LOST:Season 1の音楽

先月からAXNで『LOST』第5シーズンの放送が始まったわけですが、いやーシーズン4も
そうでしたが、なかなか快調な滑り出しじゃありませんか。

映画の場合、その作品が面白いかツマラナイかは最初の20分くらいを見れば大体分かると
言いますが、TVシリーズの場合は第1話・2話の内容や展開で、そのシーズンが面白いか
ツマラナイか判断出来るような気がします。そういう意味では、今回の『LOST』はこれからの
展開に期待が持てそうな感じです。

実はワタクシ、『LOST』のシーズン1と2のサントラ盤にもライナーノーツを書かせて頂いて
おりまして、その関係で『LOST』とは長ーいお付き合いがあったりします。

8/26にランブリング・レコーズさんからリリースになる『LOST:シーズン4』のライナーノーツも
自分が担当する事になったため、先月はシーズン4の音源を聴きつつDVDをレンタルしまくって
延々「おさらい」をしておりました(どの曲がどの話のどの場面で使われたかを再確認する
必要があったので)。

・・・というわけで、シーズン4のサントラ・リリースまでの間に、これまでのシーズンの音楽を
ざざーっと振り返ってみたいと思います。

シーズン1は第1話(いわゆるパイロット版)から凄かった。TVドラマとは思えないほどリアル
だったオーシャニック航空815便の墜落現場のシーンにも驚かされましたが、その場面で流れる
スコア”World’s Worst Beach Party”(←ブラックユーモアのキツいタイトルです)や、謎の
怪物の初登場シーンのスコア”Run Like, Um… Hell”の迫力がまた凄かった。

実は『LOST』の音楽は全編ナマのオーケストラで演奏されてます。やっぱりシンセ・ストリン
グスとフルオケでは、音の厚みや奥行き感が全然違いますね。

基本的にTVドラマの音楽は、予算と製作期間の関係上、シンセを使った打ち込み主体の
スコアになるわけですが、『LOST』のシーズン1ではヴァイオリン26、ヴィオラ16、チェロ10、
コントラバス4、トロンボーン10、ハープ4、ギター3、パーカッション3というかなり贅沢なオケ
編成でスコアを演奏しているのです。

さすが『メダル・オブ・オナー』シリーズでもフルオケ音楽を鳴らしたマイケル・ジアッキノ。
『LOST』でもこだわりのオーケストラ・スコアを聴かせてくれてます。

シーズン1のサントラ盤には『LOST』のメインテーマ”Hollywood and Vines”や「生存者たちの
テーマ」とでも言うべき”Win One for the Reaper”、サンのテーマ”Departing Sun”、ジョン・
ロックのテーマ”Crocodile Locke”など、シリーズを通して使われているメロディーをモチーフに
したスコアが全27曲/65分収録されています。

どれも聴き応えがあるのですが、筆者的にはジアッキノ本人も一番気に入っているエピ
ソードという第23話「迫りくる脅威」のスコア”Parting Words”(ソーヤーたちのイカダが島を
発つシーンの曲)をベストに挙げたいです。

(つづく)

サントラ盤はランブリング・レコーズから発売中。

『LOST』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マイケル・ジアッキノ
品番:GNCE3057
定価:2,625円

 

MILK BOSSA in MOVIES

先日、いつもお世話になっているフレイヴァー・オブ・サウンドさんから
MILK BOSSAシリーズの最新作『MILK BOSSA in MOVIES』を送ってもらいました。

ちょうどCDを送ってもらった前日が誕生日だったので、何だかサプライズ・プレゼントを
貰ったような感じでちょっと嬉しかったです(ま、これは単なる偶然だったんですけど)。

今回のMILK BOSSAのアルバムテーマは、「映画音楽ヒット・ソングのボサノヴァ・カヴァー」。
「懐かしの(主に80年代の)映画主題歌」を「ボサノヴァ」で聴かせるという、ある意味実に
手堅いというか、いいとこどりのコンセプト・アルバムと言えるでしょう。

