映画『ムーンライト』の劇中で使われた曲リスト

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『ムーンライト』(16)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。

文字数の関係でライナーノーツに書けなかったことがいくつかあったので、
それを弊社のブログで数回に分けて補完させて頂いております。

今回は映画の中で使われた曲をまとめてご紹介します。

…というわけで早速ではございますが、
ニコラス・ブリテルのオリジナル・スコアを除く劇中使用曲は以下の通りです。
(太字はサントラ盤に収録されている曲)

 

Every N****r Is a Star
Performed by Boris Gardiner
Remix by Dennis “DEZO” Williams

It’ll All Be Over
Performed by Supreme Jubilees

Laudate Dominum from Vesperae Solennes de Confessore, K. 339
Written by Wolfgang Amadeus Mozart
Conducted by Nicholas Britell

One Step Ahead
Performed by Aretha Franklin

Mini Skirt
Performed by The Performers

Cell Therapy
Performed by Goodie Mob

Tyrone
Performed by Erykah Badu

Play That Funk
Performed by Prez P and Travis Bowe

Tumbling Down
Performed by Langston & French of The Numero Group

Cucurrucucú Paloma
Performed by Caetano Veloso

Classic Man
Performed by Jidenna feat. Roman GianArthur Irvin

Our Love
Performed by The Edge of Daybreak

Hello Stranger
Performed by Barbara Lewis

一般的に「ブラック・ムービー」(特に「フッド・ムービー」と呼ばれるジャンル)は劇中ヒップホップをガンガン流すのが主流で、
サントラ盤にもアーティスト・プロモーションを兼ねて劇中未使用曲を多数収録したりする傾向がありますが、
ステレオタイプなブラック・ムービーとは一線を画する作りの『ムーンライト』は音楽の使い方もひと味違いました。
静寂の”間”を効果的に使ったキャラクターの内面描写、
必要最低限のオリジナル・スコア、
煽動的なビートとは対照的なダウンテンポなサウンド、
…というような作り手側の選曲センスが見えてくる内容となっています。

権利上の理由などもあって、
サントラ盤には上記の曲を全て収録するわけにはいかなかったようですが、
映画の中で特に演出上重要な役割を果たした曲をピンポイントで収録しているなーという印象です。

まずボリス・ガーディナーのEvery N****r is A Starですが、
これはかなり通好みの曲というか、
レア・グルーヴ愛好家でも知る人ぞ知るという感じの曲ではないかと。
最近ケンドリック・ラマーの”Wesley’s Theory”という曲にサンプリングされていたので、
バリー・ジェンキンス監督もこのあたりから曲の存在を知ったのかもしれません。
曲自体はマーヴィン・ゲイ風のメロウ・ソウルとなっています。

 

モーツァルトの「ラウダーテ・ドミヌム」は”Excerpt”と記載されておりまして、
映画本編でもフルに流れることなく1分40秒くらいでフェードアウトしてしまいますが、
サントラ盤にもそれとほぼ同じ長さで収録されています。
普通、映画本編では一部分しか曲流れなくても、
サントラ盤ではフルバージョンが収録されるものですが、
本作ではどちらも部分的にしかモーツァルトの曲を収録していないので、
恐らくこれには何らかの演出意図があるのではないかとワタクシは考えています。

 

そして本盤の収録曲の中では最もサグ(Thug)度が高いと思われる、
グッディー・モブの”Cell Therapy”。
この曲はチャプター3(=「ブラック」の章)で非常に重要な役割を果たしているような気がします。
というのもこの曲は大人になったシャロンが聴いている曲なのですが、
アトランタ出身のヒップホップ・グループの曲を”キモチ大きめ”の音量で流すことによって、
「シャロンがマイアミからアトランタに移った」
「自分の身を守るため、マッチョな身体の強面サグ男に変身した」
…という状況を音楽で説明しているのではないかと。

 

ことほどさように容姿や態度、ライフスタイルをタフに振る舞って、
相手にナメられないよう自衛しているシャロン=ブラックではありますが、
彼の場合、心の一部は少年の頃のままでもあるんですね。
だからこそ”想い人”からジュークボックスで懐メロ(バーバラ・ルイスの”Hello Stranger”)を聞かせてもらったりすると、
一度捨てたはずのセンチメンタルな”昔の思い出”が一気に蘇ってきたりしてしまう。
ダーティ・サウス系ヒップホップとソウルの懐メロという音楽の対比によって、
シャロンの「見た目と内面の違い」をうまく描いているなー、と思いながら映画本編を観ておりました。

カエターノ・ヴェローソのCucurrucucú Palomaはあれですね、
映画『ブエノスアイレス』(97)でも使われたあの曲です。
バリー・ジェンキンス監督はウォン・カーウァイ作品がお好きらしいのですが、
それゆえにネタ元の映画の印象が強すぎて、
『ムーンライト』のサントラにはこの曲が収録されなかったのかもしれません(あくまで筆者の推測ですが)。

 

何はともあれまずはサントラ盤をお買い求め頂きまして、
サントラ未収録の曲で気になるものがありましたら、
iTunesやamazonのデジタルミュージックストアなどを活用して補完して頂ければと思います。
そして「自分だけの『ムーンライト』カスタム・サウンドトラック」を作って頂ければ幸いです。

 

『ムーンライト』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ニコラス・ブリテル
レーベル:Rambling RECORDS
品番:RBCP-3186
発売日:2017/04/07
定価:2,400円+税

 

 

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