マシュー・マコノヒーのダークサイドが炸裂する怪作『キラー・スナイパー(原題:KILLER JOE)』

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ウィリアム・フリードキン監督が放つ異色スリラー『KILLER JOE』(12)が、
『キラー・スナイパー』なる珍妙な邦題でDVDスルー。

この映画、スナイパーなんか出て来ません。
タイトルロールの悪徳警官ジョー(マシュー・マコノヒー)も狙撃銃なんか持たないし、
そもそもガンアクション・シーンもありません。

多くの人が「何でこんな邦題になったんだよ!」と憤慨している事と思いますが、
たぶん配給会社が、
「何か地味な映画だから、タイトルを”キラー・スナイパー”にして、
アクション映画と間違えて借りられるようにしてしまえ」
…と考えたのではないかと思われます。

ちなみに『KILLER JOE』は、トレイシー・レッツ(『BUG/バグ』(06)の原作者)の戯曲を映画化した作品です。
観ていて「地味」と思ったら、それは「舞台劇が原作だから」という事なので念のため。

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TAKEN 2 -96時間 リベンジ-

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自分は前作『96時間』(08)がすごく気に入っているので、
続編『96時間 リベンジ』(12)は期待半分・不安半分で観に行きました。
しかしいざ本編を観てみたら、続編とはいえまあまあ楽しめたのでひと安心。

ブライアン(リーアム・ニーソン)の親バカぶりは今回も健在ですが、続編ではそこに「元妻(ファムケ・ヤンセン)にも未練タラタラ」という要素が加わり、「俺の家族に手ェ出す奴は全員ブッ殺す!」的な家族ヒーローっぷりに磨きがかかりました。前作のパリに続いてイスタンブールの街を破壊しつつ、至る所でリーアム無双を繰り広げる事になります。

個人的にツボだったシーンは以下の通り。

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『フランケンウィニー』のサントラ盤について

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さて『フランケンウィニー』(12)の音楽についてなのですが、僕は今回サントラ盤のライナーノーツを担当させて頂いたため、ここでダニー・エルフマンの音楽についてこと細かに書いてしまうと、「ライナーノーツの意味ないじゃん!」という事になってしまうのです。

なので、補足的な事をサラッと書かせて頂く事にします。

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トーマス・ニューマンの『007 スカイフォール』の音楽はよく出来ていると思うの巻

skyfall

金曜に『007 スカイフォール』(12)のサントラが届いたので、
週末に延々と聴きまくってました。
音楽はサム・メンデス監督のお気に入り、トーマス・ニューマン。

ワタクシはトーマス・ニューマンの音楽が好きなので、
アメリカ人の彼があの007の音楽担当に抜擢されたというのはかなり感慨深いものがありました。
アメリカ人作曲家の起用は『消されたライセンス』(89)のマイケル・ケイメン以来になりますかねー。

トーマス・ニューマンとアクション大作(しかも007シリーズ)というのがなかなか頭の中で結びつかなかったのですが、
なるほどこう来たかと。
『スカイフォール』の前にロマンティックSFサスペンスの『アジャストメント』(11)と、
スパイスリラーの『ペイド・バック』(11)の音楽を担当したのがいい準備運動になったようです。

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『アルゴ』のサウンドトラックを補完してみる

Argo

仕事場から遠くてちょっと不便なMOVIX利府まで出掛けて、
ベン・アフレック監督・主演作『アルゴ』(12)を観てきました。

結論から申しますと、実に見応えのある映画でした。
利府まで遠出して観に行った甲斐があったというものです。

「架空のSF映画『アルゴ』をデッチ上げて、イランの過激派に命を狙われているアメリカ大使館員6人を『アルゴ』の撮影クルーに偽装させて出国させた実在のCIAエージェントの物語」という、ある意味「既に結末が分かっている」ストーリーなわけですが、それをここまでスリリングかつ面白く作れるというのは大したもんです。
終盤のバザールや空港のシークエンスなどは観ていてハラハラさせられるし、それ以外にも結末に至るまでの”過程”を緻密かつ丁寧に描いていて、最後まで観客の興味を引きつけるストーリーテリングがなされています。

たぶんアフレック的には政治的メッセージとか愛国主義的な思想はそれほど重要じゃなくて、「ニセのB級SF映画作り」と「70年代の空気感の完全再現」という部分に本人のシネフィル魂が刺激されたんだろうなーと思います。良くも悪くもいい加減な感じのハリウッド業界を楽しそうに描いているのも好印象。ジョン・グッドマンとアラン・アーキンの貫禄たっぷりな演技がまたいいんだな。合言葉のように「アルゴ、クソ食らえ!」とお互い言い合うところなんか最高ですね。

映画本編については、既にいろんな人がブログとかでレビューを書いていると思うので、ここでは音楽について少々。というか、サントラ補完企画的なコーナーで扱う事にしたいと思います。

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