『L.A.ギャングストーリー』の音楽

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というわけで前回の続き。
『L.A.ギャングストーリー』(12)の音楽についてでございます。

この作品、当初は音楽担当がカーター・バーウェルとアナウンスされていたのですが、最終的には『トランスフォーマー』シリーズでおなじみのリモート・コントロール(以下RC)所属アーティスト、スティーヴ・ジャブロンスキーがスコアを手掛けました。

この作曲家交代劇については2つのパターンが考えられまして、まず1つめは試写の段階で不評だったので、バーウェルのスコアがリジェクトされてしまったというパターン。

そしてもうひとつは、後半のガンアクション・シーンの舞台を映画館からチャイナタウンに変えて撮り直した(←コロラド州の映画館での銃乱射事件への配慮)ため、バーウェルのスコアと尺が合わなくなって、スコアの再録音を頼もうと思ったら、スケジュールの都合でバーウェルが登板出来なくなって、ジャブロンスキーに一から曲を書き直してもらったというパターン。

このどちらかだと思うのですが、バーウェル降板のニュースが報じられた時期と、映画の一部シーン撮り直し&公開延期が報じられた時期のどっちが先だったか分からないので、どっちの理由だったのかは不明です。DVD/BDがリリースになって、監督の音声コメンタリーが収録されれば真相が明らかになると思いますが。

まぁ結論から申しますと、ジャブロンスキーのスコアで正解だったと思います。バーウェルの音楽はどことなくアート系の香りがするので(『ジャッカル』(97)みたいな音楽も書ける人ですが)、完全に娯楽映画に徹した本作の場合、RC仕込みの「燃える音楽」に定評のあるジャブロンスキーのスコアの方が、しっくり来るように思うのです。

デイヴ・グルーシンやゴールドスミスは『狼たちの街』(96)や『L.A.コンフィデンシャル』(97)でジャズの要素を取り入れたスコアを書いていましたが、本作のジャブロンスキーは、ことさら時代考証に囚われず、オーケストラにシンセを組み合わせたいつものRC系サウンドを聴かせてくれています。果たしてハット・スクワッドの世界観にRC系のサウンドは合うのか?という事になるわけですが、これが意外と合うのが本作の面白いところ。ジャブロンスキー曰く、「現代的なサウンドに近づけながら、時代性のあるリズムや楽器を取り入れたスコアを」という音楽の方向性でルーベン・フライシャー監督と意見が一致したのだとか。

確かにそう言われてみれば、シンセや重低音を効かせた音作りはRC系のモダンな音楽ではあるのですが、ずっしり重たい律動部やギター、サックス、ハーモニカの音色はどこか古風な味わいがあるような気がします。いやこれ、近年のジャブロンスキー作品の中でも(やや通好みですが)かなりの力作ではないかと思います。言うなれば「ネオ・ハードボイルド」な音楽。ジマーファン&RCサウンド・ファンなら”買い”ですね。

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