『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』を久々に観たのでその雑感。

先日、キングレコードの「死ぬまでにこれは観ろ! 2021」で『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』(81)のブルーレイをゲットしました。
BSやCSの映画チャンネルでもなかなか放送の機会がなくて、数年ぶりに本編を観た気がするのですが、実に見応えがありました。

「コンピューターでガードされた、ロス最大の地下金庫が深い眠りについた時、俺のラスト・ビジネスが始まった!」


…と見出しには書いてあるものの、プロの泥棒であるフランクのやり方は、ドリルで金庫に穴を開けたり、特別製のトーチで扉を焼き切ったり、ケーブルの束からお目当てのケーブルを探り当てたり、アナログ現場作業なのがグッと来る。
「コンピューターのネットワークに侵入して手を加えて完了!」という近年のケイパー映画の展開に食傷気味なので、上記のような“プロの技”が劇中で丁寧に描かれるとつい見入ってしまう。

80年代といえば、痛快無比なワンマンアーミー的アクション映画とハッピーエンドが主流だったのに、当時これだけ虚無的なエンディングの映画を撮ってしまうマイケル・マンはやっぱりすごいなとも思いました。
(華やかなビジュアルで誤解されがちですが、『特捜刑事マイアミ・バイス』も救いのないバッドエンドのエピソードが結構多かった)

ジェームズ・カーンのプロフェッショナルな銃さばきとか、衣装係が8週間かけて探し回ったけどいいものが見つからなくて、結局スタッフが自作してしまったジェームズ・ベルーシのアロハシャツとか、スタントマンと何度も何度も特訓したベルーシの被弾シーンとか、ベルーシの結婚式の日に追加撮影のスケジュールを入れて、マン自ら彼の婚約者に「撮影が入ったから式を1週間伸ばしてくれ」と電話したとか、この時からマイケル・マンのこだわり(完全主義者っぷり)が随所に炸裂しているのも素晴らしい。

ちなみに映像特典扱いだった本作の4Kレストア版本編ですが、同じ映画とは思えないほど映像のトーンが違ってました。
4Kレストア版は青みの強い寒色系の映像といえばいいのかな。
よりフィルム・ノワールっぽい映像になっている印象ですが、80年代的「ネオン・ノワール」の雰囲気を楽しむならば、通常マスター版の彩度強めな映像もいいんですよね。
だからこの映画の場合、通常版と4Kレストア版のどちらがいいかというのは観る人の好み次第といったところ。
ワタクシは通常マスター版の映像に目が馴染んでしまっている感じ。
だからこそ、4Kレストア版が新鮮な気持ちで観られましたが。

そんなわけで、『ザ・クラッカー』を久々に堪能したので、サントラ盤も連日ガッツリ聴きました。

音楽担当はタンジェリン・ドリーム。
ワタクシ、今年はBANGER!!!にフリードキン映画の音楽コラムを書いたこともあって、『恐怖の報酬』(77)のタンジェリン・ドリームの音楽をよく聴いたような気がするのですが、個人的には『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』の音楽のほうが好きです。

サントラ盤のブックレットに結構詳細なライナーノーツが付属しているのですが、その情報によると、当時マンにタンジェリン・ドリームを勧めたのはウィリアム・フリードキンだったそうです。マンも彼らの音楽を気に入って、正式にスコアの作曲を依頼したと。

当時のメンバーのヨハネス・シュメーリンクのコメントによると、マンは「頭の中でドリルをガリガリやってるようなラウドな音楽」がほしかったのだとか。
その結果、ヘヴィなエレクトリックギターとシーケンサー・リズムを多用した電子音楽になったそうです。使ったシンセはARPやGDSと書いてありました。

タンジェリン・ドリームが音楽を作曲し終えた後、マンは映画の再編集を行ったので、新たに曲を作る必要が出てきたらしい。でもバンドはヨーロッパ公演に出てしまったので、もうスコア作曲に呼び戻すことは無理。そこで追加スコアの作曲に雇われたのがクレイグ・サファンだったそうです。

ブックレットにサファンのインタビューコメントも載っていて、彼が言うには、マンはクライマックスのシーンで、ジミー・ペイジのようなギターが唸るロックンロール風の曲を希望していたそうです。実際、アルバム9曲目の”Confrontation”はそういう曲ですよね。

だから『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』の音楽は、タンジェリン・ドリームの電子音楽を軸に、マイティ・ジョー・ヤングとウィリー・ディクソンのブルース、クレイグ・サファンのギターロック・スコアの3つで構成されていることになります。

『ザ・クラッカー』を久々に観て、ケイパー映画はハイテク技術が発展途上の頃のほうが断然面白いな、と改めて思った次第です。

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