収録内容はと申しますと、古いところでは『卒業』(67)の”Mrs. Robinson”(サイモン&ガー
ファンクル)。新しいところでは『バットマン・フォーエヴァー』(95)の”Kiss from A Rose”
(シール)や『ユー・ガット・メール』(98)の”Dreams”(クランベリーズ)など。あとは80年代の
映画主題歌/挿入歌がメインです。

『トップガン』(83)の”Take My Breath Away”(ベルリン)とか『フラッシュダンス』(83)の
“What A Feeling”(アイリーン・キャラ)、『ビジョン・クエスト 青春の賭け』(85)の”Crazy for
You”(マドンナ)、『ネヴァー・エンディング・ストーリー』(84)の”The Never Ending Story”
(リマール)などなど。いやー、この前MTVの「100 Greatest Songs of the 80s」で見た
(聴いた)ようなアーティストの名前が次から次へと出て来て懐かし面白いです。

個人的に注目したのは、Depeche Modeの”Just Can’t Get Enough”(1982年の映画『青い
恋人達』挿入曲)のカヴァー。原曲はバリバリのシンセ・ポップでしたが、ボサノヴァにすると
こうなるのねー、という新鮮さがありました。始めはディペッシュ・モードの曲だと気付かなくて、
「この曲どっかで聴いた事あるんだけどなー。何だったっけ?」などと思ってしまいました。

このラインナップを原曲でまとめて聴くとなると、ちょいとベタで気恥ずかしい感じなのですが、
ボサノヴァ・カヴァーする事によって、コッテリした80年代テイストが絶妙なバランスで中和され、
爽やかな口当たり(耳当たりと言うべきか?)の曲に仕上がっているのがポイント。オシャレです。

まさに「日本の夏、MILK BOSSAの夏」って感じで聴かせて頂いてます。
寝苦しい夜のBGMに最適。

『MILK BOSSA in MOVIES』
レーベル:フレイヴァー・オブ・サウンド
品番:PUCY-1069
定価:2,000円

  

ディズニー presents 『ボルト』

8/1からディズニー映画『ボルト』(08)が公開になります。

ワタクシがマスコミ試写に行ったのは4月22日で、その時はまだ日本語吹替えの
キャストが決まっていなかったのですが、うーん、こういう顔ぶれになるのか…。

個人的には、字幕版での鑑賞をオススメします。なぜかというと、まず主人公のわんこ
「ボルト」の声をアテているのがジョン・トラボルタだから。飼い主のペニーひと筋の一途さ
とか、ボルトのナイーブな一面をあのソフトな声で表現していて実にいい感じなのです。

あと、ノラ猫のミトンズの声をアテたスージー・エスマン(TVシリーズ『ラリーのミッドライフ★
クライシス』の人)の演技がこれまた巧い。ひねくれ者だけど愛嬌があって、意外と親切な
一面も持ち合わせているミトンズのキャラを完璧に表現しています。日本語吹替えを担当
する某女優の声と演技では、ちょっとミトンズの魅力とは違うような気がするんですよねー。
やっぱりこういうキャラは本職の声優さんに演じてもらわないと。

幸い『モンスターvsエイリアン』(09)と違って、東京都内では字幕版が上映されている映画館も
結構多いようなので、ぜひぜひ字幕版でお楽しみ頂ければと思います。

肝心のお話はと申しますと、外の世界を知らないまま、ハリウッドの撮影スタジオの中で
育てられたスター犬「ボルト」の冒険物語ということで、ひと言で申しますと『トゥルーマン・
ショー』(98)のわんこ版という感じです。

