『THE GREY 凍える太陽』(11)はリドリー&トニー・スコットの製作会社「スコット・フリー」の作品という事で、音楽担当は『プロヴァンスの贈りもの』(06)以来リドリーお気に入りの作曲家となったマーク・ストレイテンフェルドが起用される事になりました。
ジョー・カーナハン自身はクリフ・マルチネス、クリント・マンセル、アラン・シルヴェストリと毎回違う作曲家と組んでいるので、スコアにはそれほどこだわりがないのか、あえていろんな作曲家と仕事をしてみたいと思っているのか、まぁそのどちらかなのでしょう。
もともとあまり自己主張が強くない音楽を書き下ろす人でしたが、今回は題材がこんな感じなので、ストレイテンフェルドの作風が功を奏しているというか、音数やメロディーをぐっと抑えた虚無感と寂寥感を感じさせるスコアを作り上げています。悲壮感を漂わせたテーマ曲”Writing The Letter”も結構耳に残るメロディーではないかと。「これからヤバい事が起こるぜぇ」という危うい空気感をバスサックスの音色で表現している点もなかなか手が込んでます。
というわけで、手堅い仕事をしているストレイテンフェルドではあるのですが、ハンス・ジマーのもとで下積みをした作曲家でありながら、個人的にはリモート・コントロール色が極めて薄い音楽を作る人という印象があります。