『蜘蛛の巣を払う女』はロケ・バニョスの音楽が聴き応えあったので、観に行ってよかったというお話。

先週『蜘蛛の巣を払う女』(18)を観てきました。

デヴィッド・フィンチャーが製作総指揮に名前を連ねているとはいえ、監督もキャストもスタッフも『ドラゴン・タトゥーの女』(11)から総入れ替えになったため、前作のファンからの評判がイマイチよろしくない本作。

ワタクシはキャスト/スタッフが総入れ替えになったからこそ、前作とは別物と思って割とスンナリ物語の世界に入っていけた気がします。

サイコスリラー風味が濃厚だった前作に比べるとアクションスリラーの方向にシフトした続編でしたが、これはゲームで例えるなら『イース』と『イースII』はフィールド型アクションRPGだったけど、『イースIII』が横スクロールアクションRPGになったようなもので、ジャンルが変わってもよく出来ていればそれでいいんじゃないかと。

3代目リスベットが『ブレス しあわせの呼吸』(17)のクレア・フォイで、シルヴィア・フークスも出ていて、脚本に『イースタン・プロミス』(07)、『ハミングバード』(13)のスティーヴン・ナイトが名を連ねていたので、ワタクシ的には結構楽しんで観られました。

そして何よりロケ・バニョスの音楽が今回もよかった。

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ワタクシ、ロケ・バニョスの名前や音楽を手がけた作品のことは『マシニスト』(04)あたりから知っていたのですが、興味をもって聴くようになったのは、『オールド・ボーイ』(13)のライナーノーツを書かせて頂いた時からですかね。
しっかりしたメロディを聴かせつつ、必要に応じて電子音とか打ち込みのリズムも自在に扱える人なんだなーと(以前のブログをご参照下さい)。

ロケ・バニョスの音楽、★5つでございます!! 『オールド・ボーイ』の絶品スコア
https://www.marigold-mu.net/blog/archives/5491

で、その次にライナーノーツを書かせて頂いた『トレイン・ミッション』(16)で完璧にバニョスの音楽にハマりまして。あのメロディアスでミニマル、それでいてアクションシーンでしっかり燃えさせてくれるフルオケ音楽は実に見事でございました。こちらも詳しくは以前のブログをご参照ください。

スリルと興奮が加速する! 『トレイン・ミッション』の音楽は反復サウンドで攻めまくるというお話。
https://www.marigold-mu.net/blog/archives/9199

だから今回の『蜘蛛の巣を払う女』の音楽も傑作間違いなしだろう!と思ってサントラを買ったわけですが、期待通りのクオリティでした。ブックレットにバニョスのセルフライナーノーツが載っていて、
「エレクトロニクスとストリングスを駆使したヤコブ・グロートのスコアも、トレント・レズナー&アティカス・ロスのインダストリアル・サウンドも素晴らしかったので、この映画の音楽を作曲することは決して容易なことではなかった」
…というようなことを語っておりました(注:意訳です)。

で、バニョスとフェデ・アルバレス監督がディスカッションを重ねてどのような音楽を作ったのかというと、彼らが「Hitchcock and the Machine」と呼ぶデジタルサウンドとアナログ(オーケストラ)を駆使したスコアだったのでした。音楽の方向性としてはノオミサンが主演した『ミレニアム』3部作のグロートの音楽に近いのかな。

「リスベットのテーマ」や「カミラのテーマ」など、主要なモティーフのメロディも確認できるし、ヴィオラのソロ演奏を交えた「オーケストラ+電子音」の重厚なサウンドもいい感じです。

『オールド・ボーイ』も『トレイン・ミッション』も、そして今回の『蜘蛛の巣を払う女』も、最近のバニョスのサントラはどれも収録時間が70分越えなので、「スコアがたっぷり聴ける」という満足感が高いのもポイントかなと。

バニョスの次回作も楽しみです。

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