「現実世界ではダメダメ犬」のボルトが冒険を通して立派に成長する物語・・・ではなくて、
ドクトクな環境で育てられたボルトが「フツーの犬のシアワセ」を掴む過程を描いた物語でした。
視聴率第一主義のTV業界への風刺なんかは、ドリームワークスのアニメだったらもっと
ブラックユーモアを交えて描いたと思うのですが、そこはディズニー映画。毒気はほどほどに
「愛・友情・優しさ」をテーマした、子供も安心して観られる作品に仕上がっています。

ま、そこに物足りなさを感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、戦闘ヘリや戦車が登場する
劇中ドラマ『ボルト』の気合いの入ったアクション描写は大人も結構楽しめるのではないかと。
悪役のマッド・サイエンティストの声はあのマルコム・マクダウェルだし。

TVディレクター役が『アクターズ・スタジオ・インタビュー』のジェームズ・リプトン氏っていうのも
異色の配役です。言われないとなかなか気付かないなー、コレは。

さて本作の音楽はジョン・パウエルが担当してます。作曲時期が『ハンコック』(08)と重なって
いたのか、使用する楽器(ギター、ダルシマー、チェレスタ、ハーモニウム等)の構成にいくつか
共通点が見受けられます。とはいえ、アクション・スコアでは打楽器を鳴らしまくり、ドラマ・スコア
では流麗なメロディーで聴かせる、というパウエル節を存分に楽しめるのでなかなかよい感じです。

劇中ドラマ『ボルト』のアクション・シーンの音楽などは、ほとんど『ジャンパー』(08)とか
『Mr. &Mrs.スミス』(05)のノリで、子供向けアニメの音楽とは思えない仕上がり。これが
なかなか聴き応えがあるのですが、残念なのはアクション・スコアの一番オイシイ部分が
アルバムに収録されてないんですよね・・・。これだけは何とかしてほしかった。

サントラにはジョン・トラボルタとペニー役のマイリー・サイラスが歌う主題歌”I Thought I Lost
You”が収録されていますが、これがまたいい曲なんだな。トラボルタの声が若い!そして相変わ
らず歌が巧い! この曲が流れるエンドタイトルの映像も可愛らしいアニメーションに仕上がって
いるので、映画が終わっても席を立たずに曲とアニメを楽しんで頂きたいと思います。

国内盤はエイベックスから本日発売。歌詞・対訳もついているのでお買い得です。
ジャケットも日本盤の方が可愛らしい感じですしね。

『ボルト』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ジョン・パウエル他
品番:AVCW-1235
定価:2,600円
  

  

高野寛さんのステージ(@勾当台公園)

今日はTBC夏まつりのEASTステージのトリで高野寛さんのライヴがあるというので、
勾当台公園に行ってきました。

午後から大雨というガッカリな天気だったのですが、ちょうど高野さんのステージが
始まる頃に雨がやみました。いやー、これはかなりラッキーでした。

さて肝心のライヴはと申しますと、ギター弾き語り形式で全8曲を演奏しました。
曲目は以下の通り。

– リハーサル –

1. 風をあつめて
2. 上を向いて歩こう

– 本番 –

3. 相変わらずさ
4. See You Again
5. Black & White
6. 虹の都へ
7. ベステンダンク
8. 確かな光

それにしても高野さんは若々しいなー。見た目も声も昔とほとんど変わっておらず、ギター片手に
熱唱する姿は「永遠の音楽少年」という感じでした。

「まだリハーサル中でーす」と言いつつカヴァー曲を2曲演奏したり、「相変わらずさ」の歌詞を
今日の天気やイベントに合わせて即興(?)で改変したり、30分強のステージながら非常に
充実した内容でございました。

ステージの写真を撮りたかったところなのですが、「ビデオ・カメラ撮影禁止」というプラカードを
持ったスタッフが横に立っていられると、やっぱりカメラは出しにくかったので断念しました。
ま、当日の高野さんの勇姿は「心のカメラに焼き付けておく」って事で。

代わりに載せた写真は、以前弾き語りツアー『Ride on Tide』で仙台に来た時に高野さんに
サインしてもらったアルバム『Tide』のジャケット。あのライヴもよかったなぁ。

