第92回アカデミー賞 作曲賞ノミネート作品をチェックしてみた(ごく私的な受賞予想つき)

先日、第92回アカデミー賞のノミネート作品が発表になりました。
仕事柄、ワタクシの最大の関心は作曲賞部門になるわけですが、
今回は誰が受賞しても嬉しい方々ばかりでしたし、
どの音楽も素晴らしいもの(ワタクシの好きな作品)ばかりで、
「これがノミネートになるの? う~ん…」という作品がひとつもありませんでした。

ノミネート作品と候補者は以下の通り。

『ジョーカー』/ヒドゥル・グドナドッティル
『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』/アレクサンドル・デスプラ
『マリッジ・ストーリー』/ランディ・ニューマン
『1917 命をかけた伝令』/トーマス・ニューマン
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』/ジョン・ウィリアムズ

…というわけで、ごく私的な感想と受賞予想など書いてみたいと思います。

この中で最も受賞の可能性が高いのは、 やはり『ジョーカー』のグドナドッティルさんかなと。
先頃のゴールデングローブ賞で作曲賞を受賞したのがなにより大きいし、映画がアカデミー賞で最多11部門にノミネートされているのも強い。
あと、近年のアカデミー賞は「多様性を重んじるべき」という方向になってきているので、女性作曲家に賞を授与する動きに向かうのではないかと思うのです。

『ジョーカー』のようなダークな作品で、実験的な音楽を作曲したグドナドッティルさんが受賞すると、「女性作曲家はヒューマンドラマ作品で」という旧来の固定概念が覆され、アクション映画やスリラー映画、SF映画などの分野での女性作曲家の可能性がグンと広がるので、そういう意味でも彼女の受賞を期待したいところです。

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そしてアレクサンドル・デスプラ。
この方の2000年以降の大活躍は本当にすごい。
1年に4,5本の映画の作曲を手掛けることもあるし、
ジャック・オーディアール、スティーヴン・フリアーズ、
ロマン・ポランスキー、ウェス・アンダーソン、
ジョージ・クルーニー監督作品のご贔屓作曲家で、
デヴィッド・フィンチャーやギレルモ・デル・トロとも仕事をしていて、
今回は才媛グレタ・ガーウィグまで音楽担当にデスプラをご指名という売れっ子ぶり。
しかも『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)と『犬ヶ島』(18)に続いて、本作で3年連続のオスカーノミネート。
向かうところ敵なしといった感じ。

とはいえ、最近『グランド・ブダペスト・ホテル』(14)と『シェイプ・オブ・ウォーター』で作曲賞を2度受賞しているので、今回は別な作曲家さんに賞を譲るような方向に行きそうな気もします。

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個人的に「そろそろこの方に作曲賞を差し上げてほしいな…」と思っているのがランディ・ニューマン。
どうもこの方はシンガーソングライターとしての印象のほうが強いらしく、『モンスターズ・インク』(01)と『トイ・ストーリー3』(10)の主題歌でアカデミー賞歌曲賞は受賞しているのだけれども、スコア部門の作曲賞は未だノミネート止まりなんですよね…。

『マリッジ・ストーリー』のスコアはかなり完成度が高いのですが、今回ニューマンは『トイ・ストーリー4』の劇中歌でも歌曲賞にノミネートされているので、いつものように「歌曲賞を受賞して作曲賞はノミネート止まり」というパターンになってしまいそうな気もします。

『マリッジ・ストーリー』オリジナル・サウンドトラック(TOWER RECORDS)

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で、今年はランディの従弟のトーマス・ニューマンも『1917 命をかけた伝令』でノミネートされていて、映画音楽の名門一家「ニューマン・ファミリー」の従兄弟対決が見られるという貴重な年になったのでした。
この方も今回で15回目のオスカーノミネートになるのですが、未だ無冠という「無冠の帝王」的な印象が強くなってしまいました。個人的には『アメリカン・ビューティー』(99)の時に作曲賞を授与するべきだったのではないかと思うのですが…。

『1917』の音楽はいくつかのスコアでトーマスらしさ(ニューエイジ系のサウンド)を出しつつ、父親譲りの壮大なオーケストラスコアを聴かせてくれていて、かなりの力作に仕上がっています。
個人的には、この映画でトーマスが作曲賞を受賞してくれたら文句なしというか、大変嬉しいです。

1917 – Thomas Newman (TOWER RECORDS)

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映画音楽界の生ける伝説、ジョン・ウィリアムズは『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』でノミネート。
アカデミー賞52回ノミネートは最高記録だそうで、
もはやこの方が御年87歳で、体力勝負の要素も強い映画音楽の作曲を手掛けていること自体が奇跡と言えるかもしれません。
(御年91歳のバート・バカラックも、今春の来日公演が決定したそうですが)

ウィリアムズのノミネートは、いわゆる「レジェンド枠」的な意味合いが強いところもありますので、娯楽大作要素の強い『スカイウォーカーの夜明け』での受賞は可能性が低いような気がします。
しかし 「長年の功績を称えての受賞」という可能性がまだ残されているのもまた事実。

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』オリジナル・サウンドトラック<限定盤>(TOWER RECORDS)

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…というわけで、この中から「本命」と「対抗」をひとつずつ選べと言われたら、本命は『ジョーカー』のヒドゥル・グドナドッティルで、対抗は『1917 命をかけた伝令』のトーマス・ニューマンかな、と思います。

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