リーアム・ニーソン主演のアクション映画にジョージ・フェントンの音楽だと…!? 『スノー・ロワイヤル』はその意外な組み合わせが面白い!

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『スノー・ロワイヤル』(19)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。

ワタクシは『アンノウン』(11)、『フライト・ゲーム』(14)、『トレイン・ミッション』(18)でリーアム・ニーソン主演作のサントラ盤ライナーノーツを書かせて頂いているので、またリーアム映画のお仕事が回ってきて最高に嬉しかったですね~。

で、今回の音楽を担当したのはジョージ・フェントン。

…ってコレ、かなり意外な人選じゃありません??

 

フェントンといえばケン・ローチ監督作品の音楽で知られていますが、
そのほかの作品もネイチャードキュメンタリー(『ディープ・ブルー』(03)や『アース』(07)など)、
『恋はデジャ・ブ』(93)や『ユー・ガット・メール』(98)などのロマコメ、
『クルーシブル』(96)や『アンナと王様』(99)のようなコスチューム劇の仕事が多い作曲家。
リーアム無双が炸裂するリベンジ・アクションとは程遠い作品傾向で、最初は「フェントン大丈夫かしら?」と思ってしまいました。

さらに個人的に気になったのが、フェントンの補作曲的なポジションで参加している音楽プロデューサーのダン・キャリーの存在でした。

「これってまさか、『ジャッカル』(97)でカーター・バーウェルのスコアを(プロデューサーの指示で)本人に無断でいじったダニー・セイバーみたいな感じなんじゃ…?」と不安になったわけです。

『ジャッカル』の音楽については以前のブログでいろいろ書いてます。
https://www.marigold-mu.net/blog/archives/8699

ところがいろいろリサーチしたり、
実際に音源を聴いてみた結果、
これらは全くの杞憂であったことを強調させて頂きたいと思います。

 

 

本作にフェントンが招聘されたのは、ミュージック・エディターがテンプトラックにフェントンのスコアをいくつか使っていたかららしい。
で、ハンス・ペテル・モランド監督もケン・ローチ作品が好きだったので、「それなら本編の音楽もフェントンにお願いしよう」ということになったと。

考えてみれば、本作のオリジナル作品『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』(14)の音楽も北欧トラッドな感じのペーソス漂うサウンドだったので、
リメイク版も「リーアム・ニーソン主演だからといって、よくあるアクションスコアは必要ない」ということだったのでしょう。

次にダン・キャリーの件ですが、
この方、フェントンの90年代の作品『ウィズアウト・ユー』(99)で既にコラボしてました(Mr.DAN名義だったので気がつくまでちょっと時間がかかった)。
さらにダン・キャリーはフェントンの甥なのではないか?という情報なんかもあったりしまして、
まぁ簡単に言ってしまえば、フェントンの良き相棒としてレコーディングに参加していたというわけです。
だから『ジャッカル』のバーウェルとセイバーのような、全く意思疎通の取れていない関係とは全然違ったと。

…というわけで、『スノー・ロワイヤル』の音楽はオーソドックスなアクション映画の音楽とは一線を画するサウンドになってます。
アルバム1曲目のメインテーマからしてギターの音色が何だかとてもフォーキーな感じで、2曲目の模範市民賞受賞シーンのちょっと手前の曲もアンビエント・ミュージック風。
リベンジアクションというより『ネルズ・コックスマン ある除雪作業員の物語』みたいな人間ドラマが始まりそうな音楽です。

かと思えば、ネルズの「除雪という名の仕置」がスタートすると、
アナログシンセサイザーのブワァァーーーッという電子音が前面に出てくるようになって、『ソーシャル・ネットワーク』(10)ほどではないにしても異様なシンセ・スコアになっていったりする。

日本版公式サイトで「見かけ倒しの金髪モヒカンチンピラ」扱いの下っ端”スピード(Speedo)”のために、妙にカッコよさげなEDMナンバーが用意されていて(この人、クラブにいましたからね…)、さらにボーナストラックでリミックス・バージョンまで用意されているあたりが妙にツボにハマって笑えました。

 

そして『ファイティング・ダディ』でセルビア人だったギャング団が、
本作ではネイティブアメリカンのギャング団になっているので、
音楽も彼らの文化を連想させるちょっとエスニックなサウンドになっていたりもします。
ちなみにギターを弾いているのが腕利きギタリストのジョン・パリチェリだったり、
フルート奏者がこれまた腕利きのアンディ・フィンドンだったりして、
演奏者の人選も手抜かりなし。

本作のスコアのシンセパートは、前述のダン・キャリーが担っている部分も多いのですが、フェントン自身もシンセを弾いていたりして、なかなか攻めた感じのスコアを聴かせてくれています。つーか、最高に面白いですこの映画のスコア!

『ヘブンズ・プリズナー』のスコア盤は結構レアかと。
『恋はデジャ・ヴ』はフェントンの代表作のひとつと言っても過言ではないかと。

ワタクシは『愛という名の疑惑』(92)や『ヘブンズ・プリズナー』(96)、
前述の『ウィズアウト・ユー』などのフェントンの音楽が好きだったので(全部フィル・ジョアノー監督作ですね…)、
フェントンのサントラにライナーノーツを書く機会を頂けて本当に嬉しかったです。
ライナーノーツから当方の”フェントン愛”が皆様に伝わるといいのですが。

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音楽:ジョージ・フェントン
レーベル:Rambling RECORDS
発売日:2019/06/05
品番:RBCP-7406
価格:2,400円(税抜)

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