『フランケンウィニー』のこと

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『ダーク・シャドウ』(12)について書いた時にも言いましたが、『エド・ウッド』(94)以降のティム・バートンは、ヒットメーカーとしての地位を築いてしまって、自身のアイデンティティーについて悩まなくなったので、結果として作品自体にも初期のようなキレがなくなってしまったように思うのです。
なのでバートンの新作が公開になっても、「初期作品ほどの出来じゃないだろうけど、まぁ観てみようかな」という感じでさほど期待せずに観に行く事が多くなったような気がします。

しかし今回の『フランケンウィニー』(12)は1984年製作の同名実写短編映画をストップモーション・アニメでリメイクした作品なので、初期作にあった「出自や見た目がヘンというだけで周囲から誤解を受ける者の悲哀」というテーマも比較的しっかり描かれていたと思います。

30分の短編を87分にするのですから、あちこち脚色してボリュームアップを図っているわけですけれども、「事故死した愛犬を科学の力で甦らせた結果、フラン犬の登場で小さな町が大騒ぎ」という原作ストーリーの骨組みとなる部分はリメイク版でも変わらず。映画の最初と最後がオリジナルと(ほぼ)同じ展開で、中間に怪物が続々登場する追加エピソード(ほとんどバートンの趣味の世界)を挟み込んでいる感じ。

セルフリメイク作品だけあって、ペット墓地の風景とか、ヴィクター少年の屋根裏部屋の小道具などをかなり忠実に再現してます。特にヴィクターがスパーキーを甦らせる時に使う実験装置のデザインは必見。実写版の装置を細かいところまで完全再現してます。物分かりのいい大人(主人公ヴィクター少年の両親とか科学のジグルスキー先生)が何人か登場するところが、ちょっと昔と傾向が変わった最近のバートン映画らしい点と言えるかもしれません。

それにしても、登場人物のキャラデザ(ギョロ目で手足が細長い)がいかにもバートンという感じで、ファンにはたまらんものがあります。ヴィクター・フランケンシュタインと、ウィノナ・ライダーが声をアテたヒロイン(一応)のエルザ・ヴァン・ヘルシングはまだフツーですが、予告編でも抜群のインパクトを残す「エドガー」と「フシギちゃん」のデザインが何ともキョーレツ。

カジモド的な風体のエドガーは、フルネームをEdgar “E” Goreと言いまして、エドガー・イー・ゴア→イー・ゴーア→イゴールというわけで、『フランケンシュタインの復活』(39)でベラ・ルゴシが演じていたあのキャラクターがモデルと思われます。

フシギちゃんは原語でも”Wired Girl”という表記なので、直訳でフシギちゃん。飼っているネコの「おヒゲくん」が後半とんでもない事になるので、ネコ好きの方は覚悟してご鑑賞を(…というほど大げさなものでもありませんが)。

アリクイ的な顔立ちが可愛いのかブキミなのかビミョーなフラン犬・スパーキーも、動作が愛くるしいので、映画の後半になる頃には可愛く見えること間違いなし(多分)。ちなみにスパーキーの目の回りのクマは「フラン犬」になる前からあります(笑)。別にゾンビ犬になって目つきが悪くなったわけではないのであしからず。

僕が観た内覧試写は字幕・2D版でしたが、「モノクロ3D」というのをぜひ体験してみたい…のですが、どうも「字幕2D」と「吹替え3D」の2つしか選択の余地がないっぽい…(泣)。

この映画の日本語吹替えは一部キャラにタレントを使っているそうなので、個人的には字幕版での鑑賞をオススメしたいところです(まぁ脇役だけで済んだのは不幸中の幸いですが…)。ウィノナ・ライダーやマーティン・ランドー、マーティン・ショート(『マーズ・アタック』(96)の軽薄な報道官役の人)、キャサリン・オハラ(『ホーム・アローン』(90)のお母さんの人)など、原語の声優陣も豪華ですので。特にショートとオハラは一人で3役くらいこなしてますので、彼らの話芸は聴きどころかと。

字幕で3Dを観たっていいじゃないかぁぁ、と思う今日この頃です。

音楽についてはまた次回。

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