あの「20世紀フォックス映画 75周年記念盤」がDSDリマスタリングで再登場しましたの巻

20thcenturyfox

映画会社20世紀フォックスの75周年を記念して、2010年にVarese Sarabandeからリリースされた3枚組の企画盤、「20th Century FOX: 75 Years of Great Film Music」。
先日ランブリング・レコーズさんから国内盤がリリースされました。
75周年からさらに6年経っての国内盤リリースなので、ある意味80周年記念盤という感じでもありますね(正確には81周年ですが細かいことは気にしない)。

日本サントラレーベルの良心・ランブリング・レコーズさんですから、もちろん輸入盤にオビをつけただけの再発売なんてものではありません。
「サウンドトラック傑作選50」や「サウンドトラック名作選35」でおなじみになった、DSDリマスタリングによる音質向上を行っているのです。
ディスク3枚組で3,000円(+税)だから、1枚1,000円。
ディスク1枚に20曲前後収録しているので、1曲50円の計算になりますね。
しかもリマスター音源。なかなかのお得感ではないでしょうか。

…で、国内盤をリリースするからということで、先方からワタクシにライナーノーツの執筆依頼が来まして、僭越ながらあれやこれやと音楽紹介/作曲家紹介を書かせて頂きました。

 

ディスク1はFOX設立の1935年から1960年まで、
ディスク2は1961年から1985年まで、
ディスク3は1986年から2010年までという25年区切りになっているのですが、
それぞれの収録曲がなかなか面白い。

■ディスク1
1. 20世紀FOXファンファーレ/ アルフレッド・ニューマン
2. イヴの総て / アルフレッド・ニューマン
3. わが谷は緑なりき / アルフレッド・ニューマン
4. 聖処女 / アルフレッド・ニューマン
5. ローラ殺人事件 / デヴィッド・ラクシン
6. 幽霊と未亡人 / バーナード・ハーマン
7. 征服への道 / アルフレッド・ニューマン
8. 頭上の敵機 / アルフレッド・ニューマン
9. 地球の静止する日 / バーナード・ハーマン
10. 革命児サパタ / アレックス・ノース
11. 謎の佳人レイチェル / フランツ・ワックスマン
12. 聖衣 / アルフレッド・ニューマン
13. 炎と剣 / フランツ・ワックスマン
14. 野性の女 / フランツ・ワックスマン
15. 雨のランチプール / ヒューゴ・フリードホーファー
16. 百万長者と結婚する方法 / アルフレッド・ニューマン
17. 七年目の浮気 / アルフレッド・ニューマン
18. 愛の泉 / ヴィクター・ヤング
19. 慕情 / アルフレッド・ニューマン
20. 長く熱い夜 / アレックス・ノース
21. 孤独な関係 / エルマー・バーンスタイン

■ディスク2
1. クレオパトラ / アレックス・ノース
2. 砲艦サンパブロ / ジェリー・ゴールドスミス
3. 猿の惑星 / ジェリー・ゴールドスミス
4. パットン大戦車軍団 / ジェリー・ゴールドスミス
5. トラ・トラ・トラ! / ジェリー・ゴールドスミス
6. フレンチ・コネクション / ドン・エリス
7. ポセイドン・アドベンチャー / ジョン・ウィリアムズ
8. ペーパーチェイス / ジョン・ウィリアムズ
9. コンラック先生 / ジョン・ウィリアムズ
10. オーメン / ジェリー・ゴールドスミス
11. マジック / ジェリー・ゴールドスミス
12. フューリー / ジョン・ウィリアムズ
13. エイリアン / ジェリー・ゴールドスミス
14. ノーマ・レイ / デヴィッド・シャイア(歌:ジェニファー・ウォーンズ)
15. 喝采の陰で / デイヴ・グルーシン
16. ニール・サイモンのキャッシュ・マン / デヴィッド・シャイア
17. ロマンシング・ストーン 秘宝の谷 / アラン・シルヴェストリ
18. コマンドー / ジェームズ・ホーナー

