プリズン・ブレイク (Season 3 & 4)

前回シーズン1と2について書いてからちょいと間が空いてしまいましたが、本日は『プリズン・
ブレイク』のシーズン3と4に関する他愛のないお話でございます。

シーズン1で脱獄ドラマ、シーズン2で『逃亡者』のようなドラマ展開を見せた同シリーズですが、
シーズン3はパナマの刑務所”SONA”を舞台に再び脱獄ドラマに戻りました。

しかしまぁ、SONAはフォックスリバーの上を行く劣悪な環境の刑務所ですな。
「ムショ内に刑務官がおらず、ボス格の囚人ルチェロが所内の悪党を全部仕切っている」という設定がナイス。
ムショのモメ事は当事者同士が決闘して解決。
すなわち死んだ奴が負け! 何て分かり易いルールでしょう。

そのSONAにはマイケルが収監されてしまうわけですが、
マホーンとベリック、ティーバッグも一緒。
何とかして塀の外からマイケルを助けようとするのは、
前シーズンで力仕事専門だったリンカーンというのがなかなかスリリングです。
マイケルに比べると明らかに頭脳の点で劣るので、
「ホントにリンク兄貴で大丈夫かいな」と、見ていて非常にハラハラするのです。
案の定、「組織」のスーザン(本名グレッチェン・モーガン)を出し抜こうとしちゃあ失敗するし。

ま、「マイケルやリンクが考えた作戦が、必ずしも成功するとは限らない」というのがこのシリーズの面白さでもあるわけですが。
SONAでのマイケルとその仲間(?)たちの騙し合いも面白い。

シーズン3の見所は、キャラクターの人間関係のビミョーな変化ですね。
その正義感の強さ故に、道を踏み外して組織の手先に成り下がってしまったマホーンの悲哀とか、
前半はそのマヌケな言動で相変わらず笑いを取りつつも、
「サラが×された」という話を耳にした途端に心変わりするベリックの人間くささとかの描写がよい感じ。
でもティーバッグは相変わらず。
ルチェロに取り入る時の卑屈な演技はいつ見ても笑える。
ロバート・ネッパーの芝居は原語(字幕)と若本規夫氏の吹替えで違った味わいがあるので、
一粒で二度おいしい(←古い表現)感じです。

シーズン4はと申しますと、
日本ではまだ後半のDVDがレンタル開始になっていないのであまり詳しい事は書きませんが、
脱獄ドラマから一転、『スパイ大作戦』とか『特効野郎Aチーム』のようなドラマ展開になります。

「こりゃちょっと唐突すぎないか?」とか、
「今まで自由を求めて警察とかFBIから散々逃げ回っていたのに、結局国家権力の手先になっちゃうわけ?」
などと最初のうちは違和感があったのですが、これはこれで結構楽しめて見られてしまうんだな。

特にマホーンとリンカーンが和解するエピソードとか、
目立った活躍のなかったベリックが人生最大の男気を見せるエピソードとか、
泣ける展開が多くて、なかなかアツいシーズンになってます。
ドラマを見ていて目頭が熱くなったのは久しぶりでした。

唯一気になったのは、
シーズン4になってマイケル(というかウェントワース・ミラー)がちょっと太めになった事ですかね。
彼の持病が悪化して任務遂行に支障が・・・というのがシーズン4のドラマのキモになっているのに、
ぽっちゃりして病的に見えないというのはどうしたものか。
後半のエピソードになったら痩せるんだろうか。

・・・というわけで、前作に引き続き、
ランブリング・レコーズさんからシーズン3と4の代表的なスコアをコンパイルしたサントラ盤が7/22にリリースになります。音楽のノリはこれまでのシーズンとほとんど一緒。
耳慣れたメロディーが違うアレンジで演奏されたりするので、
前作のリミックス・アルバム的な楽しみ方もできそうな気がします。
“Dirt Nap”とか”Fin Del Camino”、”Breaking and Entering”などはなかなかカッコいい感じのスコアではないかと。

今回はシリーズ完結記念ということで、
日本版ブックレットには音楽担当のラミン・ジャワディ氏のコメントが載っています。

ジャワディ氏の好きな登場人物とか、
作曲者本人が語る『プリズン・ブレイク』の音楽の魅力とか、
作曲にまつわる苦労話とか何とか話してくれましたので、
ぜひぜひ国内盤をよろしくお願い致します。
日本のファンへのメッセージ&サイン(印刷だけど)も付いてますので。

