『トリプル9 裏切りのコード』のアッティカス・ロスの音楽はもっと評価されていいと思う、という話。

triple 9

先日の『マネーモンスター』(16) at イオンシネマ名取に続いて、今度は『トリプル9 裏切りのコード』(15)を観にMOVIX利府まで行ってきました。

仙山線と東北本線・利府行きを乗り継いで40分弱。
利府駅からMOVIXまで歩いて10分弱。
交通費こそ名取よりは安いものの、
「駅から映画館まで歩く」
「近くにマッタリ時間を潰せそうな施設がない」
「それゆえタッチの差で電車に乗り遅れると精神的ダメージがデカい」
…という電車利用者にはなかなかツライ映画館です。
それでもこの『トリプル9』(15)は観に行きたかった。

実際、ワタクシが期待していた通りのハードなクライムアクション映画でした。
『キラー・インサイド・ミー』(10)、『ファーナス/訣別の朝』(13)のケイシー・アフレック、『アメリカン・ギャングスター』(07)のキウェテル・イジョフォー、『崖っぷちの男』(12)のアンソニー・マッキー、『トラフィック』(00)『処刑人II』(09)のクリフトン・コリンズJr.、『処刑人』(99)のノーマン・リーダス、『ブレイキング・バッド』(08~13)のアーロン・ポール、『ファーナス/訣別の朝』でケイシーと共演したウディ・ハレルソンなど、いい面構えのクセ者俳優が総出演。
ケイト・ウィンスレットの「ロシア系イスラエル人マフィア」という変化球チックな設定の悪党キャラも素晴らしい。
全身タトゥーだらけの”マラ・サルバトルチャ”幹部ルイスを演じていたのが、『パーソン・オブ・インタレスト』のシーズン3でチンピラを演じていたルイス・ダ・シルヴァJr.だったのもポイント高かったです。(あの顔は一度見たら忘れない)
強面多めなキャストの中に、テリーサ・パーマーとガル・ガドットという美女2名をキャスティングしているのも秀逸。

で、ワタクシ映画本編を観るより先にサントラを買って聴いていたのですが、このアッティカス・ロスの音楽がなかなかいい。
ジョン・ヒルコート監督は過去作でニック・ケイヴ(&ウォーレン・エリス)と頻繁に組んでますが、今回は都市犯罪の話なのでモダンな音楽が必要だったのか、トレント・レズナーとのタッグで知られるロスに白羽の矢が立ったようです。

「裏社会に友情も仁義もない!タフな奴が生き残る、それだけだ!」

…というような感じのストーリー展開なので、ロスの音楽も一切甘さのないエッジィで辛口なエレクトロ・スコア。
警察無線のノイズを思わせるような電子音を散りばめつつ、メインテーマ的なメロディー(ちょっと『ジョン・ウィック』(15)のメインテーマに似てるかも)もあったりして、無機質で殺伐とした中に男たちの悲哀のようなものが感じられて、いい感じに「都市型ノワールサウンド」を構築しているように思います。

ワタクシ、デンゼルの『ザ・ウォーカー』(10)の時からロスには注目していたのですが、トレント・レズナーとコンビを組んだ『ソーシャル・ネットワーク』(10)や『ドラゴン・タトゥーの女』(11)、『ゴーン・ガール』(14)での扱いに比べると、アッティカス・ロス単独名義の音楽は不当に注目度が低いような気がしてなりません。本作とか『ブロークン・シティ』(13)とか、結構手堅いスコアを書いているんです、この方。

“トレント・レズナー”という名前が一種のブランドと化してしまったので、レズナーの名前がクレジットされるだけで、「きっと音楽も特別なものに違いない」という先入観のもとにスコアを聴いてしまうのかもしれませんが、アッティカス・ロス単独でもかなりユニークな音楽を作ってると思います。
特に今回の『トリプル9』に関しては予備知識なしでスコアを聴いたら、「この曲、レズナーとロスの合作なんですよ」と言われても信じてしまうかもしれません。

まぁトレント・レズナーの名前がないと、商業音楽的見地からすれば”地味”ということになるのかもしれませんが、ワタクシと致しましてはそういった先入観を捨てて、是非『トリプル9』の音楽をアルバムでじっくりと味わって頂きたい。エレクトロ・ハードボイルドとでも形容すべきサウンドが結構クセになりますよ。

なおサントラ盤の最後にはサイプレス・ヒルの「Pigs」のアッティカス・ロス・リミックスを収録。こいつがまたサグ(=Thug)度の高い曲でして、映画本編の殺伐とした雰囲気を盛り上げているのでありました。

 

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