『ディパーテッド』スコア盤のごく私的な思い出話。

今から遡ること2年と数ヶ月前、フレイヴァー・オブ・サウンド様から『ディパーテッド』スコア盤のライナーノーツのお仕事を頂きました。
音楽はデヴィッド・クローネンバーグ作品でおなじみのハワード・ショア。

名作『インファナル・アフェア』(02)のハリウッド・リメイクという事で、オリジナル版を観て男泣きしてしまった自分には不満な点も結構あったりするのですが、それでもこの映画は自分にとって特別な作品なのです。多分、これから先もずっと。

何故かというと、このサントラの仕事でチャーリーさん(Charlie DeChant)とご縁が出来たようなものだからです。

ウチのレーベルから「Like the Weather」をリリースするにあたって、まぁ当然のように契約内容の交渉とか会社実績(ライター実績を含む)を説明しなければいけなかったわけですが、

「君はどんな映画のライナーノーツを書いてるんだい?」

とチャーリーさんが訊ねた時に、

「はぁ、『ディパーテッド』とかアレとかコレとかいろいろやってます」と答えたのが全ての始まりだったような気がします(実際にはアレとかコレの映画もちゃんとタイトルを言いましたが)。

お手元にスコア盤がある方はご存じかと思いますが、ディパーテッドのスコアのレコーディングには、80年代にホール&オーツ・バンドのサポートを務めていたギタリスト、G.E. Smithが参加しているのです(懐かしい・・・)。
で、その事をチャーリーさんに説明したところ、

「この映画は何度もTVで見たけど、G.E.がギターを弾いているとは気がつかなかったなぁ。こりゃもう一回観ないとダメだな!」

・・・と、新鮮な驚きがあった様子でした。他にも

「マーティン・スコセッシはいい映画を撮るよねぇ。ハワード・ショアはサタデー・ナイト・ライブの音楽監督をやっていたんだが、レイ・チャールズがゲストで出演した時の彼のホーン・アレンジが素晴らしかったんだよ」

・・・などなど、ショアについても熱く語っておりました。

『ディパーテッド』のおかげで、レコード契約も数日後にすんなりまとまったので、これはこれでOKかなと。まさかあのMr. Casualと映画トークをする事になるとは思いもしませんでした。これもいい思い出です。

この体験を通して思ったのは、自分の仕事がいつどこで、誰と、どう繋がっていくか分からないもんだなぁ、という事でした。
地道にコツコツと気持ちのこもった仕事をしていれば、きっとどこかで誰かがそれを認めてくれるのだと思います。そう信じたいですね。

 

そんなわけで、『ディパーテッド』のスコア盤はG.E.スミスの他、ラリー・サルツマン、シャロン・イズビン、マーク・リボー(Mark Ribot)という技巧派ギタリストが4人も参加した、究極のギター・アルバムに仕上がっております。ギターをたしなむ全国の老若男女は必携・必聴の1枚でしょう。

スコセッシは『第三の男』(49)とか『契約殺人』(58)、『その男ゾルバ』(64)の音楽にインスパイアされて、この映画はギター・スコアで行こうと決めたそうです。
「ワシはリメイク映画なんか撮ってていいんだろうか」と思いながら撮影していたらしいですが、そこはシネフィル。こだわるべき所は徹底的にこだわらないと気が済まないお人なんでしょうね。

 

 

『ディパーテッド』オリジナル・スコア
音楽:ハワード・ショア
レーベル:フレイヴァー・オブ・サウンド
品番:PUCY2524
定価:2,400円