ザ・タウン

the town

いやー、前評判通りなかなか面白い映画だった。

初監督作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(07)も地味ながらよく出来たハードボイルド映画でしたが、ベン・アフレックは娯楽色の強いクライム・アクションも撮れるんだなー、と感銘を受けた次第。2000年代中頃までロクな映画に出てなかったけど、(脚本家の素養はあったとはいえ)この人に監督の才能があったとは意外でした。

雑誌とか映画情報サイトでアフレックとイーストウッドの作品を比較・検証する記事がいろいろあったけど、作品傾向としてはアフレックはイーストウッドというよりマイケル・マン系と言った方がいいでしょう。ハードボイルドでありながら、どこかロマンティストな一面が垣間見えるストーリーテリングなんかが特に。

『ザ・タウン』(10)で個人的に見応えがあってよかったなと思ったのは、強盗の手口が極めてアナログな所。僕は「セキュリティシステムにハッキングして云々」みたいなハイテク強盗映画があまり好きではないので(強盗の手口でハイテクを使われると”何でもアリ”な気がして興ざめなのです)、本作のように強盗グループが綿密な計画と徹底した役割分担で”仕事”をこなす過程を描いた映画はグッと来るものがあります。このへんもマイケル・マンの映画に雰囲気が似ているかも(『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』とか)。アフレックもお気に入りに挙げている『ヒート』(95)とか『バンク・ジョブ』(08)とか『ハートブルー』(91)がお好きな方は、この映画も楽しんで頂けるのではないかと。個人的にショーン・ペンの最高傑作と思っている『ステート・オブ・グレース』(90)の雰囲気にも近いかもしれない。ロビン・ライトとレベッカ・ホールも女優として傾向が似てるし。


キャストもクセ者揃いで最高。身体を鍛えて顔つきも若干凄みが増した感のあるアフレックもよかったし、この手の映画に必要不可欠な「親友だけどエキセントリックでアブない奴」を演じたジェレミー・レナーもあいかわらずヤバイ。この人とベン・フォスターは「当代アブないあんちゃん俳優」2大巨頭と言っていいでしょう。

刑務所の面会シーンで人生の辛酸を舐め尽くしたかのような表情を見せるクリス・クーパー、恐らくこの映画の撮影時から闘病中だったであろう故ピート・ポスルスウェイトの命を懸けた極道演技もシビれる。『地球が静止する日』(08)では「気がついたら死んでいた」感じのジョン・ハム(『MAD MEN』の人)も、今回のFBI捜査官はなかなかの儲け役。相棒デカの顔をどこかで見たと思ったら、『LOST』の”黒服の男”でした。皆さんいい面構えしてます。

音楽はハリー・グレッグソン=ウィリアムズと『パリより愛を込めて』(10)のデヴィッド・バックリーの共作。打ち込みを多用したリズム重視のエレクトロ・スコアですが、トニー・スコット諸作品に比べると抑制の効いた音作り。これがストイックな強盗稼業のシークエンスと抜群にハマってます。派手さはないけど、クールでカッコいい。そんなスコアです。

アクションシーンでクールネスに貫かれたスコアを鳴らす一方、いわゆる「ダグのテーマ」的なスコアでヘイター・ペレイラのギターやヒュー・マーシュのエレクトリック・ヴァイオリン・ソロをフィーチャーした切ないスコアを書き下ろしてます。押しつけがましい「感動系」のスコアではないので、ドラマも不必要におセンチにならず、いい感じで収まってました。

というわけで、HGWのファンなら買って損なしのアルバムだと思うのですが、いくら何でもこのジャケ写はないでしょ。最初に見た時、ホラー映画のサントラかと思った。確かに映画の重要なシーンではありますが、これをジャケ写に持ってくるデザイナーのセンスには「?」となってしまいました。

このサントラ、日本盤が出てたら絶対にジャケ写のデザインが変わってたと思うなー。

Daryl Hall & John Oates 関連商品 好評発売中!

■Eliot Lewis/ 6 & One
 AMAZON
 レーベルショップ

■Charlie DeChant / Like the Weather
 AMAZON
 レーベルショップ
 iTunes Like the Weather - Charlie DeChant