新曲のシングル『LOV』、『Black & White』も最高にいい曲だし、何だか自分の中で久々に
「高野寛」熱が燃え上がって参りました。

11月のライヴも楽しみです。

  

MIRRORS

カードの更新期限が近かったので、近所のTSUTAYAに行ってきたところ、
『ミラーズ』(08)のDVDが置いてあったので借りてきました。

この映画、去年映画館で1回見てるんですけどね。今度はストーリーを追うだけじゃなくて、
プロットとか背景の細かいところまでじっくり見てみようと思ったわけです。

例えば映画館で見た時、子供部屋に「魔法先生ネギま!」のタペストリーが貼ってあったのは
確認出来たのですが、もう一つは何だったかなーと気になってまして、DVDで見たら「ツバサ
クロニクル」だった事が判明しました。誰の趣味だコレ? 数ある日本のアニメの中から、あえて
この2つを選んだマニアックなセンスが秀逸です。

映画本編は皆さんが既にwebとかで書かれている通り、「ジャック・バウアー vs. 悪霊のガチンコ
一本勝負」というひと言で説明がついてしまいます(日本語吹替えも小山力也氏ですし)。

キーファー・サザーランド扮する主人公ベンが”Damn it!”と悪態をつくシーンとか、捜査に入れ込む
あまり暴走するシーンとか、家族を悪霊の魔の手から助けるために「エシィカー」に銃を突きつけて
協力を強要するシーンなどは、まんまジャック・バウアーです。さすがに「君をこんな事に巻き込んで
しまって、本当にすまないと思っている」みたいなセリフは言いませんでしたが。

でもまぁ、映画自体がパワフルな演出でガンガン押していくタイプの物語なので、キーファーの
熱血演技もドラマの展開とマッチしていて違和感はないです。

監督/脚本はアレクサンドル・アジャ。あの『ハイテンション』(03)の監督・・・というとちょいと印象が
悪いですが(アレはトンデモオチで映画をブチ壊しちゃったからなぁ)、今回はアジャ印の比類なき
残虐描写とパワーで押す演出、トラウマティックな心理描写が絶妙なバランスで成立しており、
成長の跡が伺えます。オチもなかなかいい感じで纏まってますしね。

ハリウッド進出後は、『ヒルズ・ハブ・アイズ』(06)と『P2』(07)でTOMANDANDYに音楽を依頼して
いたアジャですが、今回音楽を手掛けたのは『パンズ・ラビリンス』(06)のハビエル・ナバレテ。
これもなかなかマニアックでナイスな人選です。

演奏はプラハ・フィルで、重厚なオーケストラ・サウンドでどどーっと聴かせるタイプの音楽です。
映画のメインテーマにスペイン人作曲家イサーク・アルベニスの”Asturias”を引用しているのが
ポイントでしょうか。ナバレテも同郷の音楽家なので、彼なりにいろいろ考えてこの曲を選んだん
だろうと思います。ピアノやギターで弾かれる事の多い曲ですが、フルオケで演奏されるとまた
違った趣がありますな。

CDはLakeshore Recordsの輸入盤で購入可能。”Asturias”に加えて、ナバレテが作曲した
メロディアスなテーマ曲があと1つ2つほどあれば、もっと面白いサウンドトラックになったと思うん
ですけどねー。いや、かなりクオリティの高いサントラだとは思うのですが、せっかくあの『パンズ・
ラビリンス』の作曲家を起用したのですから、もっとナバレテらしい濃厚さを出してほしかったなー、
と思うわけです。個人的には。

最近のホラー映画は、70年代や80年代に作られたものと違って、印象的なメロディーを聴かせる
作品はあまり見かけなくなってしまいました。そういう風潮なのかもしれませんが、サントラ愛好家
としては寂しいものがありますな。

ちなみに”Asturias”はこんな感じの曲です。
(演奏:John Williams)