『ジョン・ウィック:チャプター2』雑感(音楽とかキャラ設定とか世界観などについていろいろ)

遅ればせながら先日『ジョン・ウィック:チャプター2』(17)を観て参りまして、
2年ぶりにジョンのブギーマンっぷりを楽しませて頂いたのですが、
まぁやっぱり1作目のほうが面白かったなーというか、
続編を観て「1作目は奇跡の完成度だったんだなぁ」と再認識させられた次第です。

ワタクシ「今度は世界が舞台だ!」みたいな続編の展開があまり好きではなくて、
今回「ローマが舞台になる」と聞いた時にちょっとイヤな予感がしていたのですが、
やはりというか何というか、
映画をスケールアップさせた結果、
前作でタイトにまとまっていた設定や世界観が微妙に壊れてしまった気がしてならないのです。。

 

個人的に最も不満だったのが、
「前作でヴィゴ・タラソフが言っていた”不可能な仕事”が、実はジョン一人の仕業ではなかった」という話が明らかにされてしまったこと。
あれはジョン一人で達成不可能な殺しをやった(らしい)からこそ、
ジョンの「ブギーマン伝説」に底知れぬ恐ろしさがあったのに、
実は協力者がいて、
その手を貸した相手というのが、
「姉の権力に嫉妬して、”血の誓印”を口実にジョンに殺しを依頼する弟」という何とも度量が狭い男(=サンティーノ)だったのがどうもスッキリしなくて、
何だかジョンの「ブギーマン伝説」にケチがついてしまった気がしてならない。
まあサンティーノがどのくらいジョンに”協力”したのか分かりませんが(恐らく武器の調達とターゲットの情報提供くらいだと推測されますが)、
ジョンの”不可能な仕事”に協力したのが前作のマーカス(ウィレム・デフォー)だったらよかったのになぁ…と思わずにはいられませんでした。

『チャプター3』で「孤独なジョンに頼れる相棒(しかも女性)登場!」みたいな展開になったらどうしようと本気で心配になってきました。
ジョンの相棒はブサ可愛いわんこだけで十分だし、
愛する女性は亡き妻ヘレン(ブリジット・モイナハン)だけでいいんですから。
みんな「孤独なジョン・ウィック」にシンパシーを覚えているわけで、
そのへんは余計な手を加えないで頂きたいなーと切に願います。

ことほどさようにいささか不満の残るストーリーではありましたが、
音楽は前回と全く同じテイストなのでその点は安心しました。

 

オリジナル・スコアの作曲は前作同様タイラー・ベイツとジョエル・J・リチャード。
今回もギター・ロック・テイストの爆音系スコアを鳴らしてくれています。
ベイツとリチャード自らギター・ベース・キーボードなどを演奏していて、
ドラマーも前作のギル・シャローンが続投しているのでサウンドの質感も前作と全く同じ。
そして「ジョンのテーマ」を始めとする前作の印象的なメロディー(モティーフ)もほぼ全部使ってました。

今回は趣のあるローマが舞台ということもあって、
前作よりもストリングスの音色を多めに使うようになったり、
時々荘厳なコーラスが聞こえてきたりするようになったのが大きな変更点かなと。

今回はクラブでの銃撃戦はなかったけど、
ル・キャッスル・ヴァニアが”John Wick Mode”を1曲提供していて、
前作で”Who You Talkin’ to Man?”を熱唱したシスカンドラ・ノスタルジアが今回は”Fool”と”Plastic Heart”の2曲を歌っていて、
しかもローマの野外ライブ会場で本人がステージで歌っているというオマケつき。
この場面、シスカンドラのバックでギターを弾いていたのはタイラー・ベイツさんではないかと思われます(ギターヴァイオルも弾いていたから多分そうじゃないかなぁ…)。
ル・キャッスル・ヴァニアもステージにいたと思います。たぶん。

そして前作ではマリリン・マンソンの”Killing Strangers”が使われていましたが、
やはりあれはマーカスのテーマ的な扱いだったらしく、
マーカス亡き後の本作では使われておりませんで、
代わりにジェリー・カントレルの”A Job To Do”がエンドクレジットで流れておりました。
今回はちょっとジョンが可哀想な終わり方だったので、
男臭さの中に悲哀を漂わせたカントレルのこの曲が物語の展開に合ってましたね。

なお今回Kaleidaの曲は使われていませんでしたが、
彼女たちは『アトミック・ブロンド』(17)のほうで「99 Luftballons」のアンニュイなカヴァーを聴かせてくれているので、
そちらも是非チェックして頂きたいと思います。

余談ですが、前回ランブリング・レコーズさんから国内盤が発売になって、
有難いことにサントラもかなり売れしまして(現在は売り切れ廃盤)、
ワタクシもライナーノーツも書かせて頂くことが出来て、
タイラー・ベイツさんにインタビューもさせて頂くことが出来たので、
「これは今回もまたベイツさんに話が聞けるなぁ、楽しみだなぁ」と思っていたのですが、
残念ながら今回の『ジョン・ウィック:チャプター2』は国内盤がリリースされなかったんですよね…。

『チャプター3』は国内盤が出るといいなぁと思っております。

 

 

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