『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』のサントラ盤はオモチャ箱の中を探るように聴くのがいいと思うの巻

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ワタクシ去年の「ディズニー・イン・コンサート」と、
おととしの「ティム・バートン&ダニー・エルフマン 映画音楽コンサート」で、
ダニー・エルフマンご本人とお会いする機会に恵まれた身なので、
「またダニーさんのサントラの仕事がやりたいなぁ」と常々思っていたのですが、
ありがたいことに先頃ディズニー&エイベックスさんから、
『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』(15)のサントラ盤解説のお仕事を頂きました。

これは身に余る光栄ということで、
今年はゴールデンウィークを返上して、
『アリス』の1作目と今回の続編の音楽分析に取り組んだ次第です。

詳しい内容は日本盤ブックレットの差し込み解説書をご覧頂きたいのですが、
ここでは製品紹介…というか、
『時間の旅』の音楽がどんな感じになっているのかをざっくりと書かせて頂きます。

 

『アリス・イン・ワンダーランド』(10)の音楽は、
エルフマンの作品の中でもかなりThematicなスコアでしたが、
今回の続編も音楽的なアイデアは前作を踏襲していて、
あの「アリスのテーマ」以外の部分をさらに発展させた内容になっています。

まぁ簡単に言ってしまえば「サブテーマのバリエーションが増えた」ということです。

「アリスのテーマ」というと、
前述のディズニー・イン・コンサートでNHK東京児童合唱団が歌っていたあのメロディーを思い浮かべるわけですが、
1作目にはこのメインテーマの他にもアリスのサブテーマがあって、
今回の続編ではそのサブテーマの使用頻度が増えているのです。
音源を聴いていてなぜ今回はこういう音楽になったのかなーと思ったのですが、
ワタクシ試写で映画本編を観て大いに納得しました。
単に続編だから音楽を派手にしたわけではありません。
今回のアリスの冒険を描く際に、
サブテーマの存在感が大きくなったのにはちゃんと意味がありました。
それがどういう意味なのかはサントラ盤のライナーノーツに書かせて頂きましたので、
気になる方はそちらをご覧頂けると有難いです。

あとは主要なキャラクターのライトモティーフもいくつか用意されておりまして、
まずサシャ・バロン・コーエンが演じる新キャラ<タイム>のテーマがあります。
この<タイム>というキャラ、
予告編を見ると「赤の女王と結託してアリスを襲う悪者」みたいな印象だったのですが、
「<タイム>のテーマ」を聴くと何だか妙にトボけた味わいがありまして、
「悪役のテーマにしては愛嬌のある曲だなー」と思ったりしたのですが、
これも映画本編を観たら大いに納得しました。

「<タイム>は悪役じゃないよ!」…と。

 

「赤の女王と結託してアリスを襲う悪者」ではなく、
どちらかというと「アリスにまんまと出し抜かれたり、赤の女王に利用されるちょっとダメな神様」という感じでした。
『おちゃめ神物語 コロコロポロン』に出てくるギリシャの神様っぽいというか、
広川太一郎さんがご存命だったら日本語吹替えを担当してそうだとか、
そんな感じの茶目っ気のあるキャラクターです。
そういうトボケた感じがよく出たテーマ曲になってます。

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あとは前作から「赤の女王のテーマ」「マッドハッターのテーマ」が使われてます。
「赤の女王のテーマ」は前作でも比較的分かりやすかったのですが、
「マッドハッターのテーマ」はどこに使われているのか今まで分からなかった。
でも今回の『時間の旅』のサントラを何十回と聴きまくって、
前作のDVDを借りて何度も何度も観ていたら、
やっと1作目のスコアから「マッドハッターのテーマ」の短いフレーズを確認出来ました。
ほんの数回しか使ってなかったし、これは相当意識して聴かないと分かりませんね。。
1作目のスコア盤には「マッドハッターのテーマ」が流れた場面の曲が入っていなかったので、
そのせいで気づきにくかったという理由もあるのですが。。

で、今回はそのマッドハッターの「悲しい過去」に焦点が当てられているので、
「マッドハッターのテーマ」も前作以上に使われるようになったというわけです。

 

サントラ盤はエルフマンのスコアを27曲と、P!NKの主題歌を収録した全28曲。
スコアの中にアリスのテーマ(メインテーマとサブテーマ)と、
<タイム>のテーマ、
マッドハッターのテーマ、
赤の女王のテーマが使われていて、
各キャラの登場シーンで、
それぞれのメロディーが入れ替わり立ち替わり登場する構成になっているのです。
ハッキリ言ってものすごく凝った作りの音楽です。
各キャラのテーマ曲のメロディーが把握出来ると、
サントラの曲を聴いただけで、
どのキャラが画面に出ているか頭の中でイメージ出来るくらい、
物語の流れと音楽が密接にリンクしたスコアになってます。

 

…というわけでこのサントラをお聴きになる際は、
オモチャがぎっしり詰まった箱の中からお目当ての物を探し出すような感覚で、
曲の中から各キャラクターのテーマ曲を見つけ出すようにして聴いて頂きたい。
聴いているうちにいろんな発見があって、なかなか楽しいですよ。

なお今回サントラ盤に寄稿させて頂いたライナーノーツ原稿ですが、
ダニー・エルフマンとバックステージで会った時の小ネタもちょっとだけ書かせて頂きました。
もっとも、あの時は『アリス』とはあまり関係のない会話が多かったので、
使えそうなものだけをちょっぴり、という感じではありますが…。

まぁそんなわけで、

アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅 音楽

…という感じでググってこちらのブログに来て下さった皆さまには、
是非ぜひ国内盤をお買い求め頂ければと思っております。
日本盤にはP!NKの主題歌の歌詞対訳もついてますので…。

『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ダニー・エルフマン
レーベル:Walt Disney Records/エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ
品番:AVCW-63145
発売日:2016/06/29
価格:2,500円(+税)

※2018年8月25日追記
Walt Disney Recordsのライセンスがエイベックスからユニバーサルミュージックに移ったのに合わせて、『アリス・イン・ワンダーランド』のサントラもユニバーサルからリイシューされるようです。

 

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