マイケル・ダナ名作選 / ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日 (2012)

life of pi

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。

今回は「いま書かないでいつ書くんだ」という事で、マイケル初のオスカーノミネートとなった『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』(12)をご紹介します。

アン・リーが単なるサバイバル映画を撮るわけがないとは思っていましたが、これほどまでに暗喩に満ちた、宗教的な思想を問う内容だったとは。何を書いてもネタバレになりそうなので、物語の解釈についてはここで触れない事にしておきます(僕自身100パーセント話を理解したわけではないから、という理由もありますが)。

続きを読む

マシュー・マコノヒーのダークサイドが炸裂する怪作『キラー・スナイパー(原題:KILLER JOE)』

ウィリアム・フリードキン監督が放つ異色スリラー(というかダークコメディでもある)『KILLER JOE』(12)が『キラー・スナイパー』というズレた邦題でDVDスルーになりました。

この映画、スナイパーなんか出て来ません。
タイトルロールの悪徳警官ジョー(マシュー・マコノヒー)も狙撃銃なんか持たないし、そもそもガンアクション・シーンもありません。

多くの人が「何でこんな邦題になったんだよ!」と憤慨しているようですが、おそらく発売元が「何か地味な映画だから、タイトルを”キラー・スナイパー”にして、アクション映画と勘違いして製品を手に取ってもらえるようにしよう」…と考えたのではないかと思われます。

ちなみに『KILLER JOE』は、トレイシー・レッツ(『BUG/バグ』(06)の原作者)の戯曲を映画化した作品です。観ていて「地味」と思ったら、それは「舞台劇が原作だから」ということなので念のため。

続きを読む

TAKEN 2 -96時間 リベンジ-

taken2

自分は前作『96時間』(08)がすごく気に入っているので、
続編『96時間 リベンジ』(12)は期待半分・不安半分で観に行きました。
しかしいざ本編を観てみたら、続編とはいえまあまあ楽しめたのでひと安心。

ブライアン(リーアム・ニーソン)の親バカぶりは今回も健在ですが、続編ではそこに「元妻(ファムケ・ヤンセン)にも未練タラタラ」という要素が加わり、「俺の家族に手ェ出す奴は全員ブッ殺す!」的な家族ヒーローっぷりに磨きがかかりました。前作のパリに続いてイスタンブールの街を破壊しつつ、至る所でリーアム無双を繰り広げる事になります。

個人的にツボだったシーンは以下の通り。

続きを読む

『フランケンウィニー』のサントラ盤について

frankenweenie

さて『フランケンウィニー』(12)の音楽についてなのですが、僕は今回サントラ盤のライナーノーツを担当させて頂いたため、ここでダニー・エルフマンの音楽についてこと細かに書いてしまうと、「ライナーノーツの意味ないじゃん!」という事になってしまうのです。

なので、補足的な事をサラッと書かせて頂く事にします。

続きを読む

トーマス・ニューマンの『007 スカイフォール』の音楽はよく出来ていると思うの巻

skyfall

金曜に『007 スカイフォール』(12)のサントラが届いたので、
週末に延々と聴きまくってました。
音楽はサム・メンデス監督のお気に入り、トーマス・ニューマン。

ワタクシはトーマス・ニューマンの音楽が好きなので、
アメリカ人の彼があの007の音楽担当に抜擢されたというのはかなり感慨深いものがありました。
アメリカ人作曲家の起用は『消されたライセンス』(89)のマイケル・ケイメン以来になりますかねー。

トーマス・ニューマンとアクション大作(しかも007シリーズ)というのがなかなか頭の中で結びつかなかったのですが、
なるほどこう来たかと。
『スカイフォール』の前にロマンティックSFサスペンスの『アジャストメント』(11)と、
スパイスリラーの『ペイド・バック』(11)の音楽を担当したのがいい準備運動になったようです。

続きを読む