ハリウッド版『オールド・ボーイ』はココが違う! 見どころ(のようなもの)紹介の巻

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『ニード・フォー・スピード』(14)の試写の前日、
都内某所で『オールド・ボーイ』(13)の試写を観てきました。
どちらもサントラ盤のお仕事での試写です。

アメリカでこの映画が公開になった時の評価があまり芳しくなくて、
「ひょっとしてダメなリメイクなのか…?」と若干不安だったのですが、
ネットで見聞きした評判よりもよく出来てるじゃありませんか。
米韓の文化の違いや倫理観の違いを、
いい感じにアレンジしているのではないかと思いますよ。
ワタクシ思わず本編に引き込まれてしまいました。

というわけで、ハリウッド版の見どころをご紹介したいのですが、
この作品、韓国版を未見の方は予備知識ゼロで観た方が楽しめるんですよね…。
まぁ極力ネタバレしない程度にあれこれ書いてみようかなと思います。

まず主人公ジョー(韓国版でいうところのオ・デス)の監禁期間が、
韓国版からプラス5年の20年になりました。
これは何でかなーと思ったのですが、
アメリカの法廷だと「懲役30年」とか「懲役50年」という判決が出ることが多々あるので、
恐らく韓国版のまま15年だとインパクトが弱かったためではないかと。
あとこれは詳しく書くとネタバレになりそうなので詳細は割愛しますが、
「プラス5年」という絶妙な追加年数がまぁよく考えてるなー、と。
映画のラストを見れば、当方の言わんとすることが何となく分かって頂けるかと思います。

水槽のタコを覗くジョー (しかしタコは食わない)
水槽のタコを覗くジョー
(しかしタコは食わない)

そして今回の主人公はタコを食いません。
水槽の中にいるタコをのぞき見るだけ。
これはまぁアメリカでタコを食う習慣がないという食文化の違いと、
「魚介類の躍り食いや活作りはNG」というモラル的なものがあるのでしょう。
しかし「監禁場所特定・餃子食べ歩きの旅」のシーンは忠実に再現されてます。
中華のデリバリーがアメリカでもファーストフードとして定着していることが分かるひとコマです。
このあたりはアメリカの食文化が垣間見えて面白いのではないでしょうか。

物語の本筋に絡むところで大きく変わったのは、
韓国版に登場した催眠術師のくだりがばっさりカットされたことでしょう。
ワタクシ韓国版を観た時に、
「実は催眠術をかけられてました」と言われちゃったらオシマイだよね…と、
いまひとつ納得がいかなかったので、
個人的にリメイク版のこの脚色は正解だったのではないかと思います。

カルト俳優まっしぐらのシャールト・コプリー
カルト俳優まっしぐらのシャールト・コプリー

その代わり復讐者のエイドリアン(韓国版のウジン)は、
財力にモノを言わせてあらゆる小道具や手下の人間を使い、
あの手この手でジョーを”翻弄”し、そして”誘導”します。

この”誘導”というのがポイント。
エイドリアンからすれば、
「自分は誘導しただけで、最終的にその行動を選択したのはお前自身だよ」
…という理屈になるわけで、
やがて訪れる衝撃の結末も、そこに至る過程も、
全てジョー自身の選択の結果なのだという残酷な展開が待っているのです。
催眠術師のせいにも出来ず、
助けを求めることも出来ないわけですから、
ある意味、これは韓国版よりもシビアな展開ですね。。

で、そのエイドリアン(シャールト・コプリー)の忌むべき過去にも変更点があるのですが、
これは詳しく書いてしまうとネタバレになるので内緒。
コプリーの粘液質な演技が薄気味悪いです。

今回のリメイク版は、
「過去の罪の償い、復讐とその代償」といったテーマの他に、
「子供を幸せにするのも不幸にするのも親次第」
…という裏テーマが強調された脚色になっている気がしました。
社会派スパイク・リーの面目躍如といったところでしょうか。
(脚本はマーク・プロトセヴィッチだけど)

『ファイナルファイト』風横スクロールアクション殺陣は今回も健在。
『ファイナルファイト』風横スクロールアクション殺陣は今回も健在。

あとは主人公のモノローグが大幅にカットされているのがよかったかな、と。
ジョシュ・ブローリンの鬼気迫る形相が全てを物語っているので、
いちいちモノローグで心情を語らなくても観客には十分意思が伝わると思います。
ブローリンの不敵な面構えと絶妙な脚色によって、
物語の「ハードボイル度」がアップした気がします。
韓国版で話題になった「横スクロール格闘ゲーム」風の殺陣も1カット長回しで再現。
スクロールの向きが韓国版と逆なのと、
こちらは2フロアに渡ってドツキ合いを繰り広げるのがポイント。
リハーサルに6週間かけたという「ブローリン無双」をお楽しみ下さい。

そして韓国版と違う結末という本作のラスト。
是か非かと問われたら、
個人的にはハリウッド版の結末の方が好きです(というか納得出来ます)。
ネタバレしたくないので漠然としたことしか書けませんが、
エンディングの構成や映像がなかなかドラマティックで、
「スパイク・リーって意外とロマンチストな一面があるじゃない?」
…と不覚にも目頭が熱くなりました。
こういうスパイク・リーの映画を観たのは『25時』(02)以来ですね。。

ヒロイン・マリー役のエリザベス・オルセン
ヒロイン・マリー役のエリザベス・オルセン

ヒロインの職業はソーシャルワーカーに変更。
エリザベス・オルセンはこの映画の公開後に『GODZILLA ゴジラ』(14)が控えています。

まぁ決して痛快な話ではないし、
観終わった後にドンヨリした気分になる映画ではありますが、
なかなかパンチの効いた復讐劇でございます。
漫画や韓国版を未見の方はそのまま予備知識ゼロで本作をご覧頂いて、
既に韓国版をご覧になった方は、
リメイク版の変更点に注目しながら、
変更点にケチをつけるのではなく、
そこから文化の違いや倫理観の違いを読み解いていくような感じで、
本作を味わって頂くのがよろしいかと思います。

(つづく)

ちなみにロケ・バニョスの音楽も絶品ですので、
サントラ盤も是非お買い求め頂きたい所存。

 

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