■ディスク3
1. プレデター / アラン・シルヴェストリ
2. ザ・フライ / ハワード・ショア
3. ルーカスの初恋メモリー / デイヴ・グルーシン
4. 赤ちゃん泥棒 / カーター・バーウェル
5. ウォール街 / スチュワート・コープランド
6. ビッグ / ハワード・ショア
7. ブロードキャスト・ニュース / ビル・コンティ
8. ダイ・ハード / マイケル・ケイメン
9. アビス / アラン・シルヴェストリ
10. ホッファ / デヴィッド・ニューマン
11. ミセス・ダウト / ハワード・ショア
12. スピード / マーク・マンシーナ
13. キャスト・アウェイ / アラン・シルヴェストリ
14. 運命の女 / ヤン・A・P・カチュマレク
15. アイス・エイジ / デヴィッド・ニューマン
16. アイ,ロボット / マルコ・ベルトラミ
17. ファンタスティック・フォー 【超能力ユニット】 / ジョン・オットマン
18. ナイトミュージアム / アラン・シルヴェストリ
19. ホートン/ふしぎな世界のダレダーレ / ジョン・パウエル
20. インデペンデンス・デイ / デヴィッド・アーノルド

普通のオールタイム・ベスト的なサントラ盤だったら、例えばバーナード・ハーマンなら『サイコ』(60)だろうし、ヴィクター・ヤングといえば『八十日間世界一周』(56)が有名だろうし、ジョン・ウィリアムズなら『スター・ウォーズ』(77)のテーマ曲が定番ですが、「20世紀FOX配給作品」で、「過去にVarese Sarabandeからサントラをリリースした作品」、さらに「Varese Sarabandeが推している作曲家」という条件がつくと、上記のようなラインナップになるわけです。
ゴールドスミスの『マジック』(78)とか、ウィリアムズの『コンラック先生』(74)あたりは、かなりマニアックな選曲と言っていいかもしれません。
ベスト盤でこの映画の曲を入れようとはなかなか考えないでしょう。
さすがサントラレーベルの老舗Varese Sarabande。

このアルバムを聴いていてもうひとつ面白かったのが、時代と共に映画音楽のスタイルが変わっていくのがすごくよく分かった点ですね。
豪華絢爛なフルオーケストラ・サウンドから始まって、ハリウッド黄金時代の終焉と共に、きらびやかなフルオケ音楽から実験的手法やジャズの要素を取り入れた音楽になっていって、電子楽器(シンセ)の導入や、ポップス/ロック界からの映画音楽界参入などが増えていって今に至ると。この流れが一気に楽しめるんですねー。

 

世代的に言えばワタクシはディスク2の後半2曲からディスク3の時代が専門なのですが、40年代や50年代の映画音楽も味があってなかなか面白い。
購入者層を考えると、たぶん最も人気が高いのはディスク2かもしれませんね。

まぁ映画音楽物書きを生業としているワタクシと致しましては、「昔の映画音楽はよかったなぁ、最近のは聴いとらんわー」という方には、この機会にディスク3で新しい時代の映画音楽を楽しんで頂きたいと思いますし、「初めて聴いたサントラはハンス・ジマーやダニー・エルフマン」という若い世代の方々には、ディスク1で彼らが影響を受けたレジェンド枠の作曲家の作品に触れて頂きたいと思います。
特にダニー・エルフマンはバーナード・ハーマンやフランツ・ワックスマンが好きだと公言しておりますので、彼らの音楽がエルフマンにどう影響を与えたのか、いろいろ検証してみるのも面白いかと。

映画音楽ベストとして聴き応えがあるのはもちろんのこと、資料的価値の高いアルバムではないかと思います。
余談ですがワタクシこのアルバムを聴いて、『喝采の陰で』(82)のサントラが無性に欲しくなりました(もう廃盤&在庫切れで通常店舗では手に入りませんが…)。

 

20世紀フォックス映画 75周年記念盤
音楽:Various Artists
レーベル:Rambling Records
品番:RBCP-3143
発売日:2016/07/20
価格:3,000円(+税)

 

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