『プリズン・ブレイク Season 3 & 4』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ラミン・ジャワディ
品番:GNCE-7058
定価:2,625円

Disney / PIXAR Greatest

去る4月上旬のこと。
エイベックスのM氏から「ディズニー/ピクサー グレイテスト」なるベスト盤をリリースするという話を伺いました。
で、このライナーノーツ製作の依頼を頂いた時、
「ディズニーのベスト盤かぁ。きっと歌モノのコンピ盤なんだろうな」と思ったのですが、
話を聞いてみると「40%がヴォーカル、60%がスコアになります」というお返事が。

おぉ、これはいいアルバムになるかも、と高まる期待。
さらに話を聞くと、今後収録曲が増えるかもしれないとの事。

もる:「歌モノが増えるんでしょうか?」

M氏:「いや、スコアが増えそうな感じですねぇ」

・・・というわけで、当初は全18曲を収録予定だったのですが、
数日後に送られてきた音源では、本当にスコアが増えて全25曲になってました。

さて肝心のCDの内容はと申しますと、
『トイ・ストーリー』(95)から近作『WALL・E』(08)まで、
ピクサー・アニメーション・スタジオが製作した珠玉のCGアニメの中から、
選りすぐりの主題歌・挿入歌・スコアをコンパイルした便利なベスト盤となっております。

内訳としては、歌モノが11曲、ランディ・ニューマンのスコアが6曲、
トーマス・ニューマンのスコアが5曲、
マイケル・ジアッキノのスコアが3曲という感じです。

そしてこのベスト盤の最大の目玉は、
ピクサー最新作『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)からスコアが1曲収録されている点でしょう。
何しろ本国では『カールじいさん』のサントラが、
よりによって配信限定リリースという「やってはいけない事」をディズニーがやってしったので、
悲しい事に日本でもサントラがCDでリリースされるかどうか分からない状態なのです。

ワタクシは日頃から、
「アルバムは音源とジャケットとライナーノーツ(or 歌詞カード)があってこそ成り立つもの」と考えている人間なので、
一応この前エイベックス(のM氏)に「日本では是非CDで発売を!」とリクエストしてみましたが、どうなるかなぁ・・・。
(追記:後にIntradaからCD版が限定リリースされました)

ま、とりあえず現時点では『カールじいさん』の音がCDで聴けるのはこのアルバムだけ、という事になるわけです。
そういう意味では貴重な1枚ではないかと。

歌モノは例によってブックレットに歌詞・対訳がついているので、
その点でもなかなか便利なアイテムではないかと思います。
サラ・マクラクランの”When She Loved Me”(『トイ・ストーリー2』[99]の挿入歌)なんて久々に聴きましたが、
これはいつ聴いても名曲ですな。

他にもランディ・ニューマン、シェリル・クロウ、ジェームズ・テイラー、
ラスカル・フラッツ、カミーユ、ピーター・ガブリエル、
ビリー・クリスタル&ジョン・グッドマンのボーカル曲を収録。
ピクサー・ファンなら、どれがどの映画の挿入歌なのか一発で分かるでしょう。

日本盤はダイアモンド☆ユカイ(『トイ・ストーリー』[95])と
石塚英彦&田中裕二(『モンスターズ・インク』)の日本語版主題歌/挿入歌が収録されていますが、
これはちょっと微妙なデキかもしれないです…(ボソッ)。
やっぱり「英語の歌詞を和訳して、原曲のメロディーに合わせて歌う」というのは無理があるような。
言葉のリズム感も違いますからねー。

ま、こういう機会に日本語版主題歌を聴いてみるのもオツなものではないか、と思ったりもするわけですが、
その点を差し引いても、手堅い選曲でハズレなしのベスト盤に仕上がってます。

『ディズニー/ピクサー・グレイテスト』
音楽:Various Artists
品番:AVCW-12727
定価:2,600円

  

