UNKNOWN / アンノウン(映画について)

リーアム・ニーソン主演のサスペンス映画『アンノウン』(11)。

当初は『身元不明』の邦題で公開する予定だったものの、
東日本大震災の影響(どんな影響かはご想像にお任せします)で、
急遽原題の『アンノウン』に変更になりました。

こういう事態になる前から、
『身元不明』というタイトルは正直ビミョーだと思っていたので、
(チケット売り場で「”身元不明”一般1枚下さい」と言うのもちょっとねぇ…)
原題に戻して正解だったと思います。

2006年にジム・カヴィーゼルやグレッグ・キニアが出演した同名タイトルの密室サスペンス(これも割と面白かった)があるのですが、
まぁタイトルが被ってしまってもこの場合致し方ないという事で。

で、こっちの『アンノウン』について。

一時的に記憶を失った男が、
不可解な事態に翻弄されながらも自分自身を取り戻すというお話という事で、
ノリ的には『フランティック』(88)と『トータル・リコール』(90)、
『ボーン・アイデンティティー』(02)をミックスしたような感じでなかなか面白かった。
例によって終盤には大ドンデン返しというか”オチ”があるわけですが、
そのオチが分かった上で、
序盤のリーアム・ニーソンとジャニュアリー・ジョーンズ夫妻の会話を思い出してみると、
「あぁ、確かにつじつまの合う事を言ってるな」と思ったり。

オチとしてはかなり強引な部類に入ると思いますが、
その展開に説得力を持たせているのが、ニーソンの演技力や真摯な佇まいという事になると思います。
この人だからマーティン・ハリスというキャラに真実味を与えられるわけで、
もしニコラス・ケイジやトム・クルーズあたりがマーティンを演じてしまうと、
本人のキャラが濃すぎてストーリーが作り物っぽくなってしまう。

基本的にサスペンス映画なのですが、
映画の中盤から後半にかけて結構派手なアクションを見せてくれまして、
クライマックスでは『96時間』(08)で悪党どもを皆殺しにした、
破壊力抜群の”リーアム拳”も披露してくれます。
(今回は”リーアム無双”とまではいきませんでしたが)
彼の殺陣の動きはものすごくシャープでキレがあるので、
実にカッコイイ。

己の拳で敵をブチのめすところとか、
家族のために戦いに身を投じるところとか(これは『96時間』の話ですが)、
目的のためなら手段を選ばずに暴走するところとか、
ニーソンはハリソン・フォードの系譜に繋がるミドルエイジ・アクション・スターという感じ。

共演者もダイアン・クルーガー、ブルーノ・ガンツ、セバスチャン・コッホらヨーロッパ系俳優がいい味を出してまして、
中でもドイツ秘密警察の生き残りを演じたガンツがインパクト大。
フランク・ランジェラと対峙するシーンが彼の最大の見せ場でしょう。
マーティンになりすます「マーティンB」役で久々にエイダン・クインを見ましたが、
ニーソンとプライベートで親友同士という事を知った上で対決シーンを見ると、
なかなか面白いです。
特に2人が「俺が本物のマーティン・ハリスだ!」と言い争いをする場面。
妙に息が合ってて笑えます。

音楽についてはまた次回。

 

ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島(音楽について)

narnia

『ナルニア』シリーズはこれまでハリー・グレッグソン=ウィリアムズが音楽を担当していましたが、監督がマイケル・アプテッドに交代した事により、音楽担当もアプテッドご贔屓のデヴィッド・アーノルドに代わりました。

アーノルドといえば、最近はすっかり「007映画の専属作曲家」という感じになりましたが、一連の007シリーズで聞かせている「オーケストラ+打ち込み」という作風とはうって変わって、今回の『アスラン王と魔法の島』では全編正統派のフルオケ・スコアを聞かせてくれています。アーノルドが活劇タッチの音楽を作曲するのは、三銃士をメイド・イン・香港チックなワイヤーアクションで撮った珍奇な映画『ヤングブラッド』(01)以来になると思われます。

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ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島(映画について)

先月末にTOHOシネマズ 六本木ヒルズで試写を観てきたのですが、『ナルニア』を映画館で観るのは今回が初めてでした。

1作目も2作目もスターチャンネルで放送していたやつを観たのですが、上映時間が2時間以上で、その割には合戦シーンがあっさりしていてイマイチ盛り上がらないなーという印象でございました(まぁ、基本的に子供向けの映画ですから・・・)。

が、今回は上映時間が1時間52分とタイトにまとまっているうえに、映画終盤の大ウミヘビとのバトルシーンが結構迫力がありまして、シリーズ中一番よく出来てるのでは? と思いました。「『アバター』品質の3D映像!」かどうかは正直微妙ですが。

さて『ナルニア』シリーズといえば、ハリポタとか指輪物語に比べると「子役が地味」というイメージがあったわけですが、ペベンシー兄妹のうち、あっさり顔の長男ピーターといしのようこ似の長女スーザンは前作でナルニア卒業となったため、今回は次男のエドマンドと末っ子のルーシーが晴れて主人公となりました。エドマンド役のスキャンダー・ケインズがなかなかのハンサム君に成長してまして、美少年好きの女性映画ファンはとりあえずこの点だけでも本作を押さえておいて損はないかと。僕の友達(女性)は「エドマンドは絶対成長したらイケメンになる」と1作目の時から確信していたそうですが、彼女の読みは当たってました。

ダニエル・ラドクリフは、この先どんな役を演じてもずっとハリー・ポッターのイメージがついて回る気がするし、イライジャ・ウッドはあの「ぱっちりおめめ」が役の幅を狭めている印象があるのですが、スキャンダー君はいい意味で色がついていないので、他の映画でもソツなくいろんな役を演じる事が出来るんじゃないかなーと思う。

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アメリア 永遠の翼(音楽について)

amelia

前回のブログでこの映画の見所のひとつとして挙げたのが、ガブリエル・ヤレドのオリジナル・スコア。
というわけで、本日は『アメリア 永遠の翼』の音楽について少しばかりご紹介を。

ヤレドといえば、ヨーロッパに比べるとハリウッドでの評価がイマイチ低い事で有名(?)で、最近だと『トロイ』(04)で公開直前になって音楽を差し換えられるというムゴい仕打ちを受けています。音楽の差し換えトラブルは『トロイ』以前にもあったし・・・。気の毒すぎます。何でこう、アメリカ人プロデューサーはヤレドの音楽のよさが分からないんだろう。

そんなわけで、ヤレドは何となく「悲運の作曲家」という印象が強くて、彼の音楽を愛好する身としては何ともやりきれない気持ちになるのですが、この映画ではトレードマークとも言える美メロをたっぷりと聞かせてくれて、実に頼もしい限りです。

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アメリア 永遠の翼(映画について)

この映画、当初は20世紀フォックス配給と聞いていたのですが、いつの間にかショウゲートさん配給に変わってました。

で、先月マスコミ試写に行ってみたら、場所は20世紀フォックス試写室。このあたりの流れがよく分かりませんが、まあ映画がめでたく日本公開になったので、自分はそれだけで十分です。

『アメリア 永遠の翼』は、世界恐慌時代のアメリカで女性として初の大西洋横断飛行を達成したパイロット、アメリア・イヤハートの伝記映画です。タイトルロールを演じるのはヒラリー・スワンク。プレス資料とか映画の中でアメリア本人の顔を確認出来ますが、二人とも顔つきが似てるんだ、これが。ちなみにスワンクは髪型や歩き方、話し方をアメリア本人そっくりに似せただけでなく、飛行機の操縦訓練まで受けて撮影に臨んだとか。

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