HAYWIRE/エージェント・マロリー(映画について)

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映画の日に『最強のふたり』(11)じゃなくて、あえて『エージェント・マロリー』(11)を観に行ったひねくれ者です。ひねくれ者というか、まぁ個人的にスティーヴン・ソダーバーグの映画が好きなので。

女子総合格闘界の人気者、ジーナ・カラーノ主演のアクション映画でございます。

「組織に裏切られた女性エージェントが、復讐のためひとり黒幕に戦いを挑む」というシンプルなストーリーを、時系列のシャッフルとクセモノ俳優たちの勿体ぶったセリフでトリッキーに仕立てた、いかにもソダーバーグ的な構成。アンチ・ソダーバーグな人にはこの手法が「スカした映画撮りやがって」と勘に障るらしい。

しかし『蒼い記憶』(95)でソダーバーグの「時系列シャッフル」と「カラーフィルターを通した映像」にハマった自分は、この”スカした”映像テクが妙に心地よかったりするんだな、これが。『イギリスから来た男』(99)とか最高にシビれましたもの。で、今回の『エージェント・マロリー』も時系列が頻繁にシャッフルされるんですが、割ときちんと整理されているので見ていて混乱する事はないかな、と。

映画を観た人の感想を読むと、「ラストが尻切れ」とか「脚本の描き込み不足でキャラの立ち位置が分からない」というのが結構ありましたが、まぁラストはある程度ケリもつけてるし、アレでいいんじゃないでしょうか。ジェリー・ブラッカイマーの映画じゃないんだから、結婚式で終わったり派手な爆発が起きたりしなくてもねぇ。カタルシス一歩手前でブツッと切ったような終わり方をするのが、ソダーバーグ映画の真骨頂でもありますので。

登場人物の描き込みにしても、あれ以上キャラのバックグラウンドとか役回りを細かく説明する必要はないんじゃないかなー。この程度で描き込み不足とか言ってたら、『アート・オブ・ウォー』(00)の”迷い猫”の張り紙から暗号を読み解くシーンなんて端折りすぎて何が何だか分からないレベルだったし。

個人的にこの映画でよかったと思ったのは、カメラワークが終始落ち着いていた事。『ジェイソン・ボーン』シリーズで流行った「手持ちカメラを揺らしたりブン回したりして、めまぐるしいカット割で臨場感をUPさせる手法」を使っていない。おかげでマロリーの格闘戦をじっくり見られるわけです。

そのマロリーを演じたジーナ・カラーノ、場面によっては「ゴツいレイチェル・ワイズ」みたいな感じに見えなくもなく、なかなか華があります。動いている時はともかく、通常時の演技が若干カタいのが(仕方ないとはいえ)難点ですが、そのあたりがこれからどうなって行くのかなという感じ。

善人なのか悪人なのかよく分からない顔つきのマイケル・ダグラス、軍事企業のイマイチ大物になりきれないトップを演じた刈り上げヘアーのユアン・マクレガー、悪代官チックなアントニオ・バンデラス、くずれ007チックなマイケル・ファスベンダー、冒頭でマロリーに腕をヘシ折られるチャニング・テイタム、幸薄そうなマロリー父のビル・パクストンなど、共演者の皆さんも少ない出番ながらいい味出してました。

パンフやウェブサイトのキャスト情報でもスルーされてましたが、成り行きでマロリーを助けるハメになった青年スコット役は、『スカイ・ハイ』(05)のダメ高校生(『ドラゴン・キングダム』(08)のカンフーオタ青年でも可)のマイケル・アンガラノ、胡散臭いフランス人実業家スチューダー役は『アメリ』(01)のマチュー・カソヴィッツでした。

というわけで、格闘の見せ方や撮影手法など、「最近流行りのジェイソン・ボーン系アクション映画に対するアンチテーゼ」的なフィジカル・アクション映画なのではないかなーと思った次第です。ソダーバーグ好きならそれなりに楽しめます。

音楽についてはまた次回。

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