Man on Wire / フィリップ・プティの人生観

・・・というわけで、前回の続きです。今回は映画本編について。

先日のブログでも少し触れさせて頂きましたが、この映画はフィリップ・プティという
フランスの大道芸人/綱渡り師のドキュメンタリー作品です。

このプティさんという方は1974年に今は無きワールド・トレード・センターのツインタワーに
ワイヤーを張り、地上からの高さ約400mの場所で長時間の綱渡り(45分間で8往復)を
敢行したというとんでもない人です。あれは「芸」というより命を懸けた「アート」です。
劇中でもWTCで綱渡りを敢行した時の写真が登場するのですが、この世のものとは思えない
美しさと、死と隣り合わせの緊張感に圧倒されてしまいます。この映像だけでも必見かと。

映画本編を見てみると、プティとその仲間たちは「WTCで綱渡りプロジェクト」を実行するため、
それはもういろんな事をやったもんだと当時を振り返っています(彼らが見せる友情もこの映画の
見所のひとつ。今は疎遠になってるっぽいけど)。

身分を偽ってWTCの情報を集めたり、内通者/協力者と連絡を取ったり、立ち入り禁止の場所に
忍び込んだり・・・と、彼らのやった事はほとんどスパイです。あるいはオーシャンズ11ならぬ
プティ’s 9とでも申しましょうか。プロの強盗集団と変わらないんじゃないかという感じです。

「そこまでして、何でこんな事をやったんですか?」と誰しも思うでしょうが、プティは
「その質問、聞き飽きた。理由なんてないんだ」と毎回答えているそうなので、本当の理由は
この先ずっと分からないままだと思います。

多分、理由なんかどうでもいいんだろうなと思います。人間、他人から見れば意味のない事とか
無謀な事にアツくなる瞬間というのが誰でもありますが、そういうものに熱中した時の自分を
振り返ってみると、そもそもの動機とか目的なんていうのは大した事じゃなかったりするわけで。

この映画で最も胸を打つメッセージは、どんな突飛な事(あるいは無謀な事)でも本気で
取り組めば、それは素晴らしいものになり得るのだという事でしょう。

たとえ誰かにとって意味のない事でも、別の誰かにとってはすごく意味のあるものだったりも
するわけで、言い換えればこの世に「意味のないもの」などないんですよ、と。だからどんな
事であれ、物事に挑戦する気持ちを忘れてはいけない、とプティさんは教えてくれているのでは
ないかなぁ、と思うのです。

こういう言葉は文化人気取りのタレントとかコメンテーターとかに言われても、イマイチ説得力に
欠けますが、プティさんに「人生は何でも挑戦する事に価値がある」と言われたら、そりゃもう
「はい、全くその通りです!」と納得してしまうしかないでしょう。やっぱり事を成し遂げた人の
言葉は含蓄と説得力があります。

映画は6/13から新宿テアトルタイムズスクエアにて公開。全国順次ロードショーで、仙台でも
8月頃に上映予定との事(詳しくは公式サイトをご覧下さい)。

それにしてもこの映画、マイケル・ナイマンの音楽と映像が絶妙にマッチしてますな。
『ピアノ・レッスン』(93)や『英国式庭園殺人事件』(82)など、極めて個性の強い映画のために
書き下ろした音楽が、綱渡り師のドキュメンタリー映像とここまで見事な融合を果たすとは、
正直驚きでした。これも選曲の妙というやつでしょうか。

  

Man on Wire / マイケル・ナイマンの音楽

manonwire

先日、綱渡り師フィリップ・プティの実像に迫る『マン・オン・ワイヤー』というドキュメンタリー映画のサントラ盤のお仕事をやらせて頂きました。

ユニバーサルミュージックからこの作品のサントラ盤がリリースになりましたが、
音楽をあのマイケル・ナイマンが担当しております。

担当、というのはちょっと適切な表現じゃないかもしれません。
と申しますのも、この映画の音楽はナイマン本人の了承を得た上で、
彼の過去音源を”再利用”する形で構成されているからなんです。

 

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ハリソン・フォードの家族ヒーローっぷりに拍手!『ファイヤーウォール』

今度の「日曜洋画劇場」で『ファイヤーウォール』(06)を放送するという事で、
本日はそのお話。

ランブリング・レコーズのMさんからライナーノーツの執筆依頼を頂いたのは、
2006年1月下旬の事でした。
原稿の〆切りが2/17で、
映画の内覧試写が2/10という結構ギリギリなスケジュールだったのですが、
いざ本編を観たら〆切りの事など忘れて、
二人で「いやーなかなか面白かったですねぇ」と言いながら、
しばし映画談義で盛り上がってしまったのを覚えています。

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