確立したのであって、教授が「ジーンズの下を切りっぱなしでゴム草履、長髪に髭面」という風体のままでいたら、あそこまで洗練されたルックスにはならなかったのではないか…と幸宏派の自分は思うのです。

男性版『マイ・フェア・レディ』(64)的な感じでしょうか。ちょっと違うか。

千のナイフ(SACDハイブリッド)- 坂本龍一(amazon)
千のナイフ(SACDハイブリッド) – 坂本龍一 (TOWER RECORDS)

閑話休題。

自分が『戦メリ』のサントラ盤を聴いたのは小学生の頃でした。
東京から仙台の実家に帰ったとき、3つ年上のイトコ(教授派)が家に遊びに来て聴かせてくれた。
レコードプレーヤーのある応接間ではなく、自分の部屋で聴いた記憶があるから、たぶんカセットテープだったのでしょう。
イトコがカセットでサントラを買ったのか、レコードをカセットテープにダビングして持ってきたのかはもう憶えていませんが。

だから人生で初めて聴いた映画のサントラということになるのかな。
そして初めて聴いたミニマルミュージックでもある。
この映画の劇伴は反復的な側面が強いサウンドなので、広義のミニマルと言えるのではないかと。
メインテーマもいいけど、”The Seed And The Sower”の不思議な高揚感のあるフレーズも素晴らしい。

当時の自分はまだ幼く、音楽知識も乏しかったので、メインテーマを聴きながら「この音は何を弾いて出してるんだろうね」などとイトコに尋ねたものです。

イトコ:「やっぱシンセじゃない?」
ぼく:「この”カーン!”っていうのも?」(←いわゆる「合いの手で入る竹の音のようなパーカッション」のことです)
イトコ:「なにか叩いてサンプリングしてるんじゃないの?『テクノデリック』みたいに」
ぼく:「そっかぁ」

イトコとこういう会話をしたのをいまでもハッキリ憶えています。

続きを読む

高橋幸宏さんのゲーム音楽が聴きたくて…『ノイギーア 海と風の鼓動』のサントラ盤を購入

そういえば幸宏さんのEMI時代のアルバムのリマスター盤が出るのはいつだったかな…とショップのサイトを閲覧していたところ、なんと今年の10月にスーパーファミコン用ソフト『ノイギーア 海と風の鼓動』(93)のサントラ盤が出ていたことに気づきました。

こんなマイナーなソフトのサントラが2020年代になって発売されるとは…(嬉しい)。

「ちょっと意外な昔のゲームのサントラがいまになって突然出たりするけど、さすがにこれは出ないだろうな」と思っていた作品でした。当時テレビにプラグを繋いで幸宏さんのゲーム内音楽をテープに録音してたっけ…。

オビには「発売30周年記念盤」と銘打たれておりましたが、それ以上に幸宏さんの追悼盤としての意味合いが強いのでしょうね。

『ノイギーア 〜海と風の鼓動〜』オリジナル・サウンドトラック(amazon)
『ノイギーア 〜海と風の鼓動〜』オリジナル・サウンドトラック(TOWER RECORDS)

『ノイギーア』は幸宏さんが音楽を担当していると知って、ヨドバシカメラかどこかでわざわざ予約して買った記憶があります。
「売り切れると困るから」というより、「マイナーなゲームだから予約でもしないと仕入れてくれないのではないか」という不安があったからです。定価(9,800円)で買ったのをいまでも憶えています。

ハッキリ言ってゲームとしての評価は当時も微妙でした。
同じアクションRPGの『ゼルダの伝説』や『聖剣伝説』に比べるとボリューム不足という印象は拭えず、クリア時間によって評価が変わるエンディング後のプレイヤーランクに至っては、「やりこみ要素が重要なアクションRPGでタイムアタックやってどうするの?」と当時から言われていた。

自分は幸宏さんのゲーム音楽が聴ければそれでよかったので、世間のそんな評価は正直どうでもよかったのでした。

続きを読む

『嵐が丘』(1992年)のリマスター完全盤サントラを買ったので雑感(と旧盤の思い出話)

La-La Land Recordsから坂本龍一(以下”教授”と表記)の追悼盤として1,000枚限定でリリースになった『嵐が丘』(92)のリマスター完全盤サントラを買いました。
ちなみにランブリング・レコーズさんが国内流通を担当されたものは帯付きでした。

初収録になる音源を5曲収録&音源のリマスタリングがセールスポイントのアルバムですが、旧盤も収録時間が69分近くあったので、収録時間は7分ほど増えた程度。1992年リリースとはいえ旧盤も極端に音が悪いという感じではありませんでした。
個人的にはブックレットの読み物(ライナーノーツ)が充実していた点が最も満足度が高かったです。旧盤のブックレットはプレス資料のプロダクション・ノート部分を転載しただけのもので、教授のサントラ盤なのに音楽について一切触れられていなかったため、詳細な音楽解説が読めるのは有難かった。

そこで今回の詳細なブックレットを読んで分かったことなのですが、この映画は英国での興行成績が芳しくなく、当時アメリカでの劇場公開が見送られたらしい。したがって海外ではサントラ盤もリリースされなかった

確かにUSやUKのamazonなどを覗いてみると、『嵐が丘』のサントラは日本盤が出品されていて、いわゆるUS盤やUK盤は全く見当たりませんでした。

だから日本のリスナーにとっては「31年ぶりのリマスター音源による再版サントラ」なのですが、欧米のリスナーにとっては「待望の世界リリース」的なアルバムという位置づけなのかもしれません。

嵐が丘 サウンドトラックリマスター完全盤/【輸入盤国内仕様】 – amazon
坂本龍一 オリジナル・サウンドトラック 嵐が丘<限定盤> – TOWER RECORDS
坂本龍一 Wuthering Heights<限定盤> – TOWER RECORDS (輸入盤)

続きを読む

『レヴェナント 蘇えりし者』の音楽は、サントラの枠を超えた実験音楽・アンビエント・エレクトロニカの野心作かもしれない。

the revenant

先日やっと『レヴェナント 蘇えりし者』(15)を観てきたのですが、
見応えのある映画でございました。

もはや説明不要のエマニュエル・ルベツキによる圧倒的な映像&カメラワーク、
「目的を果たすまで俺は絶対死なない」という強固な意志に貫かれたグラスの人物像、
「俺は絶対オスカーを獲る」というレオ様の気迫の成せる業かもしれませんが)
「利己的で他人を理解する気が全くない男」を演じたトム・ハーディの存在感、
そして”教授”坂本龍一の音楽。
どれも素晴らしいではありませんか。

『レヴェナント』の音楽はメロディー的な盛り上がりを極力抑えたサウンドで、
ミニマルとかアンビエント、あるいはサウンドスケープとか、
そういった感じの音楽。
サントラ盤は全23曲(輸入盤)で収録時間70分少々。
最初から最後まで全編張り詰めるような緊張感が漂ってます。
再生YMOのアルバム「テクノドン」に教授のNostalgiaという曲がありましたが、
重厚なストリングスの和音が繰り返される構成は、
あの曲の雰囲気に近い印象を受けました(あくまで個人的見解)。

 

続きを読む