リゾート感覚のジャズ・スコアが心地よい『ラム・ダイアリー』の音楽

rum diary

映画本編は個人的にイマイチだった『ラム・ダイアリー』(11)ですが、
音楽(サウンドトラック)はなかなかよかった。
もしかしたら、映画を観る前にサントラを聴いて、
「音楽がこのクオリティなら映画もイケるはず!」と、
期待値をガーッと上げてしまったのがマズかったのかもしれません。

オリジナル・スコア作曲はクリストファー・ヤング。
本作のブルース・ロビンソン監督とは『ジェニファー8』(92)で組んだ事があるのですが、
ロビンソンがほぼ20年ぶりにメガホンを取った作品で、
ヤングに再び作曲を依頼するというこのエピソードがまず素晴らしい。

で、本作のためにヤングが書き下ろしたのが、
リゾート感覚溢れる珠玉のラテン・ジャズ・スコア。
ラテン・パーカッションやギター、ハモンド・オルガンが織りなすグルーヴが実に心地よいのです。
スコアによってはジャズのみならず、ブルース調の曲もあり。

ヤングというと『ブラックサイト』(08)とか『スペル』(09)とか、
ホラー・サスペンス系のスコアで有名ですが、
『ラウンダーズ』(98)、『ワンダー・ボーイズ』(00)、『シェイド』(03)など、
ジャズ・スコアも非常に巧い作曲家でもあります。
今回はその流れ。今回もジャズ・アルバムとしてのクオリティーはかなり高いです。

続きを読む

決め手には欠けるけど、愛すべき映画ではある『ラム・ダイアリー』

rum diary (more music)

1998年の映画『ラスベガスをやっつけろ以来親交を暖めてきた、
ジョニー・デップ(主演・製作)と故ハンターS・トンプソン(原作)のコンビによる最新作。

『ラスベガスをやっつけろ』が大好きで、
何十回・何百回と観た自分としては、
今回の『ラム・ダイアリー』(11)も非常に楽しみだったのですが…。
いざ本編を観てみると、何か物足りなかったなーという印象でした。

映画の内容をひと言で申し上げるなら、
「酔っぱらいジャーナリストの南米珍道中」という感じなのですが、
何しろ前回の『ラスベガスをやっつけろ』がああいう調子だったので、
あれと比べると酔っぱらいの珍道中というにはそれほどハチャメチャではないし、
胡散臭いアメリカ人実業家(アーロン・エッカート)にケンカを売る展開もイマイチ迫力に欠ける。
原作者トンプソンの分身とも言える主人公ポール・ケンプに関しても、
この頃はまだトンプソンも若くて大人しかったのか、
あるいはテリー・ギリアムに比べるとブルース・ロビンソン監督は真面目な人だったのか、
ハメを外しきれていないという感じ。

続きを読む

仙台市内の『Like the Weather』『6 & One』+『A Celtic Romance』取扱い店

ACR_Deux

ただいま絶賛発売中のマイケル・ダナ&ジェフ・ダナ兄弟によるケルト音楽アルバム『ケルティック・ロマンス』。仙台市内ではCDショップよりも、どちらかというと独自の世界観やこだわりを持ったオシャレカフェ/ユニークカフェでの店頭販売に力を入れております。

それはまぁ単に僕がカフェ好きだからという理由もありますが、カフェのオーナーさんには音楽通な方が多くて、僕が「食事しに来たフツーの客」として会話のネタで「この人はこれこれこういう音楽をやっていて…」とアーティストのバックグラウンドを説明して、彼らの音楽がオーナーさん方のツボにハマったりすると、「このアルバムいいな!気に入ったから店で置いてやってもいいぜ!」と何とも有難い事を言って下さるのです。で、こうして皆さまのご厚意に甘えさせて頂いて今日に至ると。

というわけで、前回「Cafe & Dining Bar MORADO」でチャーリーさんの『ライク・ザ・ウェザー』とエリオットさんの『シックス・アンド・ワン』を取扱ってもらえるようになりましたーとお伝えしましたが、さらに本町のカフェ「Cafe et Bar Deux」さんでもウチのレーベルのアルバムを取扱ってもらえる事になりました。

続きを読む

マイケル・ダナ名作選 / ニュースの天才 -Shattered Glass- (2003)

shattered glass

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、
マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。

今回はマイケルの作品から『ニュースの天才』(03)をご紹介します。

アメリカの由緒ある(らしい)政治雑誌『ニュー・リパブリック』の若手人気記者スティーヴン・グラス(ヘイデン・クリステンセン)が、
過去複数回に渡って記事を捏造していたという実話を元にした映画。
ヘイデンは「救いようのない嘘つきなのに、人当たりが良くてイケメンなのでつい周りもダマされて甘やかしてしまう」という、
同性からするとかなりイヤな男を好演。
『スター・ウォーズ』のep2と3でラジー賞を受賞してしまったヘイデンですが、
本作ではその汚名返上を果たしております。
この人いい役者だと思うんだけどなぁ。『アウェイク』(07)もよかったし。

ちなみに雑誌編集長のチャックを演じたピーター・サースガードは、
この映画でインディペンデント・スピリット賞とゴールデン・グローブ賞の助演男優賞の候補になり、
全米批評家協会賞で同賞を受賞しました。
相変わらず堅実な芝居をしてます。

さて本作の音楽についてなのですが、
サントラ盤のブックレットにビリー・レイ監督が寄稿したライナーノーツが載っておりまして、
まずこの内容が結構スゴイ。
何しろ書き出しが「マイケル・ダナは私をマヌケ野郎だと思った事だろう」ですから。

続きを読む