空飛ぶペンギン -Mr. Popper’s Penguins-

mr poppers penguins

うーん、遂にジム・キャリー主演のヒット作が日本でDVDスルーになる日が来てしまったか、と何とも複雑な心境になりつつDVDを鑑賞。

映画本編は結構面白かったんですけどねー。ファミリー向けゆえジム・キャリーのギャグの破壊力は通常より控えめですが、相変わらずヘンな一発芸を見せてくれるし(グッゲンハイム美術館でのシャンパン芸は必見)、ペンギンはカワイイし、「仕事熱心で家族を気にかけなくなったポッパーさんが、父親の形見であるペンギンを引き取って家族愛に目覚めていく」というお話もベタながらいい感じだし、手堅くまとまってる佳作だと思うのです。話としては『ライアーライアー』(97)のノリに近いかな。

動物ものはファミリー映画の定番ネタだし、それがペンギンともなればさらにキャッチーな題材になり得るし、ジム・キャリーの日本語吹替えもちゃんと山寺宏一氏が担当してるし、この際ファミリー層にターゲットを絞って日本語吹替え上映を多めにして(注:こんなこと書いてますが自分は断然字幕派です)、山寺さんを前面に出して、動物園とかロッテクールミントガムなんかとタイアップを組んで夏に劇場公開すればそこそこイケたんじゃないかなーと考えたりもします。

しかしペンギンの鳴き声があんなにやかましいとは知らなかった。
「ギエェェーーッ!」とかそんな感じの声でした。

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マイケル・ダナ名作選 / 秘密のかけら -Where The Truth Lies- (2005)

where the truth lies

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。

今回はマイケルの作品から、盟友アトム・エゴヤン監督の『秘密のかけら』(05)をご紹介します。

舞台は1972年のLA。新進気鋭の女性ジャーナリスト・カレン(アリソン・ローマン)が、50年代に絶大な人気を誇ったスタンダップ・コメディアン二人組「ラニー&ヴィンス」の伝記を執筆する過程で、彼らが関与したとされる女子大生殺人事件の真相に迫っていくエロティック・サスペンス。

セクシャルな一面ばかりが強調されている作品ですが(まぁ実際キワドイ描写が多いけど)、映画の終盤まで真犯人が分からないトリッキーな物語構成とか、ソフトフォーカスをかけて50年代ハリウッドをセクシャル&きらびやかに再現した映像とか、「酒・ドラッグ・女・マフィア」というショウビズ界の裏の顔を赤裸々に綴ったストーリーとか、なかなか見応えのある内容でした。「大人のためのサスペンス・ミステリー」という表現がぴったりかと。ネットリしたエロティシズムや暴力描写の見せ方に、どことなくブライアン・デ・パルマの初期作品を彷彿とさせるものもありました(ナイトクラブのシーンでは長回しの映像もあったし)。

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『ダークナイト ライジング』のサントラ盤ボーナストラックを検証する

the dark knight rises

おとといAmazonから『ダークナイト ライジング』(12)の輸入盤が届きました。
自分の場合、最終的に940円で買えてしまいました。

「輸入盤とはいえ、超大作のサントラが940円で買えちゃっていいのかなぁ…」などと、柄にもなく円高ドル安をはじめとする経済情勢などあれこれ考えてしまって、非常に複雑な心境になりました。

さて今回のサントラ盤、15曲で52分弱でした。

THE DARK KNIGHT RISES – Original Motion Picture Soundtrack (amazon)

本編が2時間44分ある事、そして前作『ダークナイト』(08)のサントラ盤が収録時間73分強(特装版のDISC2は50分強)だった事を考えると、ボリューム的に何か物足りないという印象があります。この場合のボリュームというのはあくまで収録時間や収録曲数的な話で、音楽の出来はまた別のお話。

が、しかし。どうやらこれはレーベル側も計算ずくの売り方のようで、アルバムをいろんな形態でリリースし、それぞれ違ったボーナストラックをつけて稼ごうという思惑らしい。

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リゾート感覚のジャズ・スコアが心地よい『ラム・ダイアリー』の音楽

rum diary

映画本編は個人的にイマイチだった『ラム・ダイアリー』(11)ですが、
音楽(サウンドトラック)はなかなかよかった。
もしかしたら、映画を観る前にサントラを聴いて、
「音楽がこのクオリティなら映画もイケるはず!」と、
期待値をガーッと上げてしまったのがマズかったのかもしれません。

オリジナル・スコア作曲はクリストファー・ヤング。
本作のブルース・ロビンソン監督とは『ジェニファー8』(92)で組んだ事があるのですが、
ロビンソンがほぼ20年ぶりにメガホンを取った作品で、
ヤングに再び作曲を依頼するというこのエピソードがまず素晴らしい。

で、本作のためにヤングが書き下ろしたのが、
リゾート感覚溢れる珠玉のラテン・ジャズ・スコア。
ラテン・パーカッションやギター、ハモンド・オルガンが織りなすグルーヴが実に心地よいのです。
スコアによってはジャズのみならず、ブルース調の曲もあり。

ヤングというと『ブラックサイト』(08)とか『スペル』(09)とか、
ホラー・サスペンス系のスコアで有名ですが、
『ラウンダーズ』(98)、『ワンダー・ボーイズ』(00)、『シェイド』(03)など、
ジャズ・スコアも非常に巧い作曲家でもあります。
今回はその流れ。今回もジャズ・アルバムとしてのクオリティーはかなり高いです。

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決め手には欠けるけど、愛すべき映画ではある『ラム・ダイアリー』

rum diary (more music)

1998年の映画『ラスベガスをやっつけろ以来親交を暖めてきた、
ジョニー・デップ(主演・製作)と故ハンターS・トンプソン(原作)のコンビによる最新作。

『ラスベガスをやっつけろ』が大好きで、
何十回・何百回と観た自分としては、
今回の『ラム・ダイアリー』(11)も非常に楽しみだったのですが…。
いざ本編を観てみると、何か物足りなかったなーという印象でした。

映画の内容をひと言で申し上げるなら、
「酔っぱらいジャーナリストの南米珍道中」という感じなのですが、
何しろ前回の『ラスベガスをやっつけろ』がああいう調子だったので、
あれと比べると酔っぱらいの珍道中というにはそれほどハチャメチャではないし、
胡散臭いアメリカ人実業家(アーロン・エッカート)にケンカを売る展開もイマイチ迫力に欠ける。
原作者トンプソンの分身とも言える主人公ポール・ケンプに関しても、
この頃はまだトンプソンも若くて大人しかったのか、
あるいはテリー・ギリアムに比べるとブルース・ロビンソン監督は真面目な人だったのか、
ハメを外しきれていないという感じ。

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