『ダークナイト ライジング』のサントラ盤ボーナストラックを検証する

the dark knight rises

おとといAmazonから『ダークナイト ライジング』(12)の輸入盤が届きました。
自分の場合、最終的に940円で買えてしまいました。

「輸入盤とはいえ、超大作のサントラが940円で買えちゃっていいのかなぁ…」などと、柄にもなく円高ドル安をはじめとする経済情勢などあれこれ考えてしまって、非常に複雑な心境になりました。

さて今回のサントラ盤、15曲で52分弱でした。

THE DARK KNIGHT RISES – Original Motion Picture Soundtrack (amazon)

本編が2時間44分ある事、そして前作『ダークナイト』(08)のサントラ盤が収録時間73分強(特装版のDISC2は50分強)だった事を考えると、ボリューム的に何か物足りないという印象があります。この場合のボリュームというのはあくまで収録時間や収録曲数的な話で、音楽の出来はまた別のお話。

が、しかし。どうやらこれはレーベル側も計算ずくの売り方のようで、アルバムをいろんな形態でリリースし、それぞれ違ったボーナストラックをつけて稼ごうという思惑らしい。

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リゾート感覚のジャズ・スコアが心地よい『ラム・ダイアリー』の音楽

rum diary

映画本編は個人的にイマイチだった『ラム・ダイアリー』(11)ですが、
音楽(サウンドトラック)はなかなかよかった。
もしかしたら、映画を観る前にサントラを聴いて、
「音楽がこのクオリティなら映画もイケるはず!」と、
期待値をガーッと上げてしまったのがマズかったのかもしれません。

オリジナル・スコア作曲はクリストファー・ヤング。
本作のブルース・ロビンソン監督とは『ジェニファー8』(92)で組んだ事があるのですが、
ロビンソンがほぼ20年ぶりにメガホンを取った作品で、
ヤングに再び作曲を依頼するというこのエピソードがまず素晴らしい。

で、本作のためにヤングが書き下ろしたのが、
リゾート感覚溢れる珠玉のラテン・ジャズ・スコア。
ラテン・パーカッションやギター、ハモンド・オルガンが織りなすグルーヴが実に心地よいのです。
スコアによってはジャズのみならず、ブルース調の曲もあり。

ヤングというと『ブラックサイト』(08)とか『スペル』(09)とか、
ホラー・サスペンス系のスコアで有名ですが、
『ラウンダーズ』(98)、『ワンダー・ボーイズ』(00)、『シェイド』(03)など、
ジャズ・スコアも非常に巧い作曲家でもあります。
今回はその流れ。今回もジャズ・アルバムとしてのクオリティーはかなり高いです。

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決め手には欠けるけど、愛すべき映画ではある『ラム・ダイアリー』

rum diary (more music)

1998年の映画『ラスベガスをやっつけろ以来親交を暖めてきた、
ジョニー・デップ(主演・製作)と故ハンターS・トンプソン(原作)のコンビによる最新作。

『ラスベガスをやっつけろ』が大好きで、
何十回・何百回と観た自分としては、
今回の『ラム・ダイアリー』(11)も非常に楽しみだったのですが…。
いざ本編を観てみると、何か物足りなかったなーという印象でした。

映画の内容をひと言で申し上げるなら、
「酔っぱらいジャーナリストの南米珍道中」という感じなのですが、
何しろ前回の『ラスベガスをやっつけろ』がああいう調子だったので、
あれと比べると酔っぱらいの珍道中というにはそれほどハチャメチャではないし、
胡散臭いアメリカ人実業家(アーロン・エッカート)にケンカを売る展開もイマイチ迫力に欠ける。
原作者トンプソンの分身とも言える主人公ポール・ケンプに関しても、
この頃はまだトンプソンも若くて大人しかったのか、
あるいはテリー・ギリアムに比べるとブルース・ロビンソン監督は真面目な人だったのか、
ハメを外しきれていないという感じ。

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マイケル・ダナ名作選 / ニュースの天才 -Shattered Glass- (2003)

shattered glass

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、
マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。

今回はマイケルの作品から『ニュースの天才』(03)をご紹介します。

アメリカの由緒ある(らしい)政治雑誌『ニュー・リパブリック』の若手人気記者スティーヴン・グラス(ヘイデン・クリステンセン)が、
過去複数回に渡って記事を捏造していたという実話を元にした映画。
ヘイデンは「救いようのない嘘つきなのに、人当たりが良くてイケメンなのでつい周りもダマされて甘やかしてしまう」という、
同性からするとかなりイヤな男を好演。
『スター・ウォーズ』のep2と3でラジー賞を受賞してしまったヘイデンですが、
本作ではその汚名返上を果たしております。
この人いい役者だと思うんだけどなぁ。『アウェイク』(07)もよかったし。

ちなみに雑誌編集長のチャックを演じたピーター・サースガードは、
この映画でインディペンデント・スピリット賞とゴールデン・グローブ賞の助演男優賞の候補になり、
全米批評家協会賞で同賞を受賞しました。
相変わらず堅実な芝居をしてます。

さて本作の音楽についてなのですが、
サントラ盤のブックレットにビリー・レイ監督が寄稿したライナーノーツが載っておりまして、
まずこの内容が結構スゴイ。
何しろ書き出しが「マイケル・ダナは私をマヌケ野郎だと思った事だろう」ですから。

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ジェフ・ダナ名作選 / At Sachem Farm (1998)

uncorked

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。

今回は弟ジェフの作品から『At Sachem Farm』(98)をご紹介します。

・・・といっても、この映画は日本未公開でDVD化もされてないんですよねー。ノース・カリフォルニアの広大な敷地に住むイギリス人青年ロス(ルーファス・シーウェル)と、婚約者(ミニー・ドライヴァー)、変わり者の叔父(ナイジェル・ホーソーン)、ロスの弟らの人間模様を描いたヒューマン・ドラマといった内容。

映画の内容も地味だし、劇場公開やDVDリリース、TV放映の度にタイトルが”At Sachem Farm”、”Higher Love”、”Uncorked”とコロコロ変わるなど不遇な扱いを受けた映画でもあるのですが、「音楽がいい映画」と当時そこそこ話題になりました。

この映画の途中で、ロスがギターコンサートを開くシーンがあるのですが、この場面の音楽に注目が集まりました。ここで実際にギターを弾いているのが、ルーファス・シーウェル・・・ではなく、映画のオリジナル・スコアを作曲しているジェフ・ダナ本人というわけです。

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