マイケル・ダナ名作選 / アトランティスのこころ (2001)

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『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。ちょっとご無沙汰してました。

現在、スティーヴン・キングの新刊『ビッグ・ドライバー』を読んでいるところなので、今回はキング作品繋がりで『アトランティスのこころ』(01)をご紹介したいと思います。

この映画が公開された頃は、確か「『スタンド・バイ・ミー』(86)の二番煎じ」みたいな言い方をされて不当に評価が低かった記憶があります。確かに「少年時代の親友の死を知った主人公が、当時の事を回想する」という導入部は似てますが、だからと言ってその批評はあんまりではないかと。僕個人としては『スタンド・バイ・ミー』よりも好きな作品です。

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『アルゴ』のサウンドトラックを補完してみる

Argo

仕事場から遠くてちょっと不便なMOVIX利府まで出掛けて、
ベン・アフレック監督・主演作『アルゴ』(12)を観てきました。

結論から申しますと、実に見応えのある映画でした。
利府まで遠出して観に行った甲斐があったというものです。

「架空のSF映画『アルゴ』をデッチ上げて、イランの過激派に命を狙われているアメリカ大使館員6人を『アルゴ』の撮影クルーに偽装させて出国させた実在のCIAエージェントの物語」という、ある意味「既に結末が分かっている」ストーリーなわけですが、それをここまでスリリングかつ面白く作れるというのは大したもんです。
終盤のバザールや空港のシークエンスなどは観ていてハラハラさせられるし、それ以外にも結末に至るまでの”過程”を緻密かつ丁寧に描いていて、最後まで観客の興味を引きつけるストーリーテリングがなされています。

たぶんアフレック的には政治的メッセージとか愛国主義的な思想はそれほど重要じゃなくて、「ニセのB級SF映画作り」と「70年代の空気感の完全再現」という部分に本人のシネフィル魂が刺激されたんだろうなーと思います。良くも悪くもいい加減な感じのハリウッド業界を楽しそうに描いているのも好印象。ジョン・グッドマンとアラン・アーキンの貫禄たっぷりな演技がまたいいんだな。合言葉のように「アルゴ、クソ食らえ!」とお互い言い合うところなんか最高ですね。

映画本編については、既にいろんな人がブログとかでレビューを書いていると思うので、ここでは音楽について少々。というか、サントラ補完企画的なコーナーで扱う事にしたいと思います。

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マイケル・ダナ名作選 / 秘密のかけら -Where The Truth Lies- (2005)

where the truth lies

『ケルティック・ロマンス』のアーティスト、マイケル・ダナ&ジェフ・ダナのフィルモグラフィーを振り返る不定期連載企画。

今回はマイケルの作品から、盟友アトム・エゴヤン監督の『秘密のかけら』(05)をご紹介します。

舞台は1972年のLA。新進気鋭の女性ジャーナリスト・カレン(アリソン・ローマン)が、50年代に絶大な人気を誇ったスタンダップ・コメディアン二人組「ラニー&ヴィンス」の伝記を執筆する過程で、彼らが関与したとされる女子大生殺人事件の真相に迫っていくエロティック・サスペンス。

セクシャルな一面ばかりが強調されている作品ですが(まぁ実際キワドイ描写が多いけど)、映画の終盤まで真犯人が分からないトリッキーな物語構成とか、ソフトフォーカスをかけて50年代ハリウッドをセクシャル&きらびやかに再現した映像とか、「酒・ドラッグ・女・マフィア」というショウビズ界の裏の顔を赤裸々に綴ったストーリーとか、なかなか見応えのある内容でした。「大人のためのサスペンス・ミステリー」という表現がぴったりかと。ネットリしたエロティシズムや暴力描写の見せ方に、どことなくブライアン・デ・パルマの初期作品を彷彿とさせるものもありました(ナイトクラブのシーンでは長回しの映像もあったし)。

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リゾート感覚のジャズ・スコアが心地よい『ラム・ダイアリー』の音楽

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映画本編は個人的にイマイチだった『ラム・ダイアリー』(11)ですが、
音楽(サウンドトラック)はなかなかよかった。
もしかしたら、映画を観る前にサントラを聴いて、
「音楽がこのクオリティなら映画もイケるはず!」と、
期待値をガーッと上げてしまったのがマズかったのかもしれません。

オリジナル・スコア作曲はクリストファー・ヤング。
本作のブルース・ロビンソン監督とは『ジェニファー8』(92)で組んだ事があるのですが、
ロビンソンがほぼ20年ぶりにメガホンを取った作品で、
ヤングに再び作曲を依頼するというこのエピソードがまず素晴らしい。

で、本作のためにヤングが書き下ろしたのが、
リゾート感覚溢れる珠玉のラテン・ジャズ・スコア。
ラテン・パーカッションやギター、ハモンド・オルガンが織りなすグルーヴが実に心地よいのです。
スコアによってはジャズのみならず、ブルース調の曲もあり。

ヤングというと『ブラックサイト』(08)とか『スペル』(09)とか、
ホラー・サスペンス系のスコアで有名ですが、
『ラウンダーズ』(98)、『ワンダー・ボーイズ』(00)、『シェイド』(03)など、
ジャズ・スコアも非常に巧い作曲家でもあります。
今回はその流れ。今回もジャズ・アルバムとしてのクオリティーはかなり高いです。

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DARK SHADOWS(音楽について)

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ジョニー・デップ×ティム・バートンのタッグ作品という事で、それなりにスマッシュヒットが見込める映画と判断させたせいか、『ダーク・シャドウ』(12)のサントラは劇中使われた歌モノを収録したコンピ盤と、ダニー・エルフマンのスコア盤の2種類がリリースされました。

しかもスコア盤は配信のみとかではなく、ちゃんとしたプレスCDでのリリース。素晴らしい。

エルフマンの音楽は、オーケストラとコーラス隊、打楽器をドコドコ鳴らす「いつもの」スコア。滑稽さは抑えめにして、割と本格的なゴシックホラー音楽を聞かせてくれています。メインテーマのメロディーも、いかにもエルフマンらしい感じ。正確には「ティム・バートンと組んだ時のエルフマンらしいメロディー」と言うべきか。

本編を観る前にこのアルバムを聴いていたら、「『ビートルジュース』(88)みたいな映画なのかな?」なんて間違った先入観を持たずに『ダーク・シャドウ』の世界にどっぷり浸かれたのかもしれません。どうでもいい事ですが、アルバムのトリを飾る”We Will End You!”のイントロのリズムがQueenの”We Will Rock You”に似ている(ように聞こえる)のはワザとでしょうか。

活劇タッチの大仰なスコアもよいのですが、バーナバスとジョゼット(18世紀の元恋人)/ヴィクトリア(現代のワケあり家庭教師)の悲恋を予兆させる物悲しいスコアも素晴らしい出来です。

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