そして前述のさざめくエレキギターのメインテーマが、ルイスの”インモラルな行為”のシーンで妙にきらびやかに流れたりするものだから、さらに「この場面でこの曲?」と違和感を憶えてしまうわけです。 曲タイトルで言うと”Pictures on The Fridge”や”Moving The Body”あたりがそれに該当します。 普通、発砲事件のあった被害者の家に侵入して冷蔵庫の家族写真をいじったり、横転事故現場の遺体を勝手に動かして映像を撮ったりする不快な場面で、こういう明るいトーンの曲を流さないだろうと。もっとドンヨリしたダークな曲を流すのがセオリーと言えるでしょう。
映画のエンドクレジットで流れる曲が、「ルイスの一攫千金ロック」みたいな妙に明るいノリのギターロック・サウンド(”If It Bleeds It Leads”)だったのも、恐らくそのためでしょう。 良くも悪くもルイスは「ナイトクローラー」として成功を収めましたので。 これぞまさに「混沌(Chaos)のエネルギー」。 「『ナイトクローラー』の音楽は全編ギターロック調のスコアです」などというあっさりした表現では片付けられないほど、今回のJNHの音楽は奥が深くて、パワーがあって、そして背筋が凍る恐ろしさがあるように思います。
余談ですがルイスが血生臭い事件現場を求めて、警察無線を傍受しながら夜のLAの街を車で疾走するシーンのエレキギターとパーカッションが唸る曲もなかなかカッコイイですね(”Lou and Rick On A Roll”とか”The Wrong Way”とか)。 本来こういう曲が『コラテラル』でもっと流れるはずだったんだろうなーと思ったりしましたが。