『トップガン マーヴェリック』のサントラ盤を聴きながら5ヶ月近く過ごしたので、音楽をじっくり分析してみた。

11月2日に『トップガン マーヴェリック』(22)のブルーレイ&DVDが発売になります。

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このブログで何度も書いていますが、ワタクシ若い頃に映画館でインフルエンザをうつされて1ヶ月近く死ぬほど苦しんだ経験をして以来、インフルや新型コロナのようなはやり風邪や感染症が蔓延している時は映画館に行くのを避けるようになりました。
したがって『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(21)も『DUNE デューン/砂の惑星』(21)も映画館で観たかったけど、どうしても及び腰になってしまい、ブルーレイとかデジタル配信、衛星放送で観られるようになるまでじっと我慢したのでした。

『トップガン マーヴェリック』も映画館の大画面で観たかったんですけどね…。一人暮らしで自由に過ごしていた若い頃と違って、家族のこととかも考えなくてはならなくなったので、結局デジタル配信で鑑賞しました。
映画評とか関連記事とか情報を一切遮断して何ヶ月も過ごすのは実に厳しかったですが、インフルで悶絶した時のように、新型コロナに罹患して家族に迷惑かけたら一生後悔しますから、まあ仕方がありません。

そんなわけで5ヶ月近くサントラを聴いてから映画本編を鑑賞したので、「なるほど今回の『トップガン』の音楽はこういう風にバージョンアップしたのか」と楽しむことが出来ました。せっかくなので当方の分析をブログに書いてみたいと思います。ちなみにワタクシは国内盤サントラを買いました(ボーナストラックでスコアが1曲多かったので)。

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まず今回の音楽担当のクレジットですが、

Music by Harold Faltermeyer, Lady Gaga, Hans Zimmer
Score Produced by Lorne Balfe

…と、なかなかすごいことになっております。
本作のスコアはフォルターメイヤーが第1作で作曲した”Top Gun Anthem”のフレーズと、ガガの主題歌”Hold My Hand”のフレーズをほぼメインテーマとして使用しているので、ジマーさん以外の二人も「スコアの作曲者」というクレジットに値する働きをしたということなのでしょう。
かつて映画主題歌というのは「映画のメインテーマに歌詞をつけたもの」でしたが、本作の場合は「テーマソングのメロディをスコアに組み込む」という作り方をしている。その結果、スコア(劇伴)と主題歌に統一感が生まれたと言えるのではないかなと。

そして今回のスコアは上記の4人以外に、追加音楽でデヴィッド・フレミング、アンドリュー・カウィンスキー、スティーブ・マッツァーロ、追加編曲でマックス・アルジ、シュテフェン・トゥームら合計6人の名前がクレジットされていて、リモート・コントロール・プロダクションズ軍団が大挙参加という布陣になってます。ぱっと見、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ並みの参加人数では? という感じ。

ローン・バルフの海外インタビュー記事などに目を通してみると、どうも本作のレコーディングもCovid-19パンデミックのロックダウンの影響を受けたらしく、一部ミュージシャンの演奏などをリモートで行ったらしい。だから作曲とか手直しとかレコーディングとかミックスなどの作業も分業を余儀なくされ、RCPの弟分を総動員しなければならなくなったのでしょう。

ジマーさんが自作でRCPの弟分を動員してスコアを作曲させる手法は賛否分かれていますが、コロナ禍でのレコーディングにおいては実に効率よく作業を進められる結果になったというわけですね。

バルフは”Score Produced”というクレジットになっていますが、たぶんスコア作曲の総仕上げ的な仕事を担当したんじゃないかと思います。
近年のジェリー・ブラッカイマーは自身の製作した映画でバルフを贔屓にしているし(『ホース・ソルジャー』(18)など)、製作と脚本に『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(18)のクリストファー・マッカリーも名を連ねているから、二人ともバルフに全幅の信頼を寄せていると思うのです。
まあバルフの仕事が多めだったとしても、近年すっかり巨匠になって、娯楽アクション映画の作曲機会が減ったジマーさんを再びこのジャンルに呼び戻した働きは評価されて然るべきではないかとも思います。

ワタクシはジョセフ・コシンスキー監督の作品は全て観ているのですが、『トロン:レガシー』(10)の音楽にダフト・パンクを抜擢したセンスはもちろん、『オブリビオン』(13)の原作を執筆中にM83を聴いていて、映画化の際にそのままM83にスコア作曲を依頼した話とか、この方はなかなか音楽のセンスがいいなと思っておりました。

それは挿入歌のセンスについても言えることで、『オブリビオン』でのプロコル・ハルム「青い影」の使い方と選曲理由(ブルーレイのオーディオコメンタリーで聴けます)には大いに唸らされました。


『オンリー・ザ・ブレイブ』(17)ではいかにも体育会系の消防隊員が聴いていそうなロックをいろいろ使っていて、現場で身体を張る男たちの豪放磊落な性格がよく表現されてたような印象を受けました。

だから今回の『トップガン マーヴェリック』も前作からどの曲を使って、どの曲は使わないのかという選択とか(「火の玉ロック」は使うけど「ふられた気持ち」は使わない、など)、ペニーのバーで80年代の懐メロがガンガン流れている設定とか、訓練中にザ・フーの”Won’t Get Fooled Again”(ブラッカイマー製作の『CSI:マイアミ』(02~12)でもおなじみ)を使うセンスとか、なかなかグッと来るものがありました。


コシンスキー監督の80年代音楽好きは、ホール&オーツやロキシー・ミュージックなどが流れまくる『スパイダーヘッド』(22)でさらにパワーアップするわけですが。

80年代洋楽好き的にも、コシンスキー監督作品から今後も目が離せないなと思いました。

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