『バーバラと心の巨人』の音楽は、3つのテーマ曲でウサ耳少女の複雑な内面を描き出す。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『バーバラと心の巨人』(17)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽はフランスで活躍するローラン・ペレス・デル・マール。

サントラリスナーでもあまり聞いたことのない作曲家ではありますが、
スタジオジブリが製作した海外アニメ映画『レッドタートル ある島の物語』(16)の音楽を担当した人と言えば、
「あ-、あの人ね!」と思って頂ける…かもしれません。

『レッドタートル』は全編セリフなし、
映像と音楽・効果音で物語が進行する映画だったので、
かなり音楽が印象に残る作品だったわけですが、
今回の『バーバラと心の巨人』のスコアも、
『レッドタートル』の雰囲気に近いメロディアスなオーケストラ・スコアに仕上がっています。
時折挿入されるチェレスタやマリンバの音色も、
少女っぽさを感じさせてよいアクセントになっていると思います。

で、ワタクシは映画本編を観る前にサントラを聴いて”予習”して試写に臨んだのですが、サントラを何度か聴いた印象だと、
「メインテーマ」「巨人のテーマ」を軸として、
もうひとつ正体不明のサブテーマがあるような感じでした。

ところがいざ映画本編を観てみると、
「巨人のテーマ」は当たっていたのですが、
「メインテーマ」は「バーバラのテーマ」としての役割も担っていて、
(まあこれはある程度予測の範囲内だったのですが)
自分が「サブテーマ」と思っていたモティーフも、
実は「バーバラの第2テーマ」的な感じなんじゃないか?と思うようになりました。

よほどのことがない限り、ひとりのキャラクターに2つのテーマ曲を持たせることはないのではないか?
いやしかし、サントラにはサブテーマを使った曲は2曲ぐらいしか収録されてないけど、映画本編だとバーバラの登場シーンでもっと使ってたよね…などと考えていたら夜も眠れなくなりまして、
正解を求めて作曲家のローラン・ペレス・デル・マールさん本人に直接話を伺うことにしました。

幸いデル・マールさんは『レッドタートル』の音楽を手掛けていたので、
日本での自作のリリース事情にも関心があって、
当方の事情を話したらインタビューをOKして下さいました。
スコアのかなり深い部分までコンセプトを語ってくれたので、
『バーバラと心の巨人』日本盤ブックレットの拙稿を読んで頂ければ、
メインテーマが意味するもの、
そして多彩な楽器の意味するものが全部分かるようになっています。
(日本盤サントラを手に取って頂きたいので、誠に恐縮ですがデル・マールさんのインタビュー内容はここではあえて書かないことにさせて頂きます。スイマセン)

たぶん映画のパンフにはそれほど音楽に関するコラムは載らないんじゃないかと思うので、
その分はサントラ盤のライナーノーツで補完して頂ければと思います。

余談ですが、デル・マールさんが高畑勲氏のことを“タカハタサン”と言っていたのがなかなか印象的でした(”ミスター・タカハタ”ではないところが特に)

日本盤はジャケットアートも独自デザインです。

サントラ盤にはデル・マールさんのスコアのほかに、
ロンドン・グラマーとラスマス・ウォルターの挿入歌が2曲収録されているのですが、このボーカル曲もすごくいい感じなので必聴です。是非ぜひお買い求め下さいませ。

『バーバラと心の巨人』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ローラン・ペレズ・デル・マール
レーベル:Rambling RECORDS
品番:RBCP-3297
発売日:2018/10/03
定価:2,400円+税

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