『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のダニー・エルフマンの音楽はかなりいいと思う。の巻

fifty shades of grey

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(15)は公開2週目ぐらいに映画館に観に行ったのですが、
確かその頃は『シグナル』(14)と『ジョン・ウィック』(14)のライナーノーツ執筆の準備で忙しくて、
ブログで何も書かないまま時が過ぎてしまったのでした。
しかし最近になってDVDレンタルが始まったので、
せっかくだからこのタイミングで以前書こうと思っていたことを書かせて頂きます。

まぁ映画本編は観る前から「女性目線の『ナインハーフ』(86)的な感じ?」と思っていたので、
ほぼ当方の予想通りの内容&結末でありましたが、
自分はダコタ・ジョンソン目当てで観に行ったので特に不満はありません。

ただ、巨万の富を持つ若くてハンサムなCEOが、
過去のある理由で歪んだ形でしか女性を愛することが出来ない男で、
相手にSMチックな行為を強いる性癖の持ち主であることはまだいいとして、
“行為”に及ぶ際は事前に同意書(秘密保持契約書)にサインしてもらって、
契約に反する行為(相手が嫌がる行為)は絶対にしないなんて、
どんだけ女性サイドに都合のいいお話なんだよ…」と観ていて思いましたが。
『ナインハーフ』のミッキー・ロークは、
キム・ベイシンガーの気持ちなんかお構いなしに、
あんなこととかこんなこととかやってましたからね…。

そんなわけで何だか「おとぎ話チックなストーリーだなー」というのが正直な感想だったのですが、
それでワタクシ大いに納得しました。
「あぁ、だから音楽がダニー・エルフマンだったのか!」と。

音楽にもっとセクシャルさ(エロさ)を持たせる手法もあったのでしょうが、
(デ・パルマ映画の時のピノ・ドナジオみたいな感じ)
監督のサム・テイラー=ジョンソンもエルフマンも、
この映画の音楽には露骨なエロさよりも、
それこそ「現代のおとぎ話」のような”ロマンス”を求めていたのでしょう。
何しろエルフマンはティム・バートン作品やディスニーアニメなどで、
あらゆる種類の”ファンタジー”世界を彩ってきた作曲家ですから、
屈折したスキャンダラスな愛の物語をファンタジックに昇華させるのもお手のものでしょう。

 

今回のエルフマンの音楽は、
いつものケレン味を抑えたスタイリッシュで硬質な感じのスコアに仕上がってます。
ギターやドラムス、エレクトリック・ベースなど、
ロック・インストの要素が入っているのがポイントでしょうか。
ちなみにエレクトリック・ギターで参加しているBJは、
彼が某映画音楽家のアシスタントをしていた頃にお世話になって以来、
多少ワタクシとご縁のあるアーティストさんです。
(最近、映画音楽家としてもソロデビューを果たしました)

エルフマン曰く「アナとクリスチャンのシーンでテーマ曲を絶えず流したいと思った」とのことで、
その言葉通り「アナとクリスチャンのテーマ」がスコアの中で何度も顔を覗かせています。
非常に分かりやすいスコアですね。
どことなく気品を感じさせるオーケストラの響きとか、
緊張感の中にほのかにエロティシズムを感じさせるギターの音色とか、
都会的で洗練されたサウンドになっているのではないかなーと思います。
コーラスの使い方もいいですね。
こういうエルフマンの音楽はなかなか聴く機会がなかったので、ちょっと新鮮。

 

『パリより愛を込めて』(10)や『ファインド・アウト』(12)の作曲家、
デヴィッド・バックリーがAdditional Musicでクレジットされているので、
電子音率高めの楽曲はこの方の仕事ではないかなーと推測されます。

映画本編の評価はさておき、
ワタクシこの映画のエルフマンの音楽はかなり好きです。
エロすぎず真面目すぎず、遊び心を交えつつ仕上げはスタイリッシュに、
…という感じの音楽とでも申しましょうか。
(ボーカルコンピ盤は買っていないので割愛)

最近はCDラックからエルフマンのサントラを無作為に引っ張り出して、
仕事場で音源を流しながら、
今週末の「ディズニー・イン・コンサート ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」に備えております。
しかし日本国内に居ながらにして、
2年連続でダニー・エルフマンのパフォーマンスを生で観られるとは、
幸運以外の何ものでもないですねー。
今から楽しみです。

こちらがスコア盤。
ボーカル曲は未収録。

こちらがボーカルコンピ盤。
ダニー・エルフマンのスコアは2曲だけ収